10 | 化け物を照らす光
凡才のデザイナーと天才画家を巡る群像劇「左ききのエレン(ジャンプコミックす)/nifuni、かっぴー」に劇中画を提供しています。
「殺人現場みたいな絵が欲しい」と。これまで目出度さをコンセプトに描いてきた私にとって、衝撃的な依頼でした。
エレンのあらすじを聞いて、プロットを読んで、エレンが擬態して生きることより、自我のまま描くことを生き方に選んだ産声のような絵なんだと思いました。
数億の同胞との生存戦争を勝ち抜き、生命は誕生します。見開く大きな目は、たくさんの死の上に立ち光を見ることができた唯一の生命。まさに殺人現場……です。
エレンの描いた理由はこうして帰結できたものの、曄田がこれを描く理由に関しては長い間悩みました。生命賛歌以上の物語が必要でした。
闇を描きたかったわけではないのだと悶々としていたら、2015年の個展「かげを結う」を思い出しました。その時のコンセプトの基になったのは下記。
「渡る日のかげに競(きほ)ひて尋ねてな」出典万葉集 四四六九
[訳] (東から西へ大空を)渡る日の光と競い合うように求めて行こう。
「かげ」は古語で光の意。
この化け物は強烈な光なのだと解しました。
黒く塗り潰す程に感じる閃光。
「黒い化け物」原画と習作群を「渡る日のかげ」とリフレーミングした形で展示しています。作品と対峙する前後にでも、これを読んでいただけたら嬉しいです。
曄田依子個展「犬の系図」
2019年4月26日(金)- 5月8日(水)12:00-19:00 最終日のみ18:00まで
会場:AL
東京都渋谷区恵比寿南3-7-17
al-tokyo.jp
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?