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迷宮に眠るは夢の原盤
五つの頃、父が都市の闇に消えて行ったのは、生まれ変わりの秘儀を求めてのことだった。
「――あんたは何に変わりに来た?剽悍な猟兵?美貌の姫君?それとも才気溢るる貴族様か?」
問いはカンテラの火で照らされた暗渠の煉瓦壁に虚しく反響した。
後方に客人は一人。革装束で全身を覆っている。暗闇をナメくさった連中とは違う。
「願いを口にするのは大事だぜ。場合によっちゃ他人様の魂に押し入るんだ。ちゃんと脳み
ブギーマンズ・ゲーム
あの時、スタジアムに登場したラガムたちを迎えたのは、大地が揺れたと錯覚するほどの凄まじい喝采だった。
虚無の荒野が広がる魂には、それが響くことも、火が通うようなこともない――少なくとも、彼ら自身はそう考えていた。
……だが、どうだ。
平らかな心に真新しい太陽が浮かび上がったかのようだった。
「これは苦しいな」ソーマが苦笑気味に言った。歩を進める度、獣じみた肢体を構成する漆黒のフレームがギチ
ブラッド・ブルーミング
リゼはナイフを胸に掻き抱き、テーブルの下の薄闇に身を潜めていた。刃の硬さと冷たさに鼓動を委ねる。
ギシ……。
床板を軋ませ、そいつが現れた。焼死体じみた赤黒い影。そいつは、老いた赤子みたいなたどたどしい足取りで歩を進める。
――シュナイダー氏。
リゼは直感する。昼間、包帯で顔を覆ったあの紳士は、戦争で全身を灼かれたと語っていた。
リゼの目の前で炭化した脚が止まった。そして、少女が息を呑