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シ(キ)ンチョーの夏、日本の夏。また繰り返す夏。夏の読書感想文。

 高校生の時に全校集会で突然名前を呼ばれ、この盾を渡されました。当時は大して気にもかけてませんでしたが、これは新潮ではなく角川文庫主催の「読書感想文コンクール」でした。つまり読んだのは角川文庫の本。

とは言え読書感想文を書くような生徒がほぼ皆無の工業高校だったので、まったく自慢にもなりゃしません。ただのネタ写真くらいにしか使えない盾。

 今も昔も常にヤル気の足りない人間ですから、当然「帰宅部」。必修クラブ活動ですら「読書クラブ」を選択するというナマケモノです。その「読書クラブ」の担当が国語の先生だったので、SF小説ばかり読んでいる私に、たまには崇高な文学作品とか読みなさい的な訓示をいただきスタンダールなどを勧められましたが、まったく食指が動きません。
 そこで、この堅苦しい国語の先生への精一杯のあてつけに読んだのが、ゲーテの戯曲『ファウスト』(角川文庫)でした。先生がその感想文を応募してくれて盾を貰えたみたいです。今更ですが先生有難う。
 選んだ理由は、著名な文学作品の中であらすじに最も興味をひかれた本だったから。だって高名な学者(錬金術師!)が悪魔と取引をして世界中を飛び回る話ですよ。今の日本なら完全に漫画やアニメ、ラノベのネタじゃないですか。(以下のアニメキャラたちはその悪魔を連想させる)

悪魔メフィストフェレスならぬ、アザゼルさん、キュゥべえ。

ゲーテの戯曲『ファウスト』
 15世紀から16世紀頃のドイツに実在したと言われる、高名な錬金術師ドクトル・ファウストゥスの伝説を下敷きとして、ゲーテがほぼその一生を掛けて完成させた大作である。ファウスト博士は、錬金術や占星術を使う黒魔術師であるとの噂に包まれ、悪魔と契約して最後には魂を奪われ体を四散されたと云う奇怪な伝説、風聞が囁かれていた。

 ゲーテは子供の頃、旅回り一座の人形劇「ファウスト博士」を観たといい、若い頃からこの伝承に並々ならぬ興味を抱いていた。そして、こうした様々なファウスト伝説に取材し、彼を主人公とする長大な戯曲を書き上げた(なお、主人公の名前は「幸福な、祝福された」を意味するラテン語のfaustusに由来する。ドイツ語で「拳骨、砲」を意味するFaustと一致するが、偶然の一致にすぎない)。

Wikipediaより抜粋
ザンネンながら本記事は、2018年にクックパッドブログで書いた記事の使い回しです。

 今回は以前ご紹介した10冊の本をもう一度考え直してみたいと思います。まずは2018年にお薦めとして挙げた10冊の本を改めて解説してから、新しい10冊を発表します。もうじき還暦(60歳)になることですし、今一度自分らしさの爆発したようなゴリゴリの選書をしてみたいと思います。

夜市
恒川光太郎 角川ホラー文庫(Kindle版あり)

 ほぼ同時期に似た作風の作家・朱川湊人が『花まんま』で直木賞を受賞していますが、『夜市』の方が断然センスが良いです。作家としても恒川光太郎の方が外れはないです。センスの塊のような人。

西の魔女が死んだ
梨木香歩 新潮文庫

 毎年のように「新潮文庫の100冊」にセレクトされていた名作。たぶん2001年発売当時に新刊の文庫を購入して読みました。映画化もされました。しかし当時の梨木香歩はこれ以降の作品は全て今ひとつでした。

シーラという子
トリイ・ヘイデン ハヤカワ文庫 HB(Kindle版あり)

 彼女のノンフィクションシリーズは全て読みました。ノンフィクションがフィクションのエンターテイメントを超えたと思える作品ですが、それは著者の文才によるものです。シーラの成長後に再会する続編タイガーも必読。

冒険者たち ガンバと15ひきの仲間
斎藤惇夫 岩波少年文庫(Kindle版あり)

 リアルタイムにアニメ版を観て感動し、30代以降にDVDBOX入手。その頃に原作を読みましたが、本はアニメと違う感動があります。『グリックの冒険』も読みました。どちらも昔講談社文庫版がありました。

戦闘妖精・雪風(改)
神林長平 ハヤカワ文庫JA(Kindle版あり)

 どこかに書きましたが、トム・クルーズが映画化権を取得しています。SFマガジン連載中に数話読み、1984年に発売された文庫を読みました。連作短編。(改)はそれに20年後、加筆修正がされた改訂版です。機械のような人間、人間のような機械が主役のSF小説。

風樹の剣
北方謙三 新潮文庫

 はっきり言って少年ジャンプのヒーロー物よりはるかに格好いいです。シリーズになりましたが、気に入ったら勝手に続きを読んでください(笑)。今の子供がTVで時代劇を観ることがあるのか知りませんが、少年時代アニメや特撮、映画やTV時代劇も観ていた私が今は剣豪小説をお勧めします。

アルジャーノンに花束を〔新版〕
ダニエル・キイス (著) 小尾 芙佐 (翻訳) ハヤカワ文庫NV(Kindle版あり)

 人によって捉え方が変わる物語だと思います。可哀想な話と思う人もいれば、医学の恐ろしさや残酷さを感じる人もいるでしょう。私はこれを読んで魂の不在を確信しました。脳は生きたコンピューターだと考えます。機能停止すれば何も残りません。

動物記
新堂冬樹 角川文庫(Kindle版あり)

 アウトローな世界ばかり描く作家ですが、この本は人と動物の関わりを通して、家族の大切さや自然の厳しさ優しさを学ばせてくれる名著。自分が本当に動物を飼う資格があるのかどうかを考えさせられます。秀逸な中短編が3作品。作家のイメージを脇において読んでみてください。

光の帝国―常野物語
恩田陸 集英社文庫(Kindle版あり)

 筒井康隆の七瀬シリーズを思わせる名作ですが、個人的にはシリーズ化せずこれで終わった方が良かった。七瀬は3部作でそれぞれ魅力あります。しかし映画でもなんでもそうですが、劣化した続きは不要です。

夏の庭―The Friends
湯本香樹実 新潮文庫

 新作を読んでしまうのが惜しいと思うくらい好きな作家です。以前は新潮文庫の100冊の1冊でした。シリーズのような『ポプラの秋』『西日の町』もお勧めです。老人と子どもをモチーフにした児童文学。

ここまでが2018年に私の考えた夏のお薦め選書です。


ここから2024年に還暦を迎える私の夏のお薦め選書。

 前回万人向けとして考えた選考基準を、完全に自分の好みだけで捉え直してみたいと思います。きっと誰もついて来れないと思いますが、それが60歳になることの決意です。もう他人を気遣うことをやめる(老害か)。

此の道を行けば どうなるのかと
危ぶむなかれ 危ぶめば 道はなし
ふみ出せば その一足が 道となる
その一足が 道である
わからなくても 歩いて行け
行けば わかるよ

清沢哲夫「道」

危険な夏 挑戦シリーズ1(全5巻)
北方謙三 集英社文庫

 一つの事件をキッカケに自分の生きる道を見出した青年・竜一。世界へ飛び出した竜一が1人の戦士として成長して行く姿を描くビルドゥングスロマン、シリーズ第一作。危険な夏が竜一を導く。
 巻を追うごとに現れるライバルや刑事にはそれぞれ本になっている物語が存在します。主役級の登場人物たちが一同に会する北方謙三の世界。

残穢(ざんえ)
小野不由美 新潮文庫

 名作「赤ひげ診療譚」で有名な山本周五郎賞を受賞したホラー小説なんて後にも先にもこれだけでしょう。お昼のワイドショーが夏に企画する心霊特集のようなリアリティ。ドキュメンタリーのような描写が斬新です。

バトル・ロワイアル 上・下
高見広春 幻冬舎文庫

 西暦一九九七年、東洋の全体主義国家、大東亜共和国。城岩中学三年B組の七原秋也ら四十二人は、修学旅行バスごと無人の島へと拉致され、政府主催の殺人実験を強制される。生還できるのはたった一人。そのためにはただクラスメイト全員を殺害するのみ――。
 殺して生き残るのか、生かして共存するのか。あなたならどうする?

不夜城
馳星周 角川文庫

 アジア屈指の歓楽街・新宿歌舞伎町の中国人黒社会を器用に生き抜く劉健一。だが、上海マフィアのボスの片腕を殺し逃亡していたかつての相棒・呉富春が町に戻り、事態は変わった――。
 たった一人で成り上って行く健一の激しく厳しい生き方。

影との戦い: ゲド戦記 1(全6巻)
アーシュラ・K. ル=グウィン 岩波少年文庫

 大魔法使いオジオンに,才能を見出された少年ゲド.自分に並はずれた能力がそなわっていることを知ると,魔法の力にさらに磨きをかけようと,魔法の学院に入る.得意になった彼は禁じられた呪文を唱え,自らの〈影〉を呼び出してしまい,〈影〉との果てしない戦いに引き込まれていくことになる.大賢人ゲドの若き日の物語.

魔界転生 上・下
山田風太郎 角川文庫

 島原の乱に敗れ、幕府への復讐を誓う天草側の軍師、森宗意軒は死者再生の秘術「魔界転生」を編み出した。それは、人生に強い不満を抱く比類なき生命力の持ち主を、魂だけ魔物として現世に再誕させる超忍法だった。次々と魔界から蘇る最強の武芸者集団。魔人たちを配下に得た森宗意軒は紀伊大納言頼宣をも引き込み、ついに柳生十兵衛へと魔の手を伸ばす……。群を抜く着想と圧倒的スケールで繰り広げられる忍法帖の最高傑作!

床下の小人たち―小人の冒険シリーズ〈1〉(全5巻)
メアリー ノートン 岩波少年文庫

 イギリスの古風な家の床下に住む小人の一家.生活に必要なものはすべて,こっそり人間から借りて暮らしていましたが,ある日,小人の少女がその家の男の子に見られてしまいます―.カーネギー賞を受賞した,イギリスファンタジーの傑作.「小人シリーズ」の第1作.
 大人になってから読んだ児童文学の中でとくに共感した作品。少年時代の読書体験を思い起こすような名作。ぜひ最終巻まで読んで欲しい。

蜩ノ記(ひぐらしのき)
葉室麟 祥伝社文庫

 命を区切られたとき、人は何を思い、いかに生きるのか? 豊後羽根藩の檀野庄三郎は不始末を犯し、家老により、切腹と引き替えに向山村に幽閉中の元郡奉行戸田秋谷の元へ遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室との密通の廉で家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。編纂補助と監視、密通事件の真相探求が課された庄三郎。だが、秋谷の清廉さに触れるうち、無実を信じるようになり……。
 凛烈たる覚悟と矜持を描く感涙の時代小説! 直木賞受賞作。

グリーン・マイル 1(全6巻
スティーヴン キング  新潮文庫

 1935年、アメリカの刑務所。死刑囚監房で看守を務めるポールのもとに、一人の大男が送られて来る。双子の少女を強姦殺人した罪を持つ死刑囚ジョン・コーフィは、その風貌や罪状に似合わないほど弱く、繊細で純粋な心を持っていた。これと同時期に、知事の妻の甥であるパーシーが看守となり、傲慢な態度で他の看守たちから嫌われる存在になる。

リング(全三部作)
鈴木光司 角川ホラー文庫

 一本のビデオテープを観た四人の少年少女が、同日同時刻に死亡した。この忌まわしいビデオの中には、一体どんなメッセージが……恐怖とともに、未知なる世界へと導くオカルト・ホラーの金字塔。
 あらすじを読むと単純で映画を観たのに文字で読む気など起きない人の方が多いかも知れませんが、原作の方が映画より何倍も面白いです。「リング」「らせん」「ループ」という三部作でありながら、多くの人がホラーではなくなった完結編「ループ」を無視しました。面白いのに!


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<(ↀωↀ)> May the Force be with you.