見出し画像

大きな組織の初心者が、最速で信頼を獲得するには?(後編)

こんにちは。米川(@yoneshi0320)です。

これから求められる人材、「バフ人材」。彼ら彼女らが発揮する「バフ(=チームの能力を最大限発揮させる行為)」に関するnoteです。

バフ人材?という方は、まずはこちらから。

本noteは、先日投稿した『大きな組織の初心者が、最速で信頼を獲得するには?』の後編です。
前編が未読の方は以下よりどうぞ。


30秒で読みたい人のための要約

<結論>
- 大きな組織の初心者が、最速で信頼を獲得するには、相手のwill (=自分らしく、したいこと)を聴き、考慮して、一緒に仕事をする。

<理由・背景>
- ひとは、自分のやりたいことを応援してくれる存在を優先する
- そもそも、組織の初心者は本能レベルで警戒されている
- コツは、「相手の周りのひと」から、相手のwillを集める
- 自分のwillのためだけに周りを利用するのは、邪悪


これからのwillの話をしよう

前回の結論は、「(大企業など)大きな組織に新しく入る人ほど、最初は“周りの能力を発揮させること(=バフ)“に注力したほうがいい。」

では、その具体的な発揮のしかたは?

結論からお伝えします。
相手のwill (=自分らしく、したいこと)を聴き、考慮して、一緒に仕事をする。
それだけです。

……拍子抜けですか?
でも、きっと、多くの人ができていないはず。
それは聞いていない、のみならず、たとえ聞いていたとしてもwithout ”Judgement”(判断しない)の難しさにあります。

恥部をさらしても平気か?

昨年、「人事領域への貢献」を表彰する「HR award」を受賞した書籍、『LISTEN―知性豊かで創造力がある人になれる―』
その監訳を務め、自身もマッキンゼーやほぼ日を経て現在スタートアップの役員である、篠田真貴子さん。

彼女が昨年あるカンファレンスで語っていたのが、「きくこと」の難しさとトレーニングの必要性です。

多くの大企業の方、とくにマネジメント層になればなるほど、きくことができていません。
(…)

相手の話をきくことは、2種類しかありません。
with judgement(聞き手が判断する)か、without judgement(判断しない)の、いづれかです。

前者は「答えが決まっていること」、後者は「答えが決まっていないこと」へ、それぞれ有効です。でも、多くの企業では区別されず、前者が多用される。
だから、キャリアやwillに悩むひとが増えるのは、ある意味必然なんです。
(…)
答えが決まってないのに話す–聞くのは、お互い恥ずかしくて知られたくない場所を見せあうようなものですから。

2022年10月カンファレンスより、筆者抜粋

あなたも、思い当たる節は一つや二つではないでしょう。

井戸端(いどばた)会議の、文化人類学的有用性

最近はめっきり減りましたが、会社のカフェスペースや保育園の送り迎えなどの場面で行われる、井戸端会議。
一見理由も謎な行為ですが、「人類が集団で生活する上で、必要不可欠だった」が、文化人類学的の定説です。

約1万年前の狩猟民族時代、集団においてもっとも警戒すべきは「他の部族からの襲撃」です。その時代の人類の頭骨には、左側に穴が空いているものが多く出土。これは石や斧を使った相手の右手で殴られ、死亡した事実を表します。

ゆえに、
「昨日、北の森で不審な人影を見た。」
「川に焚き火のあとがあった。」
「隣の集落が3日前に何かに襲われたらしい。」

危機を察知する仲間が多く、かつ情報を活発にシェアする集団は生き残り、そうでない集団はことごとく滅ぼされたのです。

「ほらね?怖くない。」

翻(ひるがえ)って、現代の組織でも上記の理由から、ぼくたちは本能的に新参者を警戒します。ゆえに、自分の身の潔白を証明するため、儀式としての自己開示を行うのです。

入社後の全社での自己紹介、各現場を回る研修期間、歓迎会という名の飲み会、お客さん先への挨拶回りetc…

一見本人には無駄にも思える時間。ですが、「集団に害をなす存在ではない証明」を怠ったがゆえに、後ろから文字通り刺される。戦国時代の武将や大名など歴史を見れば、一目瞭然です。

いくつもの集団の交わりで生きている

また個人の側から見ても、「この集団から得られるものは、自らが所属する他の集団に利益をもたらすか?」を常に考慮します。

たとえば、家庭や友人といった集団からの承認欲求を満たすために、有名企業や福利厚生が良い会社に入る。他人からみて賛否はありますが、自分のwillとしてあるのならば、なんら後ろめたく思う必要はありません。

人間は社会的な生き物だからこそ、所属するいくつもの集団でのメリット・デメリットを総合的に踏まえながら、生きています。だから相手にとって、自分のwillを叶えてくれる存在は、自分が社会的に生存する確率を上げてくれる、一種のメシア(救世主)なのです。

外堀を埋める、ってこと

とはいえ、いきなり「あなたのwillを教えてくれ!」を聞くのは、勇気も要るでしょう。さらに聴いたとしても、恥ずかしさや警戒から、軽く流されてしまう可能性もあります。

そこでぼくのおすすめは、『その人の周囲の関係者(=ステークホルダー)へ聴く』です。
相手の上司や同僚、仕事で関係のある部署の人へ、「XXさんのやりたいこと/目標は何ですか?」と聴く。特に上司の方はMBO (目標設定)をしているので、案外すんなり教えてくれます。

慣れてくれば、続けて「ちなみに、〇〇さん(=あなた)のやりたいこと/目標ってなんですか?」と、ヒアリング相手にも聴く。一石二鳥です。
ただしここでの留意点は前述の通り、without judgement(判断しない)です。

『邪悪』にならない

仕事で相手のやりたいことを聴く。それに合わせて、仕事の進め方や、一緒にやるプロジェクトのテーマを変える。

最初はきっと、自分のやりたいことができないのでは?と不安になります。しかしいつだってぼくらは、「自らの利益のためだけに他人を利用する人」を、恐れ、警戒し、拒絶する。あなたに素晴らしい才能やスキルがあっても、発揮されなければ、世界に存在していないのと同じです。

”吐き気をもよおす『邪悪』とはッ!
なにも知らぬ無知なる者を利用する事だ……!!
自分の利益だけのために利用する事だ…”
(ブローノ・ブチャラティ)

『ジョジョの奇妙な冒険第5部 黄金の風』荒木飛呂彦著、集英社

あなたが周りから信頼を得て、未来の自分にも組織にも感謝される。そんな瞬間を、ぼくも願っています。

30秒で読みたい人のためのまとめ

<結論>
- 大きな組織の初心者が、最速で信頼を獲得するには、相手のwill (=自分らしく、したいこと)を聴き、考慮して、一緒に仕事をする。

<理由・背景>
- ひとは、自分のやりたいことを応援してくれる存在を優先する
- そもそも、組織の初心者は本能レベルで警戒されている
- コツは、「相手の周りのひと」から、相手のwillを集める
- 自分のwillのためだけに周りを利用するのは、邪悪


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
面白かった方は、スキ・フォロー・いいねをもらえると嬉しいです。

次回は2023年02月25日(土)更新予定

よろしくおねがいします。
がんばるぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?