嘘と共に生きる家族。
旦那はすぐ嘘をつく。
最近だと、
次男の腕に出来たBCGの注射の痕がカサブタになった部分を
我慢できずにお風呂でベリっと剥がし、
「オレはそんなことしていない」
と、堂々と嘘をついた。
次男の腕は、カサブタが剥がれ
ポッコリと穴があき
血がうっすらと滲み、
それを見た私は鬼と化した。
そもそも旦那は
ニキビとかオデキとか
ポツポツした形状のものが大好物で、
見るとすぐに触ったり潰したりする癖がある。
だから次男の腕のカサブタのポツポツも
絶対に触りたくなるはずだ。
事前にそう踏んでいた私は
お風呂に入る前の旦那に
「絶対に触るな!触ったらお前さんがどうなっても知らないぞ…」と
低い声で忠告していたが、
恐らく我慢出来ずに触ってしまったのだろう。
「オレは触ってない!そんなことしてない!」
お風呂から出てきたパンツ一丁の旦那が
逆ギレしそうな雰囲気を醸し出す。
それを抑え込む勢いで私は怒り狂い、
時に優しい声を出しながら
旦那に白状するように促す。
「…わざとじゃない。
ちょっと手が触れただけ。」
でたーーーー!
この一言が出たらあとはチョロい。
私は証拠のように次男の腕を見せながら
犯人を前にした敏腕刑事のごとく
言葉を並べて自白するよう畳みかける。
「…ごめんなさい。」
ごめんなさいじゃないわ!
いい加減にして!
なんでそんな下らない嘘つくの!
ほんとありえない!
結局旦那が謝っても
私は許す事なく鬼になり、キレる。
カサブタを剥がした事と、
私に嘘をついた事どちらも許せないのだ。
そんなの当たり前の代償である。
今朝、旦那の机の上に
大量のレシートが置いてあった。
恐らく財布の中を整理したのだろう。
なんの気無しにペラペラと眺めていると
近所の牛丼チェーン店のレシートが目に止まる。
『肉だく牛カレー 大盛』
おや?
『17時26分』
おやおや?
キュピーーーーーン!
私の頭の中で音がして、
全ての点が、線になる音がする。
私の背中からメラメラと炎が燃え、
スーパーサイヤ人に変身しそうである。
昨日の夕飯を、
旦那はあまり食べなかった。
お腹空いてる?と聞いた時は
「まぁ、空いてるかなぁ」と言っていたが、
いざご飯を食べ始めると全然食べなかった。
そもそも旦那は18時頃に帰ってから
朝食べれなかったと言って持って帰ってきた
コンビニのソーセージエッグマフィンを温め、
ケチャップをかけて食べていた。
そしてプロテインも飲んでいた。
その結果、私が苦労して作ったご飯を
「美味そ〜!」と言いながらも
全然食べなかった。
「さっきプロテイン飲んだからかなぁ…
ちょっと今日遠出したから疲れちゃったのかも…」
昨日1日でかなり日焼けをした旦那は、
顔を真っ赤にしながら
弱々しくそう言っていた。
私も、
今日は遠出して疲れたのかな…
大丈夫かな…
と心配していつもより優しくした。
そして、夜ご飯をあまり食べない事を
問いただす事もせず
責め立てる事もせず
「いいんだよ。そういう日もあるよ。
体調悪いのかもしれないし、今日は早く寝よう!」
と、慈愛に満ちた声かけをした。
ちげーだろ!!!
夕飯あるのに、
17時26分に肉だく牛カレーを食べたからだろ!
しかも大盛で!
これからすぐに帰るねって連絡したくせに
牛丼屋寄って肉だく牛カレー(大盛)食べてたんだろ?!
そんで帰ってからもソーセージエッグマフィンとプロテイン飲めばそりゃ腹も膨れるわ!
息子に「お菓子食べたらご飯食べれなくなるよ?」じゃねえわ!
二度と言うなまじで!
お菓子どころか肉だく牛カレー(大盛)とソーセージエッグマフィンとプロテイン飲んだらご飯食べれなくなる事くらい誰でもわかんだろ!
しかもそれを隠して疲れたから食べれないとか嘘こいてんのがほんと許せない!
私の優しさと心配を返せ!今すぐに!
息子を見ながら野菜を切って、肉を漬けて、片栗粉まぶして、焼いて、調味料いれた時間返せ!今すぐに!!
きっと旦那には旦那の事情があったのでしょう。
17時26分までろくにご飯が食べれないくらい
仕事も大変だったのでしょう。
コンビニのソーセージエッグマフィンを持って帰ってきたくせに、朝マックしたレシートが出てきたのも何か理由があるのでしょう。
だからこんな事でキレてほんとすみません。
でも私には私の事情があるので、
ほんとすみませんがここでキレさせて下さい。
ここで吐き出すことによって心の平穏を保ちますので。
旦那はすぐ嘘をつく。
私を怒り狂わす嘘をつく。
そして旦那の嘘はすぐにバレる。
先週の土曜日、
私はまたもや旦那にキレていた。
休日だけど仕事に行かせて欲しいと言われ、
帰ると言った時間を1時間半過ぎても帰ってこなかったからだ。
いつものごとく帰る帰る詐欺をされ
私はイラついていた。
私がプンスカしていると、
長男がやってきて
「ママー。なんで怒ってるの?」
と聞いてくる。
「パパが帰ってくるの遅かったから怒ってるの。」
「そっかぁ。何で遅かったか聞いてくる!」
長男は旦那のいる風呂場へ向かい、
「パパー、なんで帰ってくるの遅かったの?」
と聞く。
「お仕事してたんだー」
申し訳なさそうな雰囲気だけは出しながら
旦那が答える。
私はそのやりとりを聞きながら
相変わらずイライラしている。
仕事に行くことは別にいい。
問題なのは時間を守らない事なのだ。
旦那が帰ると言った時間をもとに
こちらは頭の中で様々な計画を立て、
行動し、息子達を見ているというのに、
その時間をいつも平気で破る姿勢が許せないのだ。
長男がこちらへやってきて
「パパはねー、お仕事だったから遅くなっちゃったんだって。
ママ、ごめんね。大好きだよ。って言ってたよ」
…え?!
私は衝撃を受けた。
旦那は長男とのやりとりで
私に「ごめんね」も「大好き」も言っていなかった。
でも、長男は私に怒るのをやめて欲しいから
旦那が言ってもいないのに
「ごめんね」と「大好き」を付け加えて
私に報告したのだ。
その瞬間、
自分の怒りがヒュルヒュル小さくなり
消えていくのを感じた。
私は長男が嘘をつくのを初めて見た。
長男のつく嘘は、優しい。
そんな嘘をつかせてごめん、と心から反省し、
私は長男を抱きしめる。
「パパに、ママはもう怒ってないよ。
ママも大好きだよって伝えてきてくれる?」
「うん!!!」
長男はニッコリ笑い、
風呂場へ走って向かう。
なるほどなぁ。
こんな嘘もあるのか。
旦那の日頃のくだらない嘘に辟易としていた私は
長男の愛ある嘘に癒された。
人を傷つけるのは嘘だが、
人を救うのもまた嘘かもしれない。
私は遠い目で新たな悟りを開き、
風呂場での2人のやりとりに耳を傾ける。
戻ってきた長男は
「パパがさー、ママ、大好きだよ。
ママってほんとに子猫ちゃーん♡って言ってたよ」
と、ニヤニヤしている。
いや、言ってない。
長男と旦那のやりとり聞いてたけど、
言ってなかったやん。
それは盛り過ぎ。
ってかなんで子猫ちゃんなんて言葉知ってんの。
どうやら息子の嘘も
旦那に似てすぐにバレそうである。
さてさて、私はというと、
嘘はつかず、隠し事もせず、
真っ当に生きている!!…訳ではもちろんない。
夜ご飯の後の甘いものを
旦那に禁止された日は
一口で食べれる甘いものを光の速さで探し出し、
旦那の目を盗んで光の速さでこっそり頬張るし、
美味しそうなお菓子を
実は戸棚の奥の奥の奥に隠しているし、
日中忙しそうなフリをして
こうやってニヤニヤしながらnoteをあげている。
私たちは揃いも揃って嘘つき家族だ。
嘘はダメだが、
今のところ私たちのつく嘘は
ご覧の通り大した嘘ではない。
正直者がバカを見る、とか
嘘つきは泥棒の始まり、とか言うが
じゃあどうやって生きたらいいねん!
と頭を抱えてしまいそうである。
恐らく現代社会を生きる私たちには
適度な正直さと
適度な嘘つき具合が
適度に求められている。
私たちは皆
懐に小さな嘘を隠し持ち、
適度なバランス感覚に片足で乗りながら
ピエロのように今日を生きている。
嘘をつくのは
嘘がバレたとしても
決して失われることのない人間関係が
ちゃんとそこにあるから。
それがわかった時、
私たちは懐からおずおずと嘘を取り出し、
怒られたり、咎められたり、喜ばれたり、笑われたりして、更に人間関係を深めていく。
嘘はある意味、
とてつもない人間らしさも秘めているからだ。
はてさて、
旦那はこれからも
どのような嘘で私を楽しませ、
息子達はこれから
どのような嘘をつく人間に成長していき、
私たちはこれから
どんな嘘つき家族になっていくのか。
なんとも楽しみである。
願わくば、バランスを踏み外し、
下手なピエロにだけはならない事を
願って止まない。
旦那も息子達も、勿論わたしも。
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