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朝茶は七里帰っても飲め お粗末様でした(あとがき)

 このたびは、こちらの創作大賞2024への応募作「朝茶は七里帰っても飲め」をお読みくださりありがとうございました!!

 全五話、約三万字。今週毎日連載しておりました。毎日、ちょうど読み終わられた頃合いにスキをつけてくださる方、少しずつじっくり最後までお読みのうえスキをつけてくださる方、コメントまでくださる方、などなど。書く、推敲するほどに自信をぎゅーぎゅーと搾り取られる思いになりながらも無事ユウリたちとの今回の旅を一度終えられたのは、他ならぬそんな読者のみなさまのおかげです。心から感謝申し上げます。
 そして、特別協力の妹への感謝も。後に書きますが、初稿を妹に読んでもらって忌憚のない客観的意見をもらい、問題点を潰す手伝いをしてもらいました。ありがとう。

 さて、反省はこちらのエッセイにまとめましたので、書いていない具体的な話をしようと思います。もしかしたら多少のネタバレがあるかもしれないので、ここから先は少しのネタバレも避けたいという方は、読まれないことをおすすめします。

 まず、どうしてこの作品を書くに至ったか、から書いてみます。先ほどのエッセイに「図らずも」とあり、以前のつぶやきでもきっかけを匂わせていました。もともと、創作大賞は、外側から横目で眺めていました。余裕が出たら、気になる作品を少しずつ読みたいな、くらいの気持ちでした。ずいぶん前に一度、創作大賞に応募したことがあります。まだ今ほどルールがかっちりしておらず、縛りも緩かった頃です。でも、今回ほどの心意気ではなく、別の目的で書いて、ついでに応募してみようかな、くらいの軽い気持ちです。もちろん、箸にも棒にも引っ掛かりません。他にもいくつかコンテストに参加したもののふるわず、公式コンテストそのものから遠ざかっていました。真剣に書いてだめだと落ち込むので、まとまった時間もとれないしと言い訳して出すのを諦めていたんです。しかし、たまたま六月三十日にある夢を見ました。私はそもそも、夢を覚えていること自体珍しく、覚えていても起きて数分で忘れます。怖い夢に限って、たとえば小学生の頃に見た綱渡り中に綱から落ちて底なしの穴へ落ちる夢なんかはいつまで経っても覚えています。起きたとき、まず床を確認して安堵した感覚は、ひどく生々しかったです。他に、ここでは書かないほうがよい、一生忘れられないトラウマの夢もありますが、割愛します。こういう嫌な夢以外の、楽しい夢は、基本忘れます。それが、珍しく起きてもしばらく覚えており、しかもたまたま日曜日。仕事は休み。せっかくなのでと続きを考えていたら盛り上がってしまい、気がついたら人物設定、プロット、全体と全五話の仮タイトル、ヘッダー、一話まで、一日で夢中で作ってしまいました(仮タイトルのうち、採用したのは全体タイトルと一話タイトルのみ)。そのため、初めてのニ万字超え小説を書く練習をするために応募してみることにしました。目的がないと、絶対諦めてしまう自信があったからです。

 そんなこんなで書き始めましたが、平日は今週以外はノータッチ(調べものはしていたかも)。一応ざっくり記録していたのをまとめます。

六月三十日
人物設定、プロット、タイトル、各話見出し、見出し画像、あらすじ・一話の初稿

七月六日
人物名変更、時代・場所・年齢設定見直し、あらすじ・一話の二稿、二話の初稿、三話の冒頭

七月七日
一話の三稿、二話の二稿、三話の初稿、四話の冒頭、ニ、三、四、五話のタイトル変更検討

七月十三日
四話、五話の初稿、あらすじ三稿、ニ、三、四、五話のタイトル変更、見出し画像の二稿、アンナの名字変更

七月十四日
妹に通しで読んでもらい、意見反映、全体見直し(プリンターが壊れており、印刷しての校正はできず。Web上で校正)

七月十五日
一話修正・公開・確認、ニ話修正

七月十六日
二話修正・公開・確認、三話修正

七月十七日
三話修正・公開・確認、四話修正

七月十八日
四話修正・公開・確認、五話修正

七月十九日
五話修正・公開・確認

七月二十日
チェックリストを満たしているか全記事見直し

七月二十一日
本文・ルビの誤字など全記事修正

執筆スケジュール

 こんな感じで進めていました。ちなみに今月第一週の週末は、四年ぶりに福岡に来てくれたメロンパン号(『MIU404』登場の警察車両)を見に行ってグッズを買ったりと推し活もしていました。

ラストマイル8/23公開記念キャラバン@ららぽーと福岡withガンダム

しんけん暑かったっちゃんこれが。やけど最高やったけん行ってよかったに。妹とのツーショットを撮ってくれて交代で撮った母子の三人に癒された~。すみません脱線した上に訛りました、続けます。
 三十日に素地はできました。本当は、先にラストを決めておきたかったのですが、力尽きました。なぜラストを、かと言うと、当日見た夢の記憶が途中からで、朝起きて文字にしたためず脳内で妄想を繰り広げていたので、それを言語化しておきたかったからです。今思えば、順番に書いていってよかったと思っています。だからこそのあのストーリーなので。夢はあくまで夢ですし、夢の世界観は全然違いました。ある意味、「ファンタジー小説部門」応募作としては、夢を忠実に再現したほうがよかったのかもしれません。舞台は近世ヨーロッパ、アパートは木の塔、名前も西洋風(一応初期設定も覚えてはいます、混同しないよう書き換えて残してはいませんが)。四話の回想のような敵襲来シーンをカインが魔法で解決するさまは鮮やかでした。幻想的でファンタジー感溢れるおとぎ話のような感じでしたが、夢を一人で楽しむ分にはそれでいい、でもそれを誰が読みたいと言うのか、というより、私が書く意味がないじゃないか。冷静な私が、せっかく書くなら書きたいことをエンタメにして書こうじゃないかと考えました。
 今回、題材として、ざっくり飲料・食品を扱おうと思いました。以前創作大賞に応募したときもそうでしたが、妹が管理栄養士なこともあり、グルメ物語は数あれど、なかなか大きく取り上げられない栄養士にまつわる話を書きたかったからです。いろんな題材を調べるなかで、お茶に出会いました。私は、幼稚園の頃からジュースよりお茶派なほど、ずっとお茶が好きです。小学生の頃、校区探検とお茶摘み体験で二度お茶農家を訪れ、実際に煎ってもんで淹れたお茶のおいしさに感動したのを今でも覚えています。そして、タイトルにもした、お茶言葉に出会います。

今回は、前回のように管理栄養士(実際は志望している卵)を主人公にはできないけれど、栄養・飲食の安全に関わる人を主人公にできる、これでいこうと思いました。ちなみに、次の朝ドラ『おむすび』は栄養士が主人公ですね。今から楽しみです。『虎に翼』もひっそり楽しんでいます。そのお茶について、実は私の記事ではないところなのですが、「小説に漂う苦味と温かさが緑茶のようだ」という趣旨のとても素敵なコメントをいただきました。お茶を題材にして、そしてこのストーリーにしてよかったと思った瞬間でした。
 素地はできたものの、ここから書き進めて、当然のごとく大きく方向転換していきました。というより、脇道にそれたり迷ったり、出てきた出口はもともとの目的地とは違うところに着いたり、と道中いろんなことがありました。ユウリほどではありませんが。
 ようやく全話初稿が上がり、妹に読んでもらいました。まず最初に一言。「名前が安直」。うん、そうだよね、わかるよ。でも、もういったんそこは許してくれ、と続きを読んでもらいました。一応、あるんですよ。ちゃんと、アンナ、カセさん、キリーの名字は隣合った県の地名です。九州のお茶の名産地を全国に知ってもらうことは有意義でしょう、それにおいしいやん? それだけ? はい、黙ります。名字はともかく、名前は漢字にするか一話公開直前まで迷いました。一応漢字の名前もあって、でも、本当になんとなくの感覚で、今回はカタカナのほうがよいと思い、カタカナでいくことに決めました。会社名も、グループとかのほうがいいかとも思いましたが、決定稿の通りにしました。そして、気になっていたところに的確にツッコミが入っては直し、気づいていなかったところも指摘してくれました。私なんかよりよっぽど多読の妹の忌憚のない意見はとても参考になりました。初稿は一応バックアップをとっていますが、お蔵入りです。
 そして、さあ印刷するぞ、となったところでプリンターが電源はつくのに動かないことが判明。取扱説明書を二人で見ながらいろいろ試すこと一時間余り。諦めました。次のリモートワークまでに気づいてよかったと思うことにしました。
 そんなこんなで、ドタバタで公開初日を迎えました。途中離脱を減らすために一気に出すか迷いましたが、違う日に出すことで出会ってくれる人がいるはず、と毎朝公開を決めました。今思えばこうしておいて本当によかったです。毎晩、次の話の修正でギリギリの日々を送っていました。あのまま出していたらと思うとゾッとします、本当に。朝が弱い私にしては、この五日がんばったと思います。寝ぎたない私を知っている妹からも感心されました。ちなみに妹はこのアカウントは知りません(多分)。前回応募ぶりに読んでもらった今回も前回も、Googleドキュメントに書いて読んでもらいました。最近note一発書きが多かったですが、久々にGoogleドキュメントを小説下書きに活用しました。ネタ帳としては日々大活躍しています。
 毎日毎日矛盾や誤字脱字、ルビ問題、粗が目立つ、などなどの数々の問題に直面してぐぬぬとなりながら推敲を繰り返して、公開していました。いつもドキドキしながら公開ボタンを押し、会社に入るギリギリ前まで、昼休み、退勤後にドキドキしながらnoteを開いていました。スキがつくと本当に励みになりましたし、貴重なお時間を割いて一話読んでいただいただけでもありがたいのに、続きを読んでスキ、コメントまでくださる方がいたのは、もう心が折れかけかつ暑さも相まってしおしおの作者には、運動後の一杯の冷えたお茶、スポーツドリンクのように染み渡りましたよ、本当に(私は体質上ビールがだめなのですが、飲める方は仕事終わりのビールに置き換えていただけると気持ちがおわかりになるかと)。
 そして、最終話の五話を公開した日のことです。お二方から、次のようなコメントをいただきました。

続きが読みたいです

何よりの賛辞だと思います。その言葉を昼休みに読み、目頭が熱くなり、いけんいけん、と真剣にスピンオフを考えました。なんとなく、割愛した幕間であったり、研究所の前日譚だったり、後日談だったりと浮かび、プロットなどをまとめた別ドキュメントに走り書きましたが、きちんと書くならやはり、過去話かなと思います。ユウリとカインの邂逅、カインが初めてユウリの記憶を消した物語。出てきていない人たちの設定もあるので、いつか書きたいです。
 悩んだことといえば、投稿するカテゴリーにも非常に悩みました。ファンタジー要素がしっかり出てくるのは四話から。伏線は張ったものの、五分の三ファンタジー要素が見えないのにどうなの、と正直思われた方もいるかもしれません。でも、「オールカテゴリ部門」でなく、「ファンタジー小説部門」でいくと決めて、前半での種まきに努めました。できるだけリアリティーを追及しながら魔法使いを違和感なく出せるようにして、魔法の描写は丁寧にするよう心がけたつもりです。お茶の描写もくどくならないよう、でも際立つよう努めましたが、描写不足は否めません。お茶の明言はあえて避けました。住んでいる場所や好みによってイメージされるお茶は違うと思うため、実際にお飲みになったことのあるお茶で想像していただきたかったからです。

 テーマについて、どこまで言及すべきか悩みましたが、これをはっきりここで書いてしまうのは、作者として作品を諦め、読者を信じていないことになるのではと思い、書かずにおくべきかと思いました。言えるのは、今、世の中でいろんなことが起きていて、そんな世の中を私たちは生きている。決して楽ではない社会のなかで働いて、生活を営んでいる。子育てをされている方がいる。次世代を担う子どもたちがいる。いろんな状況に置かれた人たちがいる。私はしがない会社員で、一大人である。ペンというツールを持って物を書くことを趣味として楽しむ余裕が今はある。そんな私が今書きたいものはなんだろうか。すべての働く人に、働いて礎を築いてくれた人に、これから働く未来ある人に、この物語を読んで楽しんで、何か感じてもらえたら。そういうことを思いながら、この物語を紡ぎました。見出し画像の茶葉のように、成長し、人々を癒す一服の清涼剤になれたら、というのはおこがましいかもしれませんが、お時間いただいた分をお返しできていたらいいなと思っています。
 読者のみなさんに、ただ幸せが一日でも多く側にありますように。なんとか生きていきましょう。スピンオフでまたお目にかかれましたら幸いです。どうかご自愛くださいませ。

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