見出し画像

便秘の次男がもたらした、初めての経験。

「パパーーーーー!!!早くーーーーー!!!」

朝7時、私は鬼気迫る声で大絶叫する。

遠くから旦那の爆笑する声が聞こえて、
私も爆笑する。

でも、身動きはとれない。


生後9ヶ月の次男が
3日ほどウンチをしていなかった。

長男と違い、ご飯をモリモリ食べる次男。
おっぱいもゴクゴク飲み、
お茶もゴクゴク飲み、
お菓子も食べているのに、ウンチが出ない。

「便秘かなぁ〜?」

夜、次男のおへその周りをグルグルとマッサージする。
旦那もiPhoneで「赤ちゃん 便秘」と調べる。
ヨーグルトもバナナも食べさせたから、そろそろウンチが出ても良いんだけどなぁ。

私はお腹をマッサージしながら、
丸々とした可愛い次男を眺める。
絶対違うけど、ウンチが出ないから余計次男が丸々としている気がする。
出るはずのものが出てないから、ここの顎の肉とか腕とか足のムチムチ具合が増してるんじゃなかろうか。
絶対違うけど。

とぼけた顔でこちらを見る次男に
「ウンチしたくないの?そろそろしたら?」
と話しかけてみる。
相変わらずとぼけた顔でキョトンとしている。
まだ出なそうだ。

翌朝、ギャー!!!と次男が泣くので
お尻の辺りを触ると濡れていた。

「うわぁ…おしっこ漏れてるー…」

まだ眠い私は起き上がれず、
旦那にオムツを替えてきて欲しいニュアンスで呟く。

「え?!お漏らし?!」

「うん」

そう呟き、バタっ!と倒れる。
起き上がれないアピールをしてみせる。

旦那はサッと起き上がり、

「はい!起きて!一緒に替えに行くよ!」

えぇ〜…とウダウダする私を取り残し、
次男を抱っこしてすぐに寝室から出て行く。

横を見ると長男がまだ寝ている。
私もまだ寝たい。
でも、ここで起きないと旦那に
さっき起きなかったから、とかなんとか
後からあーだこーだ言われるかもしれない。

仕方ない…

私は眠い目を擦りながら旦那と次男の後を追う。

テレビ台につかまり立ちをした次男は、
既にオムツを脱がされスッキリしている。
ご機嫌に身体を揺らしていて、
リズムをとっている。
なかなかのビートの刻み方だ。

旦那が濡れた服を脱がせ、
産まれたままの姿の次男をぼーっと眺める。
可愛い。
だけど私はまだ眠い。

旦那が服を洗濯機に持っていく素振りを見せる。
ここまでやったからバトンタッチということか。
仕方ない。
オムツと着替えを手に、私はよっこいせ、と
次男の近くに座る。

服を頭から被せ、半裸の次男。
オムツを履かせようとするが、
次男はしゃがんだり立ったりを繰り返し、
相変わらずビートを刻んでいる。
全然履かせられない。
そもそも眠いからあんまり履かせる気になれない。
ここで時間稼ぎをして、戻ってきた旦那に手伝って貰うか。

私はやる気のない感じで、
オムツを次男の足元に持っていき、
またもやぼーっとする。

旦那がトイレに入る音がした。

すぐに戻ってこなさそうだ。
私がやるしかないか。
それにしても眠い。
なんでこんなに眠いんだ。

テレビ台に手をかけた次男は
しゃがんだまま動かない。

よし。
次立ち上がったら
今度こそオムツを履かせよう。

私は次男が立ち上がるのを、ぼーっと待つ。

ん?
…なんか次男…ウンチ…
あ!ヤバい!!!

私の思考は突然バチンと切り替わった。

なぜなら次男の可愛いお尻の間から、
ヘビ花火のようにニューっと
何かが生まれたからだ。

何かとは、もちろん
私が待ちに待っていたウンチだ。

このまま行くとマットがウンチで汚れる!
くっさいマットになる!
ダメだ次男!!!

私は右手をかざし、
次男のウンチを手で受け止める。

なんともいえない感覚が全身を包む。

次男は特に何も言わずに、
しゃがんでウンチを生み出す。
私も黙ってウンチを受け止める。
でももう目は完全に覚めた。
おはよう。次男。
おはよう。ウンチ。

ウンチを終えた次男が
ふぅ、スッキリしたわ!という顔で振り返る。
爽やかな笑顔だ。朝にはピッタリのスマイル!
しかし私の右手にはウンチがある。
出来たてホヤホヤのウンチがある。
そのせいで上手く笑い返せない。

仕事を終えた次男がすぐさま動き出そうとするので、ウンチのついたまま動き回られては困ると、
私は左手で次男が動けないように固定する。

そして叫ぶ。
鬼気迫る声で。

「パパーーーー!次男ウンチした!!
私今ウンチ持ってる!!!早くきて!」

「…え?……え?!」

「パパーーーーー!!!早くーーーーー!!!」

遠くから旦那の爆笑する声が聞こえて、
私も爆笑する。

旦那が来るまでの僅かな時間に、
次男はもう一踏ん張りして、
今度は私の左手に小さなウンチを産み落とした。

旦那はすぐに次男を風呂場へ連れていき、
両手にウンチを持った私は
1人ポツンと部屋に取り残された。

部屋とウンチと私
愛するあなたのため
毎日マッサージしたから
次からはオムツでしてね
愛するあなたのため
きれいでいさせて
(部屋とワイシャツと私のメロディーでどうぞ)

トイレに行き、ウンチを流す。
そして思う。

…ウンチ初めて持ったわ。

手にはまだウンチの重みと温もりが残っている。
いなくなったウンチをまだ感じていたい…と
センチメンタルな気持ちには全くならない。
いくら愛する息子のウンチとはいえ、
めちゃくちゃ汚い。

私は親の仇のように手を洗う。
洗っては臭いを嗅ぎ、を繰り返す。
臭いを嗅ぎすぎて、臭いが無くならない気がする。
鼻がやられてしまった。
なんだかウンチの思惑にまんまとハマっている。
休日の朝7時から、
私はこだわりの強い手洗い職人のように手を洗い続ける。

まさかあれほど待ち望んでいたウンチを
このような形で私に授けるとは…
次男も侮れない男よの…

ちなみに長男も母乳だけしか飲んでいないような小さい頃に、水のようなウンチを凄い勢いで私に浴びせてきた事がある。しかも凄い量。

長男は私にウンチを浴びせ、
次男は私にウンチを握らせ、
私とウンチの思い出は増えていく。
私とウンチは、息子達の思い出に花を添える。

私はこうして初めての経験を重ね、
深みのある人間になっていくのだろう。

いや、なってない。

とりあえず、私の子育ては、
まだ始まったばかりである。

深みのある人間になりたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?