「物語」に秘められた本当の力とは【物語の化学】
みなさんは物語が好きでしょうか?この記事を開いたからには、ある程度、物語に関心のある方々が閲覧していることだと思います。
では、この問いには答えられますか?
「物語ってどんな意味があるの?」
これって意外と答えられません。
答えられるとすれば「楽しむためのもの?」とか「出来事の一部始終を伝えたもの」とかでしょうか
wikipediaでの説明はこうです。
物語(ものがたり)とは、主に人や事件などの一部始終について散文あるいは韻文で語られたものや書かれたもののことを指す。(wikipedeiaより引用)
確かに、人に説明するのでは、十分なのですが、物語の魅力を知るには不十分だなと思います。
「小説を読むより実用書を読んだ方が有益だ」
「アニメばっかり見て!勉強しなさい」
様々なところで物語というのはあくまで娯楽として片付けられてきました。
しかし、その一方で、物語というのは世界中で、広く深く愛されています。
そこにはしっかりと理由があるはずです。
今日、この記事を読み終えた頃には、きっと「物語の意味とは」そして「物語とは」という問いについて、なにかひとつの見解を見出せることではないでしょうか。
これから物語を見るときにも、作品から新たな魅力を見出せるかもしれません。
あわよくば、物語を作り出すこともできるでしょう。
一緒に物語の世界を解き明かしていきましょう。
物語は問題を解決するプロセスを描いたもの
まず、全ての物語に当てはまるものとしてはこれがあります。
「物語とは問題を解決するまでのプロセスを描いたものである」
ギャグであれ、ホラーであれ、問題がない物語はありません。
逆に問題のないものは物語ではないとも言えます。
でも、まだそれでは説明不足な気がします。
人間が「問題に翻弄される様子」を見て楽しんでいるだけなのなら、これほど悪趣味なことはありませんよね。
では人は物語のなにを見て楽しんでいるのでしょうか。
それは「成長」です
本能に組み込まれた、物語の意味
物語は問題を見るものではなく
成長を見るものです。
成長を見届けることで、エンドロールを見届けた後、もしくは本を閉じた後、誰しもが満足げな表情を見せます。
このとき起こってることについてもう少し詳しく見ていきましょう。
人間の脳はいつでも、不確定な未来に対して、不安を抱いています。
マンモスにいつ襲われてもおかしくなかった時代から、
今になっても、その本能は、人間の中に根付いています。
なので人間は常に「問題」があると、その解決策を知りたくなるのです。
生きるために、繁栄するために、「食欲」や「性欲」などの強い欲求は生まれましたが、物語もおなじレベルで、人間の「欲」を刺激してるのです。
そう「問題の解決策を知りたい」「成長したい」という生存に重大な欲を刺激しています。
主人公を通して物語を見る。
ここで重要になるのが”主人公”の存在です。
主人公も物語に必要なものです。
逆に主人公がいなければ、物語は全く意味のないものになります。
なぜなら、鑑賞者はただ、物語を俯瞰するように見ているのではなく、主人公の心を通じて、物語を見ているからでです。
物語を「出来事」と捉える人は多いようですが
先ほど言ったように物語の本質は「成長」です。
出来事もしくはプロットは外側の出来事ですが。
本当に興味があるのは、成長、つまり「内側の物語」です。
物語において大事な問いは
「外側の問題をどう解決したか」ではなく
「問題が主人公の内面をどう成長させたか」です。
物語はシミュレーション
主人公の心を通じて物語を見ていると言うこと。
つまり物語を見ているとき、鑑賞者は、主人公にほとんど憑依した状態で、物語を味わいます。
主人公が悲劇にあえば、悲しい気持ちになり
主人公が歓喜を味わえば、嬉しい気持ちになります。
逆に主人公以外の人物に感情移入することはありません。
これは複数人主人公がいるように見える場合でも同じで、かならず1人の人物に共感しています。
あなたにとっての主人公を探すこともあるでしょう。
そして、主人公の悲しいが、あなたの悲しいであり
主人公の嬉しいが、あなたの嬉しいであるなら
主人公の成長もあなたの成長になるということになります。
そこに物語最大の充実感があります。
物語とは、あなたにバーチャルで成長体験をもたらす、「装置」のようなものです。
その体験は、時として、学校でも書籍でも学べないほどの、深い成長をもたらすことがあります。
さて、かなり物語の意味については分かってきましたね。
成長を感じさせるための様々な工夫
では、どのようにして、物語は「成長体験」を生んでいるのか、最後は、その様々な工夫について見ていきましょう
いろんな映画や小説やアニメや漫画、などなどに、これらの共通点が見つかるはずです。
例えば、神話学の専門家であるジョーセフ・キャンベルさんが、世界の神話に共通する「型」があることを示唆し「英雄の旅」と名付けました
その「型」は以下のようなものです。
1.Calling(天命を知る、受ける)
2.Commitment(旅の始まり)
3.Threshold(境界線)
4.Guardians(師との出会い)
5.Demon(最大の試練)
6.Transformation(変容)
7.Complete the task(課題完了)
8.Return home(家に帰る)
これら全てについて検討する必要はありません。
注目してほしいのは、最後の工程です。
「Return home(家に帰る)」という部分。
全ての神話がここに終わる理由はなんでしょうか?
これも成長を体感させるための工夫です
例えば、私の大好きな「スタジオジブリ」の作品でもよく使われます
「猫の恩返し」や「千と千尋の神隠し」など、問題を潜り抜けた後、スタートと同じ場所に戻ります。
しかし、スタートと場所は同じでも、主人公一人だけは、明らかに、なにか違うものを得ているのです。
そうやって、対比させることによって、鑑賞者は主人公の成長をひしひしと感じ取ることができます。
物語においてこの「Return home(家に帰る)」という手法は、成長を実感させるために、古くから今に至るまで、重宝されています。
■「物語」にしかできないこと
成長するということは主人公にそもそも「欠点」があったということです。
物語というのは「問題」を起こすことによって、その主人公の「欠点」に半ば強制的に向き合わせるというものという捉え方ができます。
ただ、問題を起こす、ただ欠点を克服し成長する、それだけで物語が作れるなら、誰もがストーリーライターになっているでしょう。
物語では、問題と欠点と成長の連携が大事になります。
例えば
普通の日常を過ごしていた男が突然家族を失う
というストーリーよりも
家族を大切にしなかった男が突然家族を失う
というストーリーの方が成長がありそうですよね?
そういった組み込みがうまい物語ほど、人々に大きな発見や充実感を与えます。
あなたも好きな物語に対して。
主人公にどんな欠点があったか?問題は主人公をどう成長させたか?
このシンプルな質問を投げかけてみるだけで、物語のメッセージが見えてきます。
そしてそのメッセージは時として、人生を根本から覆すような発見を生むこともあります。
こんどは主人公ではなく、あなた自身が成長できるのです。
実用書や教科書では学べないことがそこにはあります。
では最初の問いに立ち返ってみましょう。
「物語ってどんな意味があるの?」
この問いに対して、見え方が⁄なにか変わったのならばそれもまた一つの「成長」と言えるでしょう
最後まで読んでいただきありがとうございました
またの機会でお会いしましょう。
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