郁達夫 『楊梅酒』 (終)
彼にこんなふうに言われてしまっては、寝心地さえも悪くなる。でも、この夏の盛りの楊梅酒二杯と、半日がかりの列車旅で、疲れは限界にきていたので、すぐにでも近くの旅館を探してひと眠りしたくなった。このときちょうど彼は眼を開けて私に三杯目を強いた。私もそのはずみで目醒め、両眼をかっと大きくひらき、彼と張り合って一杯飲み干した。この甘そうで甘くない一杯の酒が腹に落ちてくるまで待っていたら、私もさすがに立っていられなくなるので、勘定を済ませようと店員を呼んだ。彼は店員がやってきて、私が