北欧note

2016年に初めてフィンランドノルウェーを旅したことをきっかけに北欧文化や北欧の社会の…

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2016年に初めてフィンランドノルウェーを旅したことをきっかけに北欧文化や北欧の社会のあり方に興味を持ち、それから関連文献を調べたり、北欧関連のイベントに参加したり、再び北欧諸国を訪れたりする中で共感したこと、発見したこと、感じたことを書きとめていきます。

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スウェーデンの家は、なぜ「タコ部屋」から「優れた機能美」に進化したか?(前編)

北欧、特にスウェーデンのインテリアデザインがなぜ優れているか?についての話です。よく「北欧では冬にほとんど日が差さずに室内にいる時間が長いから、自然とインテリアデザインが発展した」といいます。私もそう思っていましたしそういう一面も確かにありますが、ある本に出会って「スウェーデンのインテリアデザイン文化は意図的に(政策的に)作られたもの」ということを知りました。そしてそれは北欧的な福祉国家の形成と深く関わっているというのです。いやー、面白かったです。それがこちら。 『スウェ

    • デンマーク市民の冬の楽しみと「学び」

      図書館は好きですか?私は好きです。 子どもの頃は「無料で堂々と利用できて本を読みながらいつまでもいられる場所」として 高校時代は「放課後や休日の受験勉強の場所」として本当によく通いました。 大人になった今は、本を買うほうが多くなり、昔ほどは通ってはいませんが、月に一度はふらりと訪れ、本を読んだり、眺めたり、本のある空間を味わっています。 北欧は「図書館大国」と呼ばれ、高度な図書館サービスが市民に提供され、市民の利用率も高い。フィンランドでは図書館は「市民のリビングルーム」と

      • 「なぜ哲学が必要なのか?」に対する哲学者の言葉が素晴らしかった

        昨日、「今こそ哲学で世界を読み解こう」というオンライン講座を運営して、現役の哲学者に話していただいた。 めちゃくちゃ印象的だったのは 「哲学は哲学者の思想を一生懸命覚えるんじゃなくて、使って欲しい。分断したり、感情的な言葉が飛び交うときにこそ、哲学ば有効。なぜなら哲学は『良識』にたちもどって、『その意見はなぜ、どんなときに成り立つのか』を交通整理していくものだから」と。 なぜ、世界で分断が進むいまこそ哲学が必要なのかがよく分かる言葉。やっぱり専門家はすごい。 中学

        • スウェーデンのルチア祭動画に癒される

          私のスウェーデン語の先生から今朝、こんなメッセージが届きました。 Godmorgon, skickar en länk till Lucia firandet. (Sändes den 13e December, ルチア祭) おはよう!ルチア祭のリンクを送るねー その下についていたリンクがこちら。 https://www.svtplay.se/video/24823646/luciamorgon-fran-granna?start=auto ルチア祭は毎年12/13、一

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        • スウェーデン・デザインの話
          3本
        • 北欧の旅
          2本

        記事

          京都の旅をより楽しむための方法

          11/15〜18まで、京都へ。目的は16日の北ヨーロッパ学会だったのですが、せっかくこの時期の京都に行くのだから…と欲張って色々まわることができました。そこでわかった京都旅の周コツと良かった場所をまとめてみた。 ⭐︎嵐山の福田美術館がとにかく最高。葛飾北斎、歌川広重、若冲から与謝蕪村、竹久夢二…などなど日本の歴史に残る巨匠作品のオンパレード。しかも、どの作品も一捻りあるというか、「えっ、北斎ってこんな絵も描いていたの…?」とか「若冲のこんな作品も…?」とか意外性のあるライン

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          スウェーデンの小学生は学校で「デモ」を習う

          名古屋市で開催された読書会に参加してきました。Facebookでたまたま見つけて参加した集まりだったのですが、課題本の内容も、読書会それ自体も、すごく良かったのです。 読書会のテーマ本は『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む 日本の大学生は何を感じたのか』。これは実際にスウェーデンの基礎学校(日本の小学校4〜6年生にあたる)で使用されている社会科の授業の教科書から抜粋された本文(訳文)と、それを読んだ大学生(翻訳者の明治大学 国際日本学部 鈴木 賢志先生のゼミ生)の感想

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          SNSに棲む幽霊

          SNSがなかった頃は、ドロっとした気持ちや、納得出来ないこと、表現できない高ぶりはいちど飲み込んで、信頼のできる大切な人にだけ話したりしてやり過ごしていた。 そしてとうに忘れた頃、たまたま手に取った小説の中に、洗練された言葉で当時の気持ちが書かれているのを見つけて「あの時の私の気持ちはこういうことだったんだ!」と溜飲を下げて、未消化だった気持ちを成仏させていた。 でも今は、何か心が揺れると即、余計な感情もくっつけたまま、生々しくドロっとした気持ちをSNSに投げる。それが良い

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          この夏の課題図書

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          「学んで、働く」スウェーデン、デンマーク、フィンランドの就労支援比較

          今回は北欧の就労支援の話をしたいと思います。 「普遍主義」とは?就労支援の話をする前に、その前提となる北欧の社会福祉システムの考え方に触れておきます。 「普遍主義」とは 高所得者であれ低所得者であれ、皆が同じ権利を持ち、同じ給付を受けるというもの(中略)他のレジーム(=他の社会システムを採用する国…たとえばアメリカやイギリスや日本など※筆者註)に比べて現役世代への給付が手厚い。社会保障給付は現金給付よりも現物給付(金銭ではなくサービスの給付)が多い。 ー平成24年版

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          フィンランド人の日本に対する意外なイメージとは?

          日本に、フィンランド出身の国会議員がいたのをごぞんじですか?私は知りませんでした、恥ずかしながら。それがツルネン・マルテイさん。日本暮らしは50年以上。日本に帰化し、2期にわたり衆議院議員を務め、2013年に引退しています。 そんなツルネンさんの書籍『フィンランド人が語るリアルライフ:光もあれば影もある』を、そうと知らずに手に取り読んだわけですが、良本でした。ツルネンさんがフィンランドの方々にお国事情や日本へのイメージなどを取材したインタビュー集なのですが、日本とフィンラン

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          Podcast「北欧にハマった理由」

          友人の大下千恵さんが運営している「つぼつぼボキャスト」(色んな方面のマニア・フリークをゲストにどこがツボなのかを掘り下げる音声番組)にゲストとしてお招きいただき、北欧について色々お話しさせていただきました。 つぼつぼキャスト(前編)「私が北欧にハマった理由」 教育、働き方、そもそもの在り方。『海外への憧れ』では終わらない、現代に生きる私たちが学び活かせるフィンランドの持つ魅力をたくさん教えてもらいましたぞー!(サイトから引用) ・北欧にハマるきっかけになった1冊

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          芸術と工業化が融合するアラビア流モノづくり

          フィンランドの『アラビア』。今や世界有数の陶器ブランドとしての地位を確立している。陶器というと「伝統的なデザインを踏襲する」印象があるが、アラビアは世界に供給するメーカーでありつつ、新しいデザインを生み出し続けている。そこには芸術と工業化を融合させたアラビア流のモノづくりの体制がある。 芸術家へ表現の自由を与える「アートデパートメント」アラビアの歴史やデザインの系譜についてわかりやすく紹介された下記の本によると アラビアには『アートデパートメント』という部門が伝統的に存在

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          フィンランドで相撲に出会う

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          フィンランドの教師=国民のろうそく

          フィンランドといえば教育水準の高さというイメージを持つ人も多いだろう。よく引き合いに出されるPISAでは常に上位にランクインしている。 なぜ高い教育水準を維持できているか?その要因のひとつが、教師の質の高さにあるのは間違いない。 フィンランドで実際に子育てを経験した著者2人によるこちらの本の記載からも、フィンランドで教師を目指すのは非常に大変であることがわかる。 修士号が基本条件で、大学の教員養成コースは日本と違い、現在でも競争率十倍の人気学部である(日本のように都道

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          フリーランスにオススメ『エアフィーカ』

          スウェーデンでは毎日、フィーカと呼ばれるお茶の時間がある。人によって異なるが平均3〜5回。これが日本人でいう「お茶の時間」とは少し様子が異なるようだ。 以前、NHKで「ハンナのすてきな北欧スタイル」という番組で紹介されていたところによると、まず出社していくらか仕事をした10時頃にフィーカの時間がやってくると必ず手を止めて職場の仲間とお茶をする。 そこでは仕事に関する話はせず、休日に何をしただとか次の休暇にどこに行くなどのことを話す。そして10分か20分もするとさっと切り上げ

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          マリメッコを定年退職したデザイナー石本藤雄氏をめぐる松山の旅

          マリメッコといえば、フィンランドが生んだ世界を代表する企業。特にウニッコ(大胆にお花が配置されたデザイン)は日本でも人気ですね。そのマリメッコで日本人デザイナーが何人も活躍しているということは意外と知られていない。 2006年、マリメッコを定年退職した日本人デザイナー 石本藤雄氏は愛媛県出身。マリメッコに在籍した20年以上にわたり、数多くの魅力的なテキスタイルデザインを生み出している。 2018年11月、石本氏の故郷である愛媛県で彼の展覧会が開催されているのを知り、愛媛県立

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