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フィンランド人の日本に対する意外なイメージとは?

日本に、フィンランド出身の国会議員がいたのをごぞんじですか?私は知りませんでした、恥ずかしながら。それがツルネン・マルテイさん。日本暮らしは50年以上。日本に帰化し、2期にわたり衆議院議員を務め、2013年に引退しています。

そんなツルネンさんの書籍『フィンランド人が語るリアルライフ:光もあれば影もある』を、そうと知らずに手に取り読んだわけですが、良本でした。ツルネンさんがフィンランドの方々にお国事情や日本へのイメージなどを取材したインタビュー集なのですが、日本とフィンランドを知り尽くした方が聞き手なので両国の比較がわかりやすく、かつなかなか日本では聞けないフィンランドという国が抱える問題の部分についてもしっかりと書かれています。

ということで前置きが長くなりましたが、やっとタイトルにある「フィンランド人から見た日本のイメージ」についてです。

日本のイメージと、日本の有名人【接点少ない人編】

こちらの本では、12組のフィンランド人カップル(フィンランド人×日本人も含む)のインタビューがまとめられており、すべてのカップルにいくつかの同じ質問を投げかけることで回答の比較ができるようになっています。その共通質問のひとつが「日本に対するイメージ」でした。読んでみて当たり前といえば当たり前なのですが、日本に暮らしたことがあるなど接点が深い方と、日本に来たことがないなど接点があまりない方とで共通すること、しないことがありました。下記はこちらの本から、日本に対する回答部分を抜粋したものです。

まずは、日本に来たことがないなど接点があまりない方々の意見から。

【日本に接点があまりない方々の回答】

 ・日本人は礼儀正しく勤勉
・男性の労働時間が長い
・原発事故という単語がまず浮かぶ
・寿司と武道、そして高いレベルの工業技術
・日本の文化や芸術はとてもユニーク
・丁寧で礼儀正しい
・人口は多く、都会が混雑していて、勤勉な人が多い
・福島の原発事故のあとは、日本から輸入されている食品は買わない
・原発事故と、そのあとのずさんな処理について報道されている
・原発事故が、災害に弱いという日本のイメージを強くした
・テクノロジーとデザインで世界でもトップレベルの国
・よく旅をして最新型のカメラを持っている
・黒澤明
・不思議なほど丁寧で礼儀正しい
・名誉を守ることが大切な国民、と高校の歴史で学んだ。武士の時代では「腹切り」を行なった

こうみると、「勤勉」や「寿司」「芸術」「最新型のカメラ」というキーワードはまあそうだよねという印象だったが、福島の原発事故の話題が多くの人から出ていたことにドキッとしました(インタビューの多くは2013年に実施されているので東日本大震災から2年は経っている)。
原発事故が日本の印象を大きく変えたことを、日本人はあまり知らないのではないでしょうか。今もなお原発を持ち続けていることで世界からのイメージが下がり続けているのかもしれませんね。
あと気になったのは頻出ワード「礼儀正しい」。あまりにもたくさん出てくるので「日本人的な礼儀正しさ」ってなんなんでしょうね?丁寧とセットで出てくるところもポイント。ちゃんと並ぶ…とか、品質が高い…とかそんなところからきているのでしょうか。

日本のイメージと問題点 【馴染み深い人編】

続いては日本に暮らしたことがある方々が語る日本のイメージを見ていきましょう。

【日本に暮らしたことがある方々の回答】

・日本の美的感覚に対する評価はかなり高い。特に宮崎駿氏を尊敬している
・日本人は西洋人より親切で丁寧だが、親しい交流は難しい。西洋的なライフスタイルが増えたことによって個人主義が強くなっている。経済状況も近年は低迷し、長い間不景気に苦しんでいる。(取材は2013年)
・日本人の外国語をしゃべる能力は、ここ40年間ほとんど進歩していない。韓国や中国のサービス業の人と比べるとあまりにも低いレベルに留まっている。
・普通の人が利用する日本の機械装置、たとえば駅の切符の自動販売機は複雑で使いづらい。日本人はリスクを減らして合理性を求めますが、フィンランドでは使いやすさを優先しています。

こちらはさすがにより具体的ですね。外国語能力については、ご指摘の通りだしオリンピック来年なんだけどそれまでに国民の外国語能力をあげることは不可能に近いから、きっと訪れた多くの外国人の方に同じ印象を持たれるのでしょうね。

あと面白いのは切符の販売機。確かに渋谷の地下鉄の販売機の前とかで迷っている外国人の方、多いですよね。そして私も観光で外国を訪れる際、電車を利用しますがどの国も日本ほど複雑ではない印象でした。

日本に接点が少ないフィンランド人は、総じて日本人に対するイメージは良いものでした。その理由の1つは「精神的距離の遠さ(=関心の低さ)」にあるのでしょう。関心がないから情報が更新されない、だからステレオタイプなイメージのまま。そしてそれは逆もしかりです。

つい先週の金曜日、フィンランドの内閣が総辞職したというニュースが飛び込んできてびっくりしたのですが、でも日本では全然ニュースになっていなくてソースを探すのにひと苦労しました。結局日本の大手メディアの記事は探しても見つからず、英語のニュースサイトとフィンランド在住の日本人の方の発する情報をtwitterでたどってなんとか情報を得られた…ということがありました。日本人にとってもフィンランドはまだまだ遠い国なんですね。

さて、この本の共通質問項目の中でもうひとつ印象的だったのが「フィンランドに人種差別はあるか?」という質問でした。フィンランドは北欧諸国の中では移民の受け入れを制限してきた歴史がありますが、それでも近年移民の数は増えているようです。この質問から、フィンランドという国の、移民に対して提供している様々な制度へと話題が広がります。実際に外国人として移住した日本人女性の方のお話は大変に興味深いものでした。次の記事ではそちらについて紹介したいと思います。


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