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郁達夫 『楊梅酒』 (2)

 彼——この我が旧友——とはもう七、八年のあいだ会っていなかった。話せば長くなるのだが、要は、彼とは東京大学で勉強していたときの予科の級友である。卒業後、我われは東奔西走し、互いに往来もなく、互いの住所も分からなくなったまま、七、八年の時が過ぎたというわけだ。最近になって、どうも不良者がいるらしく、私の名前を勝手に用い、「○○が上海で病に倒れた。今は上海の慈善団体の××病院に引き取られている。全国の情け深き君子たち、慈善家たちよ、○○を知る者もそうでない者も、どうか少しでも、○○の命の危機を救ってはくれまいか」と言って、金をかき集めていたようだ。我が旧友はどこからともなく、この知らせを耳にし、一ヶ月前に、彼のなけなしの収入から二元のお金を絞り出し、ご丁寧にも上海の××病院に送金してくれた。この××病院には、もともと私の知り合いの医者がいたので、二週間前に、彼の二元の義捐金と簡単な手紙がその医者から私の手にようやく渡ったのだった。この手紙を彼から受け取り、さらには私の署名付きのいくつかの未完の原稿が発表されていることを発見したあとで、ほうぼうに訊いて回ったところ、そこでようやく私は先ほど述べた不良者のペテンの一部始終を知るに至った。この出来事はおよそ滑稽きわまりない小悲劇であり、それが今、我ら旧友の再会の機縁ともなったのである。

 彼が着ているのは肩に継ぎ合わせのある夏布かふ[薄地の麻布]のちょうで、店に入ってから、この長衣は二つの結び目を引っかけ、壁に掛けられた。それで彼と私は、一枚の肌着と短パンという野蛮な姿になった。彼の肌着はやはり私のより黒ずんでおり、背中にはすでに二つの穴があったが、私のは上海を発つ前に五角の銀貨で買ったばかりの国産品であった。


〈原文〉

  他——我这一位旧友——和我已经有七八年不见了。说起来实在话也很长,总之,他是我在东京大学里念书时候的一位预科的级友。毕业之后,两人东奔西走,各不往来,各不晓得各的住址,已经隔绝了七八年了。直到最近,似乎有一位不良少年,在假了我的名氏向各处募款,说:“某某病倒在上海了,现在被收留在上海的一个慈善团体的XX病院里。四海的仁人君子,诸大善士,无论和某某相识或不相识的,都希望惠赐若干,以救某某的死生的危急。”我这一位旧友,不知从什么地方,也听到了这一个消息,在一个月前,居然也从他的血汗的收入里割出了两块钱来,慎重其事地汇寄到了上海的XX病院。在这XX病院内,我本来是有一位医士认识的,所以两礼拜前,他的那两元义捐和一封很简略的信终于由那一位医士转到了我的手里。接到了他这封信,并且另外更发现了有几处有我署名的未完稿件发表的事情之后,向远近四处去一打听,我才原原本本地晓得了那一位不良少年所作的在前面已经说过的把戏。而这一出实在也是滑稽得很的小悲剧,现在却终于成了我们两个旧友的再见的基因。

  他穿的是肩头上有补缀的一件夏布长衫,进饭馆之后,这件长衫却被两个纽扣吊起,挂上壁上去了。所以他和我,都只剩了一件汗衫、一条短裤的野蛮形状。当然他的那件汗衫比我的来得黑,而且背脊里已经有两个小孔了,而我的一件哩,却正是在上海动身以前刚花了五毫银币新买的国货。

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