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すーこ短編小説まとめ

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私の書いた短編小説(ショートショート含む)のまとめページです。 読者のみなさま、いつもスキをありがとうございます。
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2023年5月の記事一覧

イチゴ舞う校庭で

イチゴ舞う校庭で

目次

 うわ、懐かし。これ、小学校のときのだ。この前、母さんと掘り出した本をパラパラとめくっていると、小学校のとき作ったイチゴジャムのことが書いてある。この頃、俳句の授業もあったからか、もう俳句詠んでる、俺。「舞」と「僕」が画数多くて不恰好になってるな。

 小学校五年生のとき、イチゴをみんなで育てていた。五、六年はクラス替えがないうえ、どうも先生も持ち上がりらしいから、初夏になったらみんなで収

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花町風子のおなかいっぱい胸いっぱい

花町風子のおなかいっぱい胸いっぱい

Special Thanks

「あら花町さん! 今日はどちらへ?」
「ちょっとそこまで」
 エレベーターで一緒になった他部署の同僚と、たわいもない話をしながら外へ出ます。彼女はコンビニへ行くよう。私もいつもお世話になっているコンビニです。そこで別れて、私は大通りの横断歩道を渡ります。

 大通りをしばらく進むと、左手に見えてきますよ。ほら、都会のビル街でひときわ目を引く、あの昔ながらの喫茶店。名

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指輪なら、はなまる指輪専門店へ

指輪なら、はなまる指輪専門店へ

 ポストの中身を整理していると、春色の葉書が目に入った。埃を被った小箱に目を遣る。あの指輪を蘇らせられるのだろうか。

 カランカラン。重い扉を引くと、古風な喫茶店風の店内で、にこにこ顔の若い女性と初老の男性が迎えた。
「いらっしゃいませ」
「この葉書を読んで来たんですが」
「ありがとうございます。こちらにおかけください」
 椅子に腰かけ、鞄から指輪を取り出す。
「この指輪を直していただけないでし

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金魚、家族、同僚と、僕

金魚、家族、同僚と、僕

目次

 咳をしても金魚。風邪が長引いていて、それでも金魚の水かえをする。金魚は繊細でもろく、定期的に水かえをしないとすぐはかなくなることを知っているから。

 まず、今の水、水草とともに、バケツにそっと移す。いきなり環境が変わると、ストレスで体調を崩してしまうから。バケツはある程度高さが必要だ。水も入れすぎない。金魚が跳ねて、外に飛び出して瀕死になるのを防ぐために。決して体に触れてはならない。人

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