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男女の賃金格差がなくならない限り、男性の家庭進出は実現しない

こんにちは。

先月、松野官房長官が記者会見で
今年の出生数が過去最少ペースで「危機的状況」との認識を示し
「結婚や妊娠出産への支援、男女ともに仕事と子育てを両立できる環境の整備」を進めると発言しました。

え?

昨今、女性が、家事育児が支障にならずに社会で活躍できている国は出生数が下がっていないとか(賛否両論ある説ですが)、そもそも女性が働かないと日本は労働力がヤバイとか、30年平均年収変わらないけど物価は上がっているから共働きになる とかって言われています…

そのため、「男女ともに仕事と子育てを両立できる環境の整備」って言われているんだと思いますが…

でもそれって、妻の収入が低くても、夫が、
「同じように働いているなら、家事育児しんどいよね。僕も仕事調整して、半分、家事と育児するよ」ってなるってこと?

ならないでしょ。

男性が家事や育児をしてくれたって、女性活躍の機会を閉じていたら、結局、女性が家事や育児をする形になる


だって年収からしても、その方が合理的&既得権益そのままだから

下記データは、経済協力開発機構の2021年の調査結果です。
日本は男性賃金の中央値を100とした場合、女性は77.9。
男女差は22.1ポイント開いていて、男女の賃金格差は下位から3番目です。

経済協力開発機構(OECD)が発表している男女間賃金格差

ちなみに、夫婦ともに正規従業員で、妻の方が家事育児をしている家庭は7割(内閣府:夫婦の家事・育児の分担割合/参考値ですが)

低賃金の仕事、稼げない仕事に女性が就き、重要ポストに就かないままでは、年収が上がらないので、働きながら、家事・育児、両方することになっているのが現状です。

そりゃ、年収低くても家計の足しにはなっているんだから、男性も家事・育児しなきゃ駄目だと思います。その為の働き方に関する改革も叫ばれていますし・・・そもそも育児は男性の権利でもあります。

でも、女性が社会に進出しても、男性が家事育児に進出しても、駄目なんです。男性と同じくらい女性が活躍しないと根本的な解決にはならないんです。

「結婚や妊娠出産への支援、男女ともに仕事と子育てを両立できる環境の整備」ではなく、女性の社会における役割の整備が必要だと思います。

じゃあどうすれば良いのか?
「社会における女性の役割の整備」と、「男女ともに仕事と子育てを両立できる環境の整備」を調べてみました

他の国ってどうしてるの?

アメリカの場合
「大企業が訴訟を嫌がり女性差別を回避+家事育児を民間(移民)で補う」
下記の事情(風土)から大企業は女性を雇用せざるを得ない形で、変革が進み、家事・育児の民間サービスを移民の方で展開して、日常で利用できる価格帯を実現し(それが良いかは置いておいて)、女性活躍が進んでいます。

訴訟風土:雇用差別などの法律が制定⇒法廷での闘争が起こるようになる⇒米国の場合、集団訴訟という民事手続きがあり、敗訴した際の賠償金などが高額になり得る⇒企業は経済的な理由から法的なコンプライアンスに敏感にならざるを得ない⇒差別でなく客観的な基準により採用・昇進の決定を下したことを証明できる人事対策をする必要に迫られる&米国の大企業の人事部に女性が増え企業内の啓蒙活動が盛んになり米国の企業風土の変革が進む。

引用:男女雇用均等の制度的要件の 国際比較 ──日本の男女間格差はなぜ根強いのか マルガリータ・エステベス - アベ (シラキュース大学教授)

北欧・スウェーデンの場合
「労働不足を補う為にまず既婚女性動員+公的保育+税制改革+育休整備と促進政策+家事分担+クォーター制導入」
・スウェーデンは、欧州での戦後復興が始まるとともに労働者不足になり、既婚女性の労働力動員へと政策の基軸を移し、1960 年代からは公的保育が拡大
・主婦労働に対して中立的な個人単位の課税方式へと税制が改革。
同時期に育児休業も整備され、当初から父親にも母親と同じ休業の権利が付与。(女性だけがとりがちな)育児休業を両親平等に半分ずつ取得することを促進する為の税制上の優遇措置を2008年に導入
※フィンランドは新たに今年、家族休暇を導入し育児休暇を夫婦で均等に分けられるようにしています(引用外)
・課税率が高い北欧諸国では、家事の外部化は起こりにくい、また、アメリカと違って高学歴層(大企業)から男女差別是正が起こってるわけではない為、男女の賃金格差が開いたまま
・民間企業の上位管理職などに女性が少ないことから 2006 年にノルウェー政府が企業の取締役会での女性割合を 40%にするクオータ制を導入したことを契機に、北欧各国で類似の動きがあり、2003 年には 7%であったノルウェーの取締役会の女性比率は 2008 年には 40%になり、それまで女性比率の最も高かった米国を抜く。

引用:男女雇用均等の制度的要件の 国際比較 ──日本の男女間格差はなぜ根強いのか マルガリータ・エステベス - アベ (シラキュース大学教授)

日本は?


日本には日本の文化・風土があると思いますが、仮に北欧型に近いと考えると、育休促進政策、家事分担、公的保育、クォーター制、税制の改革、ということになります。

何がどこまで進んでいるのか

育休促進政策
厚労省によると21年度調査で、男性の取得率13.97%
・育休の意向確認の義務付けが22年4月1日に施行
・同年10月に育児休業の分割取得が可能に
・23年4月1日に、育休取得の状況の公表が義務付け予定
日本の育休制度は21年の国連児童基金(ユニセフ)の政策評価で1位を獲得するほど制度としては評価が高いです。
ただ、男性の育休は税制上の優遇措置で広がっている国が多く、
例えばドイツでは、2007年に「両親手当」(育児休業給付として最大14カ月分あるが、そのうち2カ月分はもう片方の親が取らなければ権利がなくなる)を導入し、男性の育児休暇取得を飛躍的に上げています。2015年には「両親手当プラス」(育児休業給付を受けながら、短時間勤務をすると減額されていた給付金を満額受け取れるようにするもの)を導入。
日本は、取得率の状況をもう少し判断すると見られています。

家事分担
・(再掲)夫婦ともに正規従業員で、妻の方が家事育児をしている家庭は7割(内閣府:夫婦の家事・育児の分担割合/参考値)
・直近1年間に家事サービスを利用した人は約5%(引用:https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=27004)
日本は家電やITの仕組みなどで家事を機械化する方が早いかもしれないと思えてきます。
繰り返しになりますが、男性の家事育児の負担は、男女の賃金格差を是正しなければ進まないと思います。

公的保育
フィンランドでは、全ての子どもたちに保育施設を用意することが自治体の義務(母親の就労有無に関わらず誰もが保育園に入れる)で、安くて良質なサービスを提供することが義務付けられています
引用:フィンランド大使館https://finlandabroad.fi/web/jpn/ja-finnish-childcare-system

日本でも、待機児童がなくなってきた今、誰もが入れる保育園の制度と質の改善が叫ばれています。
就労の有無に関わらず(同じ利用頻度という形ではないですが)、みんなが保育園に入れるようにすることが2022年の政府の骨太の方針に入っています。先進国最悪の保育士人員配置が74年間改善されてこなかったこと、給与水準の改定なども声が挙がっています。
これを、もっと進める必要があります。

クォーター制度
クォーター制度まではいっていませんが、22年7月に厚労省は男女間の賃金格差解消に向けて常時雇用する労働者が301人以上の事業主を対象として、「男女の賃金の差異」が情報公表の必須項目になりました。
ただ、業種によっては工場勤務や営業職始め多くの職種で男性を雇い、女性を少し研究職で雇用している場合、賃金格差は出にくく、効果として弱いともいわれています。

税制の改革
詳しく知りたい方は、(国税庁より)こちらのHPの方が分かりやすかったです。https://www.parthaken.jp/column/work_style/hatarakizon/
配偶者控除や配偶者特別控除は、見直しはされています。ただ、所謂、働き損が出てしまう現状は、まだ残っています。
もっと進めていく必要があります。

まとめ

女性が社会で活躍できる整備は、日本ほど、ジェンダーギャップ指数が低くない国(男女格差が大きくない国)でも、訴訟やクオーター制などの強い施策でした。
加えて、税制の男女平等化+民間サービスや公的な支援で家事育児を支える、そうして初めてなんとかなってる事実を国は知っているのに、30年ほどこの問題に取り組まず、取り組んでも弱い施策に留めているのが、なぜなのかを考えるととても悲しくなります。

日本の進め方を見ていると、とてもゆっくりゆっくり変えようとしています。そのことに犠牲になっている人(主に女性)がNOと突きつけた結果が今の日本全体に影響していると思います。

「男性の家庭進出」「いろんな人が活躍できる社会がいいよね」では、社会は悲しいくらい変わらない。
社会における女性の役割の整備をして初めて男女ともに仕事と子育てを両立できる環境が得られる&選択できる社会になるんだと思います。




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