見出し画像

紙の詩集ができるまで2(制作費のことなど。拙著体裁データ有。)

こちらの記事の続きです。

 前回書き忘れたのですが、紙の選定の際の知識を一つ。
 印刷会社から紙見本を取り寄せて、見て、触って、紙を決めたはずなのに、出来上がってきた印刷物は「あれ?、これ本当に自分が選んだのと同じ紙?」ということがよくあります。厚み・柔らかさ・色合いが、なんだか違う。
 その理由は、紙見本と実際の印刷物の面積や形状が違うからです。

  • 紙の色は、面積が大きくなるにつれ、明るい色はより明るく派手に、暗い色はより暗く濃く見える。

  • 紙見本の紙は細長いので、しなりやすく、実際より柔らかく感じることがある(面積が小さい紙ほど、硬く感じる)。

  • 小さな本の場合、片側が閉じてあるので表紙がしなりにくく、紙見本の同じ紙より硬く感じやすい。

 このようなことを少し意識して紙選びをすると、より想像通りの仕上がりになると思います。


 さて、ブックカバーの試し刷りもし、本文フォント等も決まったところで、印刷用データの作成に入りました。

▶作業1:組版

 Adobe InDesignで組版を行いました。作業の流れは以下です。

  1. 印刷をお願いするプリンパさんの、専用PDFプリセットを読み込んでおく。

  2. InDesignマスターページで、ノンブル位置やマージン等、全体に関わる体裁を作成。

  3. Wordの原稿を流し込む。

  4. タイトル(見出し)・本文に段落スタイルを設定&適用、縦中横、ルビなどの処理を行い、体裁を整える。

  5. アウトラインを取り、PDF単ページで書き出し(入稿データ完成)

 プリンパさんのホームページにははっきり記載はなかったですが、トンボ(トリムマーク)付の単ページPDFファイルで受け付けてもらえました。

Adobe InDesign CS6 の作業画面
入稿データ(トリムマーク付単ページPDF)


▶作業2:ブックカバー作成

 本文をInDesignに流し込みページ数が決まると、背の厚みが決まります。そこで初めて、正確な寸法のブックカバー印刷用データを作成することができます。

 今回の作業の手順としては、

  1. Illustrator(図形ツールとパスでイラストの原型を作る)

  2. CLIP STUDIO PAINT(陰影、細かい部分を手描き)

  3. Photoshop(CMYKモードへ変換、色の調整 ※CLIP STUDIOでもできますが、Photoshopに慣れているので)

  4. Illustrator(画像を配置し、タイトル等の文字を入れる)

という流れで完成させています。

Adobe Illustrator CS6 の作業画面


▶作業3:表紙の作成

 白インク1色で印刷したいので、データはIllustratorにて、K(黒)1色で作成しました(この黒いところに白インクがのる)。

表紙の印刷用データ


▶入稿、完成品の到着

 印刷に6営業日+カバー巻(プラス2営業日)=8営業日後に出荷のコースで注文したので、プリンパさんの休日、配送にかかる日数を含めて、入稿(注文確定)から納品まで2週間ほどかかりました。
 きれいに仕上げていただいて、開封した時はたいへん嬉しかったです♪

届きました♪
10冊ずつ束ねられている
完成品

▶気になる印刷代・制作費は?

 今回は全部自分で作業をしたので、かかったのは印刷代だけです(デザイン業25年の頑張りを回収)。私の場合、いつでも自分で増刷できるので、とりあえず初回は100部だけ刷って、本体+ブックカバーで合計48,268円でした(プリンパさん無線綴じ印刷の料金表参照。一般的には少なくとも300~500部ほど刷るようですね)。1部あたり@483円ですから、定価600円は良心的じゃないですか(笑)? よこやま書店で販売する際に、よこやま書店を出店させていただいているSTORESさんへの販売手数料がかかるので、実質利益ゼロです。
 印刷現場の豆知識ですが、値上げして販売したいときのために、本体には定価を印刷せず、カバーだけに定価を印刷しておきます。そうすれば、値上げしたいときは、カバーを増刷→巻き直しすればいいので、コストが抑えられるからです。拙著もそうしてあります。

 私は自分が業者なのでこの値段で済みましたが、出版社や印刷会社にデザインを依頼する方は、もちろんこの金額では済みません。

 もし私がグラフィックデザイナーとしてこの仕事を請け負ったなら、制作費にどれくらい頂くかなぁ…?(もう元気がないから請け負わないですが。)

 …そうですねぇ、自分が元請けではなくて、出版社や印刷会社、もしくは広告代理店の下請けで仕事をするとして、間の方がしっかりと方向性を打ち合わせてきてくださるなら(つまり私は作業のみに専念できるなら)、10万円くらいが妥当ですかねぇ~。あくまで、純粋な下請け料金ですよ(元請け会社のブランド力や人件費を含みません)。ただしその場合でも、本文はテキストデータで支給、カバーに使う画像も支給してもらいたいです。カバー画像をこちらで探す場合は追加料金を、完全オリジナルのビジュアルを作成する場合は、最低でも5万円~(大変すぎるならお断りするかも)。あと、印刷の発注・入稿までこちらで手配するなら、さらに手数料をいただきたいです。

 …と、なんだか小うるさい“厄介デザイナー”の空気を出してしまいましたが(笑)、こういう細かい事を決めておかないと、気持ちよく仕事できないのが実情です。修正は何回まで?とか、校正は誰がするの?とか。こういう小さなモヤモヤ(えーそれ私がやるの〜?)が、デザインにも影響すると思います。どこの現場でもそうだと思いますが、プロ意識の高い人・経験豊富な人ばかりではないので。
 ちゃんとした出版社・印刷会社に頼むと、そのへんの仕組みがしっかりしている分、料金が高いのだと思った方がいいかもしれません。


▶まだある。出版社から自費出版するメリット。

 ちゃんとしたところ(出版社・印刷会社)に詩集の制作を依頼すれば、料金は高くなる半面、編集、装丁、校正、宣伝、販路等の面で大きなメリットがあります。
 そのへんのことは、思潮社から詩集『Picnic』を上梓されている私の師匠・寳玉義彦さんに聞いてみてください↓。

 紙の詩集を出すと、中原中也賞など、詩集で応募する賞に応募できますので、夢が広がりますね(参考までに、Koubo(公募ガイド)詩のページはこちら)。ラクスル等で作った私家版でも応募できるはずです。どんな詩集を作りたいか、たくさんの詩集に触れてイメージをふくらませてみてください(よこやま書店に見に来てくださいね☆)。


▶付録:横山ゆみ『こコロのナカ』体裁のデータ

●印刷会社:プリンパ
●サイズ:A6(文庫サイズ)
●製本:無線綴じ(本文88P+表紙4P)
●背の厚み:5mm

●表紙の紙:ファーストヴィンテージ オーク135kg
●表紙印刷:白インク1色
●本文の紙:書籍用紙72.5kg
●本文印刷:モノクロ
●印刷機:デジタル印刷機

●ブックカバーの紙:ワンダルアート110kg
●ブックカバー印刷:片面フルカラー
●巻き:機械巻き
●印刷機:デジタル印刷機

●本文フォント
 タイトル:小塚明朝R(11pt)
 本文:小塚明朝L(9pt)
 行送り:16pt(1ページ14行)

●本文マージン
 天:20mm
 地:20mm
 ノド:15mm
 小口:13mm

●ノンブルフォント:リュウミンL(7pt)
●ノンブル位置:天から10mm、小口から20mm

●ブックカバー
 タイトルフォント:A1ゴシックB
 著者名フォント:A1明朝(20pt)

▼下記商品ページにて、カバーや表紙の画像をご覧になれますので是非。

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?