途上国ベンチャーで働いてみた:新店舗オープンと小口現金の嵐(通算40日目)
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途上国ベンチャーで働いてみた:新店舗オープンと小口現金の嵐(通算40日目)

2019年8月1日、引っ越し騒動から数日後、新店舗はオープン日を迎えた。

オープンした、というよりも、その日を無理やりオープン日と呼ぶことにした、という方が正しい。引っ越し当日から数日間不眠不休、特にオープン日の前日はCEO含め数名のスタッフが文字通りの完全徹夜でどうにかこうにか店舗の体裁が整うまでもっていったのだった。

X線ルームを囲う壁のレンガ詰み、漆喰塗り、塗装。トイレの設置、その後悪臭の原因がパイプの形状にあることがわかり取替工事、排水がうまくいかず床の底上げ工事。窓の外にかかる外看板設置の危険な作業。電気の配線、Wifiの設置、電話線の配置。オフィススペースの壁ボードにガラスドアの設置。電気ドリルを使って作業用机の備え付け。
そしてなぜかバルコニー型にすることとなったCEOルームの工事。

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これらすべて、スタッフが日雇い工と価格交渉しながら手作業でつくりあげていった。予定通りに進むものなど一つもなく、レイアウト案は一日に何度も変更になり、期限通りかつ最安値の発注を求められるプレッシャーで、現場は疲労困憊だった。

土方仕事ばかりでたいして役に立たない私は、粉塵まみれの現場の中でお金の管理を任されていた。
ここで非常に時間と労力を取られ、頭を悩ませたのは
小口現金管理
である。

日本であれば、基本的に経費は従業員に立替払精算をさせてしまえば済むものだが、途上国は事情が異なる。
一般的な大学卒オフィスワーカー(若手)の月給が2.5~3.5万円、高卒や専門学校卒になると月給1.5~2.0万円といった世界の従業員たちにとって、たとえ日雇い工に支払う5000円であっても大きなお金であり、ましてや数万円以上の備品(たとえばトイレの便器etc..)を購入する際のお金を立て替えさせることはできない。また、多くの日雇い工やサプライヤーは事前の現金払い(一部)を求める慣行があり、銀行払いに対応してくれる相手は皆無だった。とにかく現金至上主義なのである*。

*大会社の事情は異なる。また、C to C間においてbKashというモバイル決済は貧困層に至るまで幅広く普及している

......となると、私たちのような小規模事業者では都度都度会社からスタッフに現金を手渡して支払わせ、領収書を提出してもらうしかない。

文字にすると簡単だが、ここではいくつか問題に直面した。

1.自身のスケジュールで動くことができない
すべてが工事中の混乱の最中、私自身がATMにならざるをえなかった。
しかし、私自身も銀行や営業先に訪問していることがあり、私に会えないとスタッフはお金を受け取ることができない=仕事が進まない、という状況がたびたび起こった。この役割のために、朝8時から夜11時過ぎまで帰れない、自分の休日でも現場が動いていれば稼働しなければならない、という事態になった。

2.レポートラインが不明瞭
自身の負担を減らすため、部門ごとに予算枠の金額を渡して部門リーダーに管理してもらうという方法も考えたが*、工事作業中は誰が誰にどの買い物の指示を出したのかが日に日に曖昧になっていき、統率の取れた動き方がされていなかったため、誰を管理者にすれば現場が回るのか見定めることが難しかった。とにかくスピードを求められていたため、指示を受けた者が都度都度私のもとに来てお金を受け取っていくフローとなり、事前に予算枠を決めることも非常に困難だった。

*一度に月給と同額ないしそれ以上の金銭の管理を任せて大丈夫だろうかという管理者側の懸念、意図せず問題が起きてしまい責任を取らなければならないリスクを避けたい従業員側の要望もあったため、平常時の現在においても予算制は取っていない

3.領収書が手書き(笑)
信じがたいことに、日雇い工を抱えるようなサプライヤーの多くは領収書が手書きである。バスやCNGに乗った場合の領収書も同様だ。そのため、領収書の適正性を確認することは難しい。おおよその相場から外れていないか、という観点で確認することしかできない。

また、たとえ印字された領収書であっても、インクの質が悪いためかしばらくすると薄れて消えてしまう。大量に受け取った領収書と返金分のお金の整理には数ヶ月かかり、その間に消えて読めなくなってしまった領収書も多かった。

4.見積もりとスピードの兼ね合い
特定のサプライヤーとの金銭的癒着というのは途上国あるあるの話であり、必ず相見積をとらせて提出してもらうこと、というのはルール上決めていた。ただ、5000円以上で”そこそこ高い買い物”と認識されてしまう水準である。ほとんどの購入・発注物において見積もりを求める必要があったが、他方で”今日中に完成しなければならない”、"今日中に納品してもらわないとならない"といったものが多く、ケースバイケースの運用にならざるを得なかった。

そして、”今日中に”と口酸っぱくお願いした工事や納入が実際に”今日中に”終わることなどほぼなく、やれトラックが渋滞で遅れただの残業代をもらっていないからこれ以上は作業できないだのとごねてくる日雇い工やサプライヤーのおしりをたたきながらタスクを完了させるのは至難の業で、その様子を横目に見ながら「見積もりが一社足りないのでお金は払いません」と言うのはなかなか忍びなかった。

5.申請額と精算額の突合
一人が10000円申請してきて会社から支払い、6000円を当初の目的に使ったとして、本来であれば4000円が領収書と共に戻ってくるはずである。
しかし、そのスタッフがその場で次々と新しい仕事の指示を受け、手元に残っていた3000円を他の目的に使い、残る1000円と追加で申請する5000円でまた別のものを購入しなければならなくなった場合。

当初は、月に2回、半月分の領収書と返金をまとめて提出するようにルール化していた。しかし、大混乱の最中、部門のリーダーを超えてすべてのスタッフがお金と領収書の自己管理ができるわけもなく、とにかく当日中に支払った領収書をすべて私のもとにあげてくるようになった。
これには本当に泣かされた。使途目的別に申請をあげてもらい、コードを振っていたので、使途目的に沿った内容の領収書にコードを振って返してもらわなければ申請額と精算額の突合ができない。異なる目的に手元残金を充てられると、一つの申請に対して複数の領収書をまとめて確認しなければならない。

こんな日々が、オープン日を迎えた後も1.5ヵ月ほど続いた。


そんなに焦らず、スケジュールと予算にもう少し余裕をもって進められなかったのか、振り返ってみればそう思わなくもない。
同僚のKくんは深夜12時を回って帰宅した後、当日支払った分の領収書整理と翌日購入予定の資材や発注分の小口現金申請を2時間近くかけてやり、朝6時過ぎにはバイクで家を飛び出していくような生活をしていた。
どう進めるのが正解だったのか、今でも悩ましい。

(続)

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途上国ベンチャーではたらく34歳の山あり谷ありな日々。