見出し画像

電話を捨てよ。楽器を鳴らせ。 〜リモートワーク時代のプレゼンテーションを考える〜

働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」など手掛けているイベントオーガナイザーの横石です。

コロナの騒ぎになり、オンラインイベントに完全移行してから4ヶ月。毎日のように自宅からオンラインイベントの主催や出演をこなし、おかげさまで4ヶ月でのべ3万人の方に参加してもらっている。実はこの3万人という数は、リアルイベントで7年かけてコツコツと積み上げた数と同じだったりするから、改めてオンラインによる”拡げる力”には驚かされる次第だ。こんな現象もニューノーマル・パワーのひとつだろう。

そんなことをしていると、次世代テレビ会議システムやオンライン配信ツールの開発のための有識者インタビューなる依頼が届くようになった。最高のオンラインイベント体験に向けて試行錯誤している身からしたら、有り難い限りである。ただ、僕が要望を伝えるといつも怪訝な顔をされてしまうことがある。なぜなら、それは“電話の延長”で開発するのをやめるべきだというリクエストをするからに他ならない。ZoomもGoogle meetも安定した通話品質こそ何よりも優先され、テレビ会議システムとして最適化されるわけだが、決してオンラインイベントやワークショップに適しているわけではないからだ。(Zoomという名称の言われが「Roomの究極系(Z)」から来ているように、彼らのプロダクトの発想が”会議室”をベースにしてあるわけだから当然といえば当然なんだけど)

自身ではビジネスカンファレンスを扱うことが多いわけだが、オンラインイベントというのは”電話の延長”で何とかなるほど容易なことではない。僕がイベントを手がける上で、大切にしていることはお客さんの心を動かして「うねり」を起こすことにある。それは「熱狂」や「グルーブ感」という言葉に置き換えてもいい。会場や参加者の中に大きな感情の波をつくって「うねり」を起こせるかどうかがイベントの成否を決めると言っても過言ではない。いいイベントには、それがはっきりと見える。自身の働き方のイベントでも「働き方のフジロック・フェスティバル」と形容させてもらっているのもそんな想いからだ。

だからこそ、ツールも「電話の延長」で考えるのではなく、「楽器の延長」として考えるようにしている。オンライン配信ツールを選ぶときは、楽器を選ぶ覚悟でいるし、実際にライブ配信中もツールを操作するときはあたかも楽器を扱っている感覚に陥ることがよくある。もう少し言えば、ターンテーブルやミキサーといったDJが使う楽器をイメージしてもらえばいい。DJがBPM(テンポ)を合わせたり、異なる曲同士をスイッチングして、緩急をつけたりして、物語を紡ぐことでお客さんの心を動かす作業というのは、オンラインモデレーションにおいても大きな差はないはずだ。

最近よく使っている配信ツールに「Stream Yard(ストリームヤード)」なるものがある。あまり使っている人がいるのを見たことがないのは残念だが、ライブ配信やオンライン授業をするために構築されたよくできたブラウザ・サービスだ。インターフェースを触ってもらえればわかるが、画面共有などの操作の容易さは抜群ながら、登壇スピーカーの入れ替えも簡単にできれば、参加者からのコメントを即テロップ化することもできるといったすぐれものだ。ちょっとしたトークイベントならモデレーションをしながら、配信から何から何まで1人ですべてを完結してやれてしまう。何よりも直感的で触っていて楽しいし、操作している感覚で言えば、気分はさながらDJである。「今日のトークはどんな曲調でいこうか。ラテン?ロック?ヒップホップ?それとも演歌?」なんてことも頭に入れながら、その日のライブ配信の進行や登壇者とのテンポも考えて、うねりの創造を目指していたりするわけだ(失敗も多いけど)。

画像1

ぜひとも、配信ツールの開発を手がける方には楽器をつくるような感覚ももっていてほしいと願う。そして、もしこれからオンラインイベントを手がけようとする人がいたら、楽器のように配信ツールを使いこなして、うねりを体験してほしい。

と、ここまでオンラインイベントのことを書いてきたが、これはもしかしたらオンラインMTGでも同じことが言えるかもしれないと睨んでいる。仕事における企画の提案であれ、何であれ、最終的に会議で求められることはひとつ。聞いている相手の心を動かすことにあるからだ。もし、過去にプレゼンをZoomでやってみて苦虫を噛んでいる人がいれば、ぜひツールから検討してみてほしい。相手を”会議室”から連れ出そう。僕たちに必要なのは電話ではない。楽器を手に取ることだ。

ということで、話題のオンライン・コミュニケーション・プラットフォーム「Remo」を会場にした、これからのオンラインイベントを考えるイベントに登壇します。よかったら遊びに来てください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?