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老人と犬 ジャック・ケッチャム
老人が愛犬と共に川釣りを楽しんでいる。そこへ少年が三人近づいて来た。中の一人は真新しいショットガンをかついでいる。その少年が老人に二言三言話しかけたかとおもうと、いきなり銃口を老人に向け金を出せと脅した。老人がはした金しか持っていないと判るや、その少年は突然、銃を犬に向けて発砲し、頭を吹き飛ばした。愛犬の亡骸を前に呆然と立ち尽くす老人。笑いながらその場を立ち去って行く少年たち。あまりにも理不尽な暴力!老人は“然るべき裁き”を求めて行動を開始する。
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著者ジャック・ケッチャムは実話を元にした小説が映画化もされた凄惨な事件「隣の家の少女」の作者です。平穏さに慣れた読者の心に突き刺すような痛みを覚えさせる作風の作家。大抵の人は上のあらすじを読んだだけで嫌になる小説。ホラー以上に刺激の強い作品世界です。
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主人公のラドロウは老人と言っても銃器などにも詳しい元軍人。チンケな不良に恐れをなすような弱い男ではありませんでした。まずは正攻法で、近場の銃器店へ赴き、珍しいショットガンとその薬莢の種類から売った相手を調べ出します。そして相手の家へ行き、その父親と向き合う。老人の名前を知っていた父親は、老人が持つ雑貨店の土地を狙っていました。
犬を殺したことを平然としらばっくれる息子に味方した父親は老人を追い返します。警察へ出頭どころか謝罪の言葉さえありませんでした。軍人ですから、正攻法がダメなら次のプラン…ここまで読んでワクワクしてくる人と、最初の惨劇で本を閉じる人。私は憐れな前者です。ランボーみたいな復讐譚を期待してしまいます。
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ラドロウの友人が知人のTVレポーターを連れて来て、番組への出演を提案されます。この悲惨な事件について社会的な共感を呼ぶという方法でした。放送はそれなりの成果を得られましたが、TV局に何某かの圧力がかかり、番組の続報は作れなくなります。そこで次なる一手は…
立て続けに気持ちをざわつかせることが起きたので、落ち着く為に読みかけの本を最後まで読み切ろうと思いました。
ラドロウは犬を殺した少年を罠にハメて少し痛い目に会わせますが、当然のことながら彼の父親の復讐心によって店を焼き討ちされてしまいます。何かをすれば必ず反撃されることは予想されるにも関わらず、諦めないラドロウは最後の手段へと向かいます…
頑固親父ラドロウの戦いは凄惨な結果をもたらしますが、最後はハッピーエンドと言えるでしょう。非常に良くまとまったストーリーとは言え、映像化されると地味な作品になりそうだから、やはり小説として読むのが一番いい。読むことに飽きない人は1日で読める内容です。翻訳ですがとても読みやすい。前半を読むのに半月かかりましたが、残り半分は数時間でした。ゆっくり読んでしまうのは他に気をとられることが多いからです。
素っ気ない表紙なのにアマゾンのレビュー評価は想像より高いです。どこかのブログに映画化されていることが書いてありましたが、予告編を探しても他の「RED」という映画しか出て来ませんでした。もちろんDVDの検索でも「RED」「老人と犬」どちらも見つかりません。残念。
本書を読んで思ったことは最近の日本の悪い親と悪い子供。学校のいじめで自殺が起きる背景にはこういう親子がいるのだろうなあと想像しました。そして学校関係者はいつもその存在には逆らえないのです。
<(ↀωↀ)> May the Force be with you.