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ひとりで親の離婚を抱え込む子どもたち

 法務省がこの1月、未成年時に両親の離婚を経験した子どもたち(20〜30代)1千人を対象にしたネット調査の結果を発表した。
 それによると、両親の不仲に気づいても、親に聞けず周囲に相談もできず、ひとりで抱え込む傾向が強い実態が浮き彫りになった。
 やっとこういう調査をしてくれた、一歩前進という思いと、40年前と変わっていないことにショックを受けた。


 ニューヨークの本屋で、子ども向けの離婚の本がずらりと並んでいて驚いた私は、1982年、「子どもが書いた離婚の本」という翻訳本を出した。マサチューセッツ州のある学校の、11歳から14歳の子どもたちが書いた"The Kids' Book of Divorce"の翻訳だ。

 アメリカの子どもたちもひとりで悩んでいた。夜、ふと目覚めると、台所で母親が一人で泣いている。両親がどなりあっている。ある日、何も言わず、父親が家を出て行った。そうかと思うと、毎週末、本当は友達と遊びたいのに父親の家に行かなければならない。母親が再婚して、二人のパパができる等々。学校に行っても、誰にも話せない。

 でもある日、みんな同じような問題を抱えていることがわかった。担任の先生を囲んでみんなで話し合った。近くの高校にも行き、同じ悩みを抱えていたお姉さんやお兄さんにも話を聞いた。本もたくさん読んだ。お母さんやお父さんが悩んでいることもわかった。
 しかし、どの本も子どもの視点から書かれていない。

 「私たちの言葉で、私たちの思いを書いた離婚の本が必要よ!」
 そして、子どもによる子どものための子どもについての離婚の本が生まれた。

 離婚女性のネットワーク「ハンドインハンドの会」を立ち上げ、毎月、会報誌を出していた私は、働き先から帰宅する母親より先に、この会報誌を読んでいる子どもたちから相談を受けるようになっていた。春夏の総勢50人以上の母子合宿では、子どもたちが自由に、別れて暮らす父親のことを話し、父親と一度も会っていなかった子どもが刺激を受けて、パパに会いたいと母親に言えるようになるのも知った。
 親の不仲、別居、離婚について、子どもたちで話せる場が必要だと、子どものための離婚講座も開催、子どもの離婚プログラムも作成した。

 あれから40年、離婚に対する差別はかなりなくなってはきたものの、まだまだ子ども同士が話せる場、相談の場はないようだし、養育費の確保もままならず、別れた親との面会交流も少ない。何より、離婚女性、シングルマザーの経済的事情がまったくよくなっていない。
 子どもが生まれても働き続けることのできる社会であれば、女性の収入がもっと高ければ、たとえ離婚になっても、子どもへの影響はずいぶん違うはずだ。

 面会交流の調査では、経済的に自立している母親、実家に帰っていない母親のもとに暮らしている子どものほうが、別れた父親と行き来をしているという事実がある。

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