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多元的視点取得とは

「0(ゼロ)から1」の難しさはどこにあるのか
共観ではなく、共観。
の続きです。

2023年*月に刊行予定『共観創造: 多元的視点取得が組織にもたらすダイナミズム』は、共観(認知的共感)の核心にある心の働きである、「視点取得」に注目しています。視点取得とは、他者の視点から世界をイメージしたり、他者の立場で自分自身をイメージするプロセス (Galinsky et al., 2005)です。

心理学や認知科学分野の研究では、主に実験室で、他者の視点取得が創造的成果を向上させることが検証されています。一方、企業等の現実の組織が創造的成果を求める時、視点取得がどのように関わるかについての本格的な実証研究は発展途上です。

企業等おける実証研究が、実験室における統制された研究と異なる点は、創造プロセスとその成果の評価に関わってくる、多様なステークホルダーを考慮しなければならないことです。

企業が新しい製品・サービスを企画する際、何よりもまず、顧客や潜在ユーザーのニーズを摑むためにその視点を取得する必要がありますが、市場は通常様々なセグメントに分かれ、これから開拓する潜在市場を含めれば実に様々な立場の人々の視点を取得する必要があります。

同時に、企業が製品・サービスを届ける過程には、開発、生産、販売等の社内の各部署、上層部、サプライヤー、流通業者、協力企業、競合企業、補完財提供企業、政府、資本市場などが関わり、バリューチェーンの中で重要な位置にあるステークホルダーの視点が欠けていればビジネスとして成立することすら難しいのです。

さらに、企業の社会的責任や企業イメージへの影響を考えるためには、社会からどのように見えるかも重要です。

本書は、企業の創造的成果には、特定の他者の視点取得をするだけでなく、視点取得の多様性が関係しているのではないかという問題意識に立っています。本書では、様々なステークホルダーの立場に立って世界をイメージする視点取得の多様性の程度を「多元的視点取得」と定義し、多元的視点取得を介して創造的成果を高めることを「共観創造」と呼んでいます。

Galinsky, A.D., Ku, G., & Wang, C.S. (2005). Perspective-taking and self-other overlap: Fostering social bonds and facilitating social coordination. Group Processes and Intergroup Relations, 8(2), 109–124.

もっと詳しく知りたい方は、竹田陽子『共観創造: 多元的視点取得が組織にもたらすダイナミズム』白桃書房(2023年5月1日に刊行予定)を読んでいただければ幸いです。

『共観創造』目次はこちら

本記事は、竹田陽子『共観創造: 多元的視点取得が組織にもたらすダイナミズム』白桃書房(2023年5月1日に刊行予定)から、出版社の許可を得て抜粋し、一部改稿しています。

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