見出し画像

映画『オデッセイ』 原作「火星の人」 アンディ・ウィアー 早川書房

 3年前に原作を読んだ映画をようやく観ることができました。しかし3年前に書いた読書感想で十分な気がする内容だったので、ここにその記事を再編集してまとめとします。原作を読んでいたから感動しましたが、読んでいなかったら評価はもう少し低かったと思える映画。
 原作の方が面白くて読む価値あり。映画もつまらなくはないですが…
 ちなみに買ったのはレンタル落ちDVD(商品の小計:¥1 配送料・手数料:¥348 注文合計:¥349)です。

『火星の人』(原題: The Martian)は、アメリカ合衆国のSF作家アンディ・ウィアーのSF小説。日本語版は2014年に小野田和子の訳でハヤカワ文庫SFから刊行された。第46回星雲賞海外長編部門の受賞作。アンディ・ウィアーは本作の執筆により、2016年に優秀な新人SF作家に与えられるジョン・W・キャンベル新人賞を受賞した。『SFが読みたい! 2015年版』のベストSF2014海外篇1位を獲得。2015年には『オデッセイ』として映画化もされている。


(これは、2020/07/17に「クックパッドブログ」で書いた記事です)


 映画の予告だけ知っていて、なんとなく買って来た本ですが、読み始めると1ページ目からワクワクする描写が本物です。翻訳者も上手いと思いますが、原書が本当に面白い小説なのだということが、すぐに分かりました。

映画『オデッセイ 』予告編
タイトルまたは画像をタップすると動画が開きます。

 良く見たら監督はリドリー・スコット。これは映画もきっと面白いに違いない。『エイリアン(1979)』『ブレードランナー(1982)』の監督です。

 技術的にはすでに可能と考えられている火星有人探査のシチュエーションの中、事故によって誰かが置き去りにされた場合、どうすれば生き残れるかということをリアルにシミュレートして行くストーリー。
 何度かの無人探査で火星の現地に準備を整え、ようやく実現した火星有人探査でしたが、到着した時に想定外の大きな砂嵐が起こった為、即時帰還を余儀なくされてしまいます。6人の乗員のうちの1人マーク・ワトニーは、撤退途中に砂嵐で吹き飛ばされて事故死したものと思われ、置き去りにされました。
 しかし偶然によって生き延びたマークは、ハブ(仮設住宅)で生存への可能性を探り始めます。火星にない水と空気、長期の食料をどう確保するのか…

 たった一人、地球以外の星で作業する様子を読んでいたら『月に囚われた男(2009)』という映画を思い出しました。監督・脚本はダンカン・ジョーンズ。彼はデヴィッド・ボウイの息子ですが、映画の才能はあります。まだ観ていませんが二作目『ミッション: 8ミニッツ(2011)』もカルトな人気です。

映画『月に囚われた男』予告編
タイトルまたは画像をタップすると動画が開きます。

 しかし『火星の人』は『月に囚われた男』とは全くの別物です。テーマも世界観も異なります。『月に囚われた男』は手塚治虫が描きそうなシニカルな短編ストーリー。

 映画『オデッセイ』の予告映像に少し出て来ますが、植物学の知識を持っていた主人公は仮設住宅の中を畑にして、次の有人探査がやってくる予定の4年後まで生き残るため、農地に野菜を育て食料の確保を目指します。
 徹底したリアリティを追求しており、まるで家庭菜園のマニュアルのように、土壌づくりの高い難易度から科学的な水の生成まで解説される地味な描写や、酸素を作る為に行う危険な水素燃焼の手に汗握る緊張感、そして主人公マーク・ワトニーの前向きな人生観が読者の共感を呼びます。
 上巻の1/3辺りまで進むと、地球側の衛星通信による画像から通信不能のまま生存しているマーク・ワトニーが発見され、救出ミッションが始まります。一方マークの方はまだそのことに気づかず、次の有人探査が到着する基地へ向かうために、数千キロという長距離移動の方法を探り始めますが…

観てから読むか。読んでから観るか。文庫は上下巻です。

 アンディ・ウィアー(1972年6月16日 - )は、アメリカ合衆国の小説家。
 アメリカ合衆国カリフォルニア州生まれ。幼い頃からSFファンであった。15歳の頃からサンディア国立研究所にてプログラマーとして働き始める。その後カリフォルニア大学サンディエゴ校にてコンピュータ・サイエンスを学び、多くのソフトウェア会社で働く。2009年から自身のウェブサイトで『火星の人』を連載していたが、読者からまとめて読みたいとの要望を受け2011年にkindleで出版。最低価格の99セントで売りだしたが、発売3ヶ月で3万5000ダウンロードを記録し、SF部門の売上げトップ5に躍り出た。その後『オデッセイ』として映画化された。

Wikipediaより
映画の原題は原作まま『THE MARTIAN』です。
昔から火星や火星人を題材にした作品は沢山書かれてきました。

 マーク・ワトニーとNASAはメール通信が可能となり、多くのやりとりによって生存と救出が順風満帆に思えたその矢先、思いもよらない不測の事態が次々とマークを襲います。作者は本物のストリーテラーでした。
 映画は原作の多くの部分を省略して大筋だけを描きます。そういった点が映画の低評価になっていました。本を先に読むとその理由が分かります。

 物凄く面白い傑作ですが、読み手を選ぶSF小説であることと、大きな感動はあっても派手な描写の少ないリアルなドラマなので、評価は☆4つが妥当と考えます。またハードSFと言われていますが、そんなに小難しいところはありません。科学実験など専門的な部分はちゃんと理解できなくても物語は楽しめます。そして最後は感動の熱い涙が頬を伝います。

 最後に1つ。映画の邦題『オデッセイ』は陳腐でダサい。翻訳書の「火星の人」の方が断然良い。ありふれたカタカナ英語の方が売れるっていう考え方は果たして本当なのでしょうか。今はすでに思い込みではないのか…

この記事が参加している募集

読書感想文

映画感想文

<(ↀωↀ)> May the Force be with you.