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春の三句 ~ライラック杯~

山笑ふ小学校の通学路

やまわらうしょうがっこうのつうがくろ

⛰️

寝室で今も仲良しひいなかな

しんしつでいまもなかよしひいなかな

🎎

顔上げて行こう桜は今日も咲く

かおあげていこうさくらはきょうもさく

🌸

【一句目】
季語 山笑ふ(三春)
小学校は山の麓にあった。

山あいに聳え立つ母校

校歌は「朝陽輝く○山の緑の森に抱かれて」で始まる。山からうさぎやさるがやってくる。山の恵みか、綺麗な小川が通学路にあって、夏にはほたるもやってくる。そんな自然豊かな学校へ、6年間毎日通うとき、四季折々の山がいつも見守ってくれていた。その山に登る行事もあった。小学校はいい思い出ばかりではなかった。それでも、今俳句を楽しめる素養が身についているのは、そんな小学校に通って、自然の美しさに触れ、詩歌・俳句を国語の授業で学んだからだ。小学生を育んできた山。聳え立つその姿は立派で堂々たる美しさ。春には新入生、進級した小学生たちを温かく迎えてくれる。そんな山への敬意を込めた、少し季語に委ねすぎている気がしないでもない一句。

【二句目】
季語 ひいな(仲春 雛祭の子季語)
実家に美人な男雛と女雛がいる。子どもの頃からずっと、春になると飾られてきた。妹が家を出ても、父が寝室に飾ってくれている。温かい両親の眠る部屋で、今も静かに微笑を湛え、仲睦まじく過ごしているのだろうと思いを馳せた一句。

実家の寝室に飾られた雛人形

【三句目】
季語 桜(晩春)
昨年、しんどかったとき、それでも桜は咲き誇っていて、今年もそんな季節になったのだなぁとしみじみ思った。毎年のように桜だ~とはしゃぐ気にはなれなくて、それでも毎年桜の写真を撮っていたから、昨年も撮った。

桜 2022.3.28夕方撮影

そんな経験をした矢先に発表された大切な歌、星野源「喜劇」に救われて、涙がでた。

劣ってると 言われ育った
このいかれた星で
普通のふりをして 気づいた
誰が決めつけた
私の光はただ此処にあった

あの日ほどけた
淡い呪いに
心からのさよならを

顔上げて帰ろうか
咲き誇る花々
「こんな綺麗なんだ」って
君と話したかったんだ
どんな日も
君といる奇跡を
命繫ぐキッチンで
伝えきれないままで
ふざけた生活はつづく

星野源「喜劇」より

曲から一句を大会でやるのは反則かもしれないけど、曲から一句作ろうと思って作ったのではなく、桜を見てこの句にしかなりえないくらい、この曲が過去と今の私にとって特別なものなのだ。あのとき、下ばかり向いていた。職場を出た帰り道、顔を上げると桜はそこにあった。そして、あの歌が発表された。あれから約一年、昨日、早起きできて、一本早い電車に乗った。散歩していると、また桜が咲いていた。

桜 2023.3.30撮影

昨日の桜と一年前の桜は、木も道も時間も違うし、私の心持ちも違う。どう表現すればいいだろう。今の私を留めておきたい。そう思って、この句はかなり推敲を重ねた。それでも出すかどうかはかなり迷って、でもあったかいこの大会にならと出すことを決めた。穏やかな春を大切な人とまた迎えられる喜び、今日本で、世界で起こる様々な問題と、苦しむ人々。それは、どこかの誰かの話ではなく、我が身に差し迫っていると誰もが感じているのではないだろうか。個人的なことを言うと、ぼろぼろだった去年の私にとって希望の象徴的なそのフレーズを織り込んで、一年を経て改めて桜をまた愛でられる幸せを噛み締めている一句なのである。選ばれなくていい。でも、今年の春の私には、欠かせない個人的な句を、あえてここに投げておきたい。

🍀

こっそり俳句幼稚園のみなさまの句を楽しませていただきながら、勉強させていただいています。みなさまみたいにたくさん学び、めきめきと俳句の筋肉をつけ素晴らしい句を詠めるようにはなれませんが、時折こうしてたしなめる場をご用意いただけてありがたいなと思っています。

やっと春の句を詠めるときがきて、どんな季語を織り込むか悩みながら詠みました。

「私らしい、私になる。」がテーマの今回。

1句目は私の創作の原点を織り込んだ句。私の創作の始まりは小学生。当時は夢見がちで小説家になるなんて息巻いて原稿用紙に小説を書いていました。日の目を見ることのない筆名なんかも作ったりして。私らしい作品はそこから来ているのかどうか。

2句目は私を生み育て幸せを願ってくれた両親に思いを馳せた句。雛人形は、その象徴の1つのような。子どもの頃から、私が学生時代帰省していたときまで、毎年妹とひな人形の前、大きくなると横に並んで、父が写真を撮ってくれていました。デジタルカメラに変わってからは、SDカードの中に眠っています。両親がいて、妹がいて、今の私があるのです。

3句目は私の好きな方の作品オマージュで、私らしさを見失っていた頃に思いを馳せた句。公的なコンテストには出せないけど、大切なこの作品を、この温かい場でなら出せるかなと、意を決して出しました。

春らしい生き生きとした句を詠みたかったけど、気がつけば静の句ばかり。山笑ふの句はかろうじて、通学路のにぎにぎしい微笑ましい感じが伝わるかしら。そんな句も私らしいのかもしれない。

大会ホストのriraさん、ならびに運営のみなさま、今回も貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
運営、ご審査大変だと存じますが、どうぞご自愛ください。

#ライラック俳句


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