良い事もありゃ悪い事もあるそうです。
高校1年生の頃のこと。当時僕はまだ普通に学校へ通えていた。(後に不登校になってしまうことを彼はまだ知らなかった。)
ある日のこと、クラスの席替えのため放課後全員で抽選をすることになった。決め方はあみだくじ。
あみだくじはなんだかしっくりこない。試験のマークシートと同じで、迷ったら角を塗ったらいいのか、真ん中を塗ったらいいのか分からなくなってしまい、ついには人間の心理を考えてしまう。そういう変な感覚に駆られてしまい、後々「もうちょっと真ん中ら辺に書いた方がよかったかも」と毎回不安になってしまう。
だいたいの人は「前の方になりたくない」と思ったかもしれない。僕もその内のひとりだ。「スマホを触れない」「友達と話せない」というわけではなく、「先生に見られている」という不安と恐怖を体験したくないからだ。あの時の憂鬱と1日中続く緊張感は本当に辛い。授業中思い立って下敷きを出すために、机の中をあさることさえ僕にとっては苦だった。
そして座席発表。100m走やマラソンを走る前の緊張感と吐き気が毎回襲ってくる。
「後ろの方でいい...後ろの方にして!」
結果は1番後ろの真ん中よりふたつ右の席だった。
「あぁ...良かった...」
喜びよりも漠然とした恐怖から解放された安心感が勝った。2本の足で教室の床に立っているが、力が抜けていくようにへなへな~と床に倒れ込みそうだった。
「ィェーーーーーイ!!!!席がぁ後ろで良かった!」と頭の中ではウルフルズの「バンザイ好きでよかった」が流れている。
「あっ!ごめん間違えた!」
突然座席発表をしている生徒が慌てながら声をあげる。
「ごめん後ろからじゃなくて前からだった。ごめん見間違えた!」
彼は何度も謝りながら頬に手を当てる。その時の僕はどういった様子だったかは皆さんのご想像にお任せします。絶望と悲しみと怒りが入り混じった感情だった。天国から地獄に落とされたように、僕は現実を理解できず言葉を失っていた。
結局1番前の真ん中からふたつ右の席になってしまった。先ほど脳内で流れていたウルフルズの「バンザイ好きでよかった」はミスチルの「終わりなき旅」に変わった。
「運が悪いな...」
場面は変わって去年の教習所で仮免試験のこと。実技の試験を済ませ、午後の学科試験を終えて仮免発表までの待ち時間。
「○○さんと○○さんと尾崎さん。ちょっと。」
教習所の先生にそう言われて廊下へ行くと不合格と言い渡された。実技はクリアしたが、学科だけあと3点足らなかった。
いつも僕はそうだ。あとちょっとで届きそうなゴールに届かない。そしてまた脳内でミスチルの「終わりなき旅」が流れ、ため息と共にまたあの言葉が自然と口から出る。
「運が悪いな...」
僕はよくこのセリフを口にする。当時の席替え事件や教習所での時も過去の僕はそう口にした。
何もかもが決して運のせいではない。もしかすると、それは自分の努力ややり方が間違っているにも関わらず、運のせいにして逃げているだけかもしれない。
だけど、もし運という物が存在するなら人それぞれそれなりに平等に割り当てられていて欲しい。ただでさえ不平等な現実の世界なら尚更だ。
だからこそ僕は、そういうネガティブな出来事が起きた時に、脳内で「終わりなき旅」を流す。いや、自然に流れると言った方が正しいかもしれない。それは自分に言い聞かすため。自分を守るため。
「いいことばかりではないさ、でも次の扉をノックしよ。」
「嫌なことばかりではないさ、さぁ次の扉をノックしよ。」
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