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「京大女子は結婚できない」高学歴女子の呪縛。日本と海外で感じた「フェミニズム」のギャップ

/違和感ポイント/
「結婚したら専業主婦になる」と思っていた京都大学4年生のミナミさん。自身が過ごした海外での生活と日本での大学生活で感じた「フェミニズム」のギャップについて話してくれました。

Photo AC

「結婚したら専業主婦になると思っていた」


京都大学4年生であるミナミさん(仮名)は、中・高校を海外で過ごし、インターナショナルスクール(以下:インター)に通った帰国子女だ。ミナミさんが通ったインターでは、人権教育の一貫として「フェミニズムとは何か?」「男女平等とは何か?」を学ぶ機会があったという。例えば、アメリカ史の授業では、女性が男性と同じ権利を得られていなかった歴史を学んだ。

授業の他にも、例えば学校の友達との会話において、フェミニズムを意識するきっかけは多かった。その中で、自分の中に根付いていた価値観に初めて気がついたのは、インド人の友達と結婚について話していた時だった。

「母親が結婚して専業主婦になっていたのを見て育っていたので、自分もいつかはそうなるのだろうなと思っていました。別に親に専業主婦になれと言われたわけではないですが、専業主婦になる自分の将来しか見えていなかったんです」

「『結婚したら仕事は辞めるものでしょ』と言った私に、友達は『そんな必要はない、結婚したからって仕事を辞める必要はないよ』ときっぱり言ってくれたんです。その時、初めて『結婚しても仕事を続けて良いんだ...!』と選択肢は一つではないことに気付きました」

高学歴女子の呪縛

大学入学を期に日本に帰国したミナミさんにとって、大学は「ギャップ」を感じた場所だった。京都大学が発表している学部における女子生徒の割合はミナミさんの入学年の2018年は、22.5%。2021年は22.1%と非常に低い。入学前から覚悟していた男女比の割合だったが、実際の生活ではジェンダー意識の低さに日常的に直面することになった。

周りにいる男友達の多くが口を揃えて「自分より年収の高い女は嫌だ」「女の子には結婚したら専業主婦になって欲しい」と言っていた。入った体育会系の男子部活のマネージャーに男子生徒は一人もおらず、他の部活を覗いてみても男子マネージャーを見ることはなかった。大会に向けて女子マネージャーが男子プレーヤーのために名前入りのミサンガを作ることが伝統となっていることにも疑問を覚えた。

一方で、女子の友達からは入学当初、男女比率を心配して「男の子多いから大丈夫かな」「そもそも京大を受験することに抵抗があった」という声を良く耳にしたという。一番衝撃だったのは「結婚」に焦る女友達が沢山いたことだ。「学生のうちから結婚しないと市場価値がなくなる」「京大卒の女は結婚できない」と心配する友達を見ながら、高学歴の女性を苦しめる呪縛を感じたという。
 
その様な大学生活を過ごす中でミナミさんは、フェミニストと名乗ることに自信をなくしていった。
「『自分はフェミニストです』と言うと嫌われるのではないか…と怖くなりました。海外では意識することは良いことだとされていたフェミニズムという言葉が、日本社会では悪いものになっていると感じました。同時に、フェミニズムという単語を嫌がることによって、よりジェンダーを意識するきっかけもどんどん失われているなと感じました」

大切なのは考えるきっかけ

「私にとってのフェミニズムとは『男の人、女の人に関わらずに平等な権利を得るもの』だと思っています。『女性が生きやすい社会』や『女性はこうあるべき像』に囚われずに女性が振る舞って良いんだよ、生活して良いんだよというメッセージが込められていると思います。一方で男の人に対しても『masculinity(男らしさ)がなくても良いんだよ』『男の人だって泣いて良いし、メイクもして良いよ』とメッセージを同時に伝える様なものです」

ミナミさんは、今の時代はジェンダーやフェミニズムについて考える材料が以前よりも多くなったと思うと話す。映画やドラマなどのエンタメを通じて、材料は着実に増えている。だが、ミナミさんの世代が人格形成をしていた小・中学生の頃にその様なドラマや風潮が多かったかと聞かれると、答えはノーだ。「考えるきっかけがないと意識するのは難しいのではないでしょうか?」とミナミさんは問いかける。実際、ミナミさん自身もフェミニズムを意識する様になったのは、友達と話す日常会話や授業での「きっかけ」があったからだ。
 
「どうすればみんなが考えることにつながるのか、はずっと考えている問題ですが、正直答えはわかりません。一方で、地道だけど日本も前進していると思っています。数十年前に会社を退社せざる得なかった母親の世代とは違い、結婚しても働く女性の選択を尊重できる社会になりつつあります。地道だけれど、地道にやっていくことが男性、女性に関わらず、平等な権利を得る上できっかけに繋がるのではないでしょうか」


執筆者: 原野百々恵/Momoe Harano
編集者: 清水和華子/ Wakako Shimizu 

インタビューを受けてくれた人:京都大学4年生のミナミさん(仮名)。中・高校を海外で過ごし、インターナショナルスクールで過ごした帰国子女。



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