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絹よりも 絹の如く 筆踊る
袖摺れの音 薫風に立つ


本日まで開催されていた「成田美名子原画展」。この漫画家には世阿弥を連想させる作品『花よりも花の如く』がある。ゆえに、その原画に見たものは通常は写真でも撮りにくいものだ。

それは、和服が醸し出す絹の手触り・光沢・透明感。そして、能装束特有の綿入の嵩や弾力、そして唐織の浮き。それらが精緻な筆運びで表現され、人物画以上に物語る。

殊に、赤と黒に描き分けられた若い武官二人の透ける絹の動きは、画面全体に葵の葉を揺るがし、初夏の風をはらませ、夏束帯の袖摺れに君子の交わりを際立たせ、衣ずれの音を響かせる。

アニメというより漫画が礎たもの、日本の文化と言われるまでの歴史を、一目でわからせてくれる。それこそ縁あって、東京有楽町のデパートの片隅で。


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