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それぞれの夜

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#短編小説

深夜2時。

外は静かな春の雨。

僕の腕の中には、野良猫が1匹。

今この瞬間は幸せなはずなのに、
僕は悲しくて泣きたくなっていた。

君がやって来るのはいつも真夜中。

フラフラと、どこからかやって来る。

今日はどこで飲んでたの?
誰と飲んでたの?

話しかけても、君は答えず、僕の腕の中でそっぽを向いている。
たまにこっちを向いたかと思えば、僕の鼻先をぺろっと舐めて満足気に喉を鳴らすと、また

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沸騰

ある夜のこと。

開けっ放しのカーテンの向こうに、
綺麗な月が見えた。

こんな素敵な夜に、
布団に潜ってるなんてもったいないわ。

そう思い立った私は、
だらだらとベッドに寝転がるのをやめ
コンロに火をかけ、お湯を沸かし始めた。

もし私が映画に出てくるヒロインだったら、洋風のバルコニーで夜風に当たりながら、グラス片手にオシャレにワインなんか飲んじゃったりして。

そんな妄想

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