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今年のデザイン界のキーワードは「sustainable future」(国内は違うかもですが)

プロデュースしたコレクティブオフィス「北条SANCI」が、米・ビジネス誌「FAST COMPANY」のInnovation by Designアワードの「Workplace」部門にGoogleやSlackなどの並みいる競合と共に入賞した。日本ではあまり馴染みがないかもしれないが「FAST COMPANY」といえば、GoogleやAppleなどをはじめとするシリコンバレーにおけるInnovation Cultureを先頭で牽引してきたメディアということもあり、愛読者として個人的にもとても光栄な話だ。

>The most innovative workplace design of 2019(FAST COMPANY)

そんなでアワードの総評を見ていると今年のキーワードに「sustainable future」が挙げられている。今までのデザインが過剰消費を引率してきたことへの反省と共に、リサイクルやアップサイクルをはじめとする新しい時代のあるべき姿をデザイナーが示せと機運が高まっている。こんな時だからこそ、鎌倉に構え、自然との調和を目指した共生するためのオフィス「北条SANCI」が今回入賞を果たしたのもうなずける。

「sustainable future」といえば、自身で手がけている働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」でも様々な形で持続可能な仕組みを施している。かれこれ7年目となる7日間連続のイベントは、おかげさまでのべ3万人の動員をしてきたわけだが、「最小限の資源で最大限の豊かさ」を実現することを目的にスタートしたものだ。それは手持ちの資本ゼロ、メンバーが一人もいないところからスタートしているというのもあるけれども、「過剰が熱狂を生み出すとは限らない」と信じていたからに他ならない。

>TWDW

どうしてもイベントや祭典、式典というものになると、ついつい過剰な演出を施し、大規模な集客を狙ってしまう(オリンピックの開閉式はその極端な例)。でも、僕らはTWDWを立ち上げるにあたり、それらの設計をゼロから見直した。なぜなら「10年間続く運動」を目標にしたからだ。本気で働き方を変えようとするのであれば、単発の1日や1年だけで終わるイベントには何も意味を成さない。過剰が過剰を生み、関わる人が疲弊してしまっては元も子もない。

例えば、制作物にしても昨今のイベントは過剰すぎると感じていた。注目がほしいがためにあの手この手でムービーやらグラフィックを作り続け、パンフやチラシ、リーフレットにシールなどなど。会場にいけば、何枚ものチラシを手渡しされる。コミュニケーションとはツールを作ればいいという話ではない。届いて欲しい人にきちんと言いたいことが届くということが重要だ。ほとんどのイベントは過去の習慣から抜け出そうとしない。僕らが制作しているのは「WEBサイト」「電車の中吊り」「15秒ムービー」の3つにしか過ぎない。ゴミになる可能性の配布物は一切ない。しかも、毎年同じフォーマットを踏襲したデザイン設計になっているので、毎度クリエイティブに悩むこともなければ、時間やコストのリソースを都度割く必要もない。クリエイティブ投資はチリツモではあるので積み重ねて比較すると、他ブランドの1/10以下のリソースでできているはずだ。

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スクリーンショット 2017-10-13 10.05.09


※上記は、2017年と2018年の中吊り。人材紹介会社の中吊りが、会社名を並列することに対して、TWDWでは個人名を並列させることで、「個の時代」性を表現する。


また、「協賛(スポンサー)」をつけていないのも継続的に続けられている要因だ。スポンサーに依存をしてしまうと、どうしてもスポンサーが抜けたりしたときにそのイベントの存続は左右されてしまう。スポンサーの有無で運動の是非を問うようなことはしたくない。僕たちの収益源は基本的には参加費で支えられている。参加者ひとりひとりの「働き方を変えたい」という想いや行動で成り立っているのである。だから、イベントを長く続けようと思う時、誰の声に耳を傾ければいいかがシンプルだ。そして、その支持がなければ、このムーブメントは役割を終えたことになる。


今年も11月の勤労感謝の日に向けて、「最小限の資源で最大限の豊かさ」を求めて準備を進めている。今年は全国6箇所と韓国ソウルでの開催が決まっていて、過去最大規模となる。それでも、未来のために過剰でないことを大切にしていこうと思う。7年目のTWDWをどうぞ楽しみにしてください。


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