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ラーメン好きだけじゃなくラーメン嫌いの気持ちもわかるラーメン屋が最強説
こんにちは、シノです。みなさんは現在放送中のTBSドラマ『俺の家の話』を見ていますか? 第4話でとてもユニークな「仕事論」が展開されていたので、そのことを書いてみたいと思います。
ドラマを見ていない方にあらすじを1行で説明すると、
プロレスラーが親の介護をするホームドラマ
です。ちなみにこれは脚本を書いた宮藤官九郎さんの表現(公式サイト)。
20年以上家を離れていたプロレスラー・観山寿一(長瀬智也)が、能楽の人間国宝である父親・観山寿三郎(西田敏行)の介護のために実家に戻り、家族やヘルパー、さまざまな人たちと関わり合いながら生きていく…という物語。
家族や介護というけっして軽くはないテーマがどう描かれるのか、毎回楽しみにしています。単なるホームドラマを超えて、わたしたちの人生に豊かな問いを投げかけてくれるドラマです。
ラーメン嫌いなラーメン屋の仕事論
さて、本題です。
放送済みの第4話、ラーメン屋を経営する寿一の義理の弟でラッパーのO.S.D(秋山竜次)が「店長、あんたこのスープのために死ねる?」とキレキレの鬼師匠よろしくゲキを飛ばしているシーン。寿一にどうしてラーメン屋になったのか?と聞かれて、こんなふうに答えていました。
強いて言うと…ラーメン好きじゃないから。
あんなにスープにこだわってスタッフ詰めてたのに!?と視聴者に一度ツッコませる脚本のうまさ。さすがです。背脂を我慢して食べる、パスタのほうが好きなO.S.Dはこう続けます。
ラーメン好きなやつってさぁ、ラーメン好きなやつの気持ちしかわかんねぇんだよなぁ。だから俺の意見?結構大事なんじゃねぇかなメーン!?
笑いながら、ハッとしました。
「ラーメンを好きじゃないやつ」の気持ちがわかるラーメン屋って、実はめちゃくちゃラーメン屋として強いのではないか?と思ったのです。
たとえばリピーター。足繁く通ってくれるコアなファンも、もともとは「初めて来るお客さん」ですよね。
「初めて来るお客さん」って、どんな人でしょう?
ラーメンが好きな人、友達に誘われてなんとなくついてきた人、好きでも嫌いでもないのに雰囲気で入っちゃった人もいるかもしれない。彼ら全員に「うちのラーメンを好きになってくれる可能性」があります。そのビッグな可能性って無視できないよねメーン!?と、O.S.Dは言っているんだと思います。
O.S.D、鋭い。激戦のラーメン業界で生き残るためには、自分たちがつくるラーメンを客観的に(初めて来るお客さんの気持ちで)きびしく判断しなければならない、と説いているのです。
これは、批評性という重要な視点。コピーライターにとってもすごく大事です。なぜなら、その商品に興味がない人はどんなコミニュケーションをすれば振り向いてくれるのか?を考える仕事だからです。
仕事を100%好きじゃなくてもいい
みなさんは、自分の仕事が好きですか? 好きなことを仕事にしたいですか?
世の中には「好きを仕事に」というメッセージがあふれていますよね。でも、この仕事論がもてはやされるあまり、仕事=好き100%という図式だけが正解で、そうじゃなければ祝福されないような空気にはちょっと窮屈さを感じます。
仕事って、もっと複雑なものではないでしょうか?
かく言うわたしも、コピーライターをしながら広告業界に染まりきれない自分を「よそもの」に感じる時があります。
そこで、さきほどのO.S.Dの名言が再登場。こんなふうに言い換えてみましょう。
広告好きなやつは、広告好きなやつの気持ちしかわからない。
そうです。つまり「広告を好きじゃないやつ」の気持ちがわかるなら、広告にたいして批評性を持っていると言えるのでは?
広告にたいして批評性を持っていれば、広告に興味がない人たちや広告を嫌いな人たち(一般的にはそういう人のほうが多いですよね)と近い考え方ができる。アドバンテージにさえなります。
そして、この発想の転換はラーメン業界や広告業界にかぎらず、どんな仕事にも当てはまると思うのです。
100%好き!と言いきれる仕事でなくても、人生終わった…と落ち込むことなんてないのです。その仕事をちょっと嫌だな、もっとこうならいいのにと思っているとしたら、客観的に見ている証拠なのだから。自分の仕事にたいして批評性を持つことを恐れなくていいのです。
誕生日のわたしへ
私事で恐縮なのですが…3月3日、誕生日なんです! 今日まで健やかに生きてこられたことを、家族やまわりの人たちに感謝したいです。
わたし、コピーライターとしてやるぞ!と奮起したのが遅かったんです。それはこれまで述べてきたように、「自分はこの仕事に本当に向いているのだろうか?」と悩んでいたからだと思います。
今回『俺の家の話』で、O.S.Dの言葉にあらためて気づかされました。自分が広告と接する時に感じる「違和感」や「つまづき」も、ほかの人にはない強みだと考えてコピーライターという仕事をがんばればいいんだと。
ポジティブな感情だけが人を動かすエネルギーではないし、ネガティブな感情だってちゃんと向き合えば発見や成長につながる。仕事をしていく上ではどちらも大切にしようと、一つ歳を重ねて思っています。
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