大西洋子

イラストを描いたり、ショートショートを書いたりしています。

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マガジン

  • 毎週ショートショートnote詰め合わせ

    #毎週ショートショートnoteで書いた作品に、加筆修正したものを詰め合わせております。

最近の記事

ときめきビザ(毎週ショートショートnote)

読書通帳なるものをもらったのは、校外学習で図書館に行ったときだったと思う。 表紙に市のマスコットのイラスト、そこに自分の名前。専用の機械に差し込むと、冊子に図書館で借りた本のタイトルが記帳されていく。 多くのクラスメイトは、その時に記帳しだだけでその役目を終えていたと思う。 だけど、わたしの読書通帳は何冊も発行してもらい、とうとう読書通帳が使用できなくなる中学生になってからは、市販の手帳に書き留めるようにしていたけれど、漫画にテレビドラマに映画にゲームにイラスト、写真、

    • 化粧(毎週ショートショートnote)

      8月上旬の合同合宿を除けば学校に登校することがない私は、合宿が終わったその足で薬局に立ち寄り、ヘアーカラーを購入。色はさんざん悩んでオレンジ色に。 その夜親指程の太さの束を左右に二つ作ってその部分だけ染める。そうバイト先の先輩の真似。きれいに染まるかな、ドキドキ。 鏡の前に座り、いつもよりも丁寧にドライヤーで髪の毛を乾かしながら髪の毛を広げてみる。染めたところにオレンジの薔薇が現れ、髪の毛が元の位置に戻るとそれは消える。 うん、イメージどおり。 私はウキウキしながら、みんなで

      • 54字の怪談

        ギリギリ滑り込み(汗)

        • 言霊ラリー(毎週ショートショートnote)

          虫酸が走り、二の足を踏み、暗影を投じる。不安の種は空に弧を描き、着地と同時に深淵が広がる。 火の車を不眠不休で漕ぎ続け、鯉の一跳ねとばかりに賽を投じた。丁か半か、神のみぞ知る。 東奔西走、七転八倒さじを投げた。捨てる神あれば拾う神あり、捲土重来のトスがあがる。 言霊ラリーは、いつも先が読めない。 お題はこちらの「見たことがないスポーツ」から。 懐かしいものを紹介されたので、自作のもあげとこう。

        ときめきビザ(毎週ショートショートnote)

        マガジン

        • 毎週ショートショートnote詰め合わせ
          30本

        記事

          七夕異譚(毎週ショートショートnote)

          彦星が誘拐された。 カササギから、その知らせを受け取った織姫は、すぐにでも彦星の住まう天の川の向こうへ駆けつけたかった。 だけど、それはできやしない。一年に一度の彦星との逢瀬の時でさえ、カササギがかけた橋の端から端まで歩くことはできるけれど、彦星側の岸に降り立つができないのだから。 歯がゆさと苛立ちで、織姫は雲錦を織る仕事に身が入らない。……と言っても、今では雲錦から糸を作る紡練、それに糸から布を織る織布も機械まかせなのだけど。 織姫は機械の調子を確かめながら、誰がなんのため

          七夕異譚(毎週ショートショートnote)

          読書記録『祈願成就』霜月透子

          ショートショートnoteでの創作仲間でもある、霜月透子さん著『祈願成就』を購入し、一通り読み終わってすぐ再読せざるを得ない作品でした。 https://note.jp/n/n94fa3487102f 一周目読んだ時は、バブル、それから氷河期と称される時代から取り残された地方都市を舞台に、その当時の子どもなら夢中になったであろう秘密基地仲間の当時を軸に、「始まりの死」を火蓋に、次々と起こるそれに恐れを抱きました。 そして二周目は、プロローグで語られる願望が、尽く異様な形で

          読書記録『祈願成就』霜月透子

          友情の総重量(毎週ショートショートnote)

          🎵友達百人できるかな〜 小学生になる少し前から、そんな歌を何度も聞き、みんなで一緒に歌ったものだ。 そうして幼なじみのリョウは「友達百人作るぞ!」と宣言し、社会人になるころには百人余りの友人がいるという。 それに比べて儂はどうじゃ。親になり、爺やになった今も友人と呼べる者は片手で数えられるほど。 「やれやれ、お前と一緒になるとは思いもしなかった」 リョウとともに儂は向かう。閻魔様のもとに。 そこで亡者の生前の行為を再生され、罪の有無を裁くのは知られているが、その裁

          友情の総重量(毎週ショートショートnote)

          読書記録『ナースの卯月に視えるもの』

          ショートショートガーデン(SSG)、それから毎週ショートショートnoteでの創作仲間でもある、秋谷りんこさん著『ナースの卯月に視えるもの』を、発売したその日に購入いたしました。 https://note.jp/n/nffaff611https://note.jp/n/nffaff611fb34?sub_rt=share_b ですが、帯を見るなり、この本は今、とても読める状況ではないなと感じとり積読に。 ようやく本を読める状況になって、まっさきに読み出し、ページをめくるたび

          読書記録『ナースの卯月に視えるもの』

          今年も参戦! アルコールインクアート+切り絵を絵本仕立てで仕上げました。 2020年に作成した作品のリベンジ版です。 https://copicaward.com/ja/work/detail/21453

          今年も参戦! アルコールインクアート+切り絵を絵本仕立てで仕上げました。 2020年に作成した作品のリベンジ版です。 https://copicaward.com/ja/work/detail/21453

          春ギター(毎週ショートショートnote)

          「そのギター、まだあったんだ」 そのギターを見るなり、父さんがその作業の手を止めた。 「若い頃、それを持って弾き語りに出掛けたものだ」 差し伸べられたその手に、屋根裏部屋から出したばかりのそれを手渡す。 腰に吊したタオルで胴を拭うと、薄紅色の胴がさらに鮮やかな色になった。そうして縁側に腰かけかき鳴らす。新生活になれ初めたとはいえ、まだ進学でバラバラになった彼との約束を思い出させるフレーズ。 「あら懐かしい」 叔母さんの声。 「おじいちゃんったら、それで演奏していたわね」 小学

          春ギター(毎週ショートショートnote)

          新生(毎週ショートショートnote)

          もう、小さくなったから。 色が気に入らないから。 ハロウィンの仮装用だから。 ちっちゃなレインコート。 色鮮やかなレインコート。 イベントは終わったから。 小さい誰かにおさがりへ、 気が変わるかも知れないから、 また来年のイベントに、 だけど、袖を通されないまま、時は過ぎ、 このままだと捨てられちゃうぞ。 その声に袖を伸ばし、闇の中から伸びたその手を握り、レインコートは外に出た。 声の主は、大きな一つ目のある和傘に一歩足のオバケ。唐傘オバケは自慢の一歩足でぴょんぴょ

          新生(毎週ショートショートnote)

          祝宴(毎週ショートショートnote)

          真新しいシャツに袖を通し、クリーニングから帰ってきたばかりのジャケットを手渡された。 「スーツじゃなくていいのか?」 「ラフな服装で来てくださいって、案内が来ていたでしょう?」 ラフな格好で? 首をかしげながら、妻に急かされ、そのジャケットを羽織る。 聞き慣れない車のエンジン音、しばらくして呼び鈴が鳴る。 「お迎えにまいりました」 もう、こんな時間だったのか。迎えの者の手を借り、車に乗り込む。 「では、主人をよろしくお願いします」 車は走り出す。見送る妻の姿が小さくなり、わし

          祝宴(毎週ショートショートnote)

          命乞いする蜘蛛(毎週ショートショートnote)

          ――自分に近づくものを見たら、急いでその場を離れるのですよ。 生まれたばかりの私達に、母はそう叫んで私達を送り出し、何十、いやもしかしたら百か。ともかく数多くの兄弟と、競い合うかのように四方八方へと散らばった。 暗がりで身を潜める術、食を得るための術、糸を使って遠くに行く術、そして母が教えてくれた生きるための術。そのどれもが、私の身体を大きくしていった。 その日は春の陽気が一段と強く、久し振りに満足な食にありつけたのもあって、葉の上で微睡んでいた。 と、突如、私の身体が持ち上

          命乞いする蜘蛛(毎週ショートショートnote)

          桜回線(毎週ショートショートnote)

          「急いで。このままだと間に合わないぞ」 去年は早かったと言われたのに、今年は遅いと急かされる。 「待って、待って。まだ手筈が整っていないから」 つくしは生えそろったばかりで、タンポポパラソルもまだまだら。 始まりの四月はもうすぐなのに。 早く早く。 小さな花たちが。 早く早く。 冬を越した虫たちが。 まだか、まだか。 雷と共に春一番が駆け抜けて、 「待たせてごめん」 海の彼方からツバメ達が運んできたそれを、 「あとはまかせろ」 大小様々な鳥たちが、小枝にそれを絡ませ巣を作る。

          桜回線(毎週ショートショートnote)

          魔女の事始め(毎週ショートショートnote)

          魔女と鉄は相性が悪い。特に魔法具を作り出す時に使う物はね。ちょうどお前に貸し与えた草刈り鎌、研ぎ直しても切れ味が悪くなってきただろう。いい機会だ、鉄物を魔法具に変える儀式の手順を教えてやろう―― 魔法見習いになって五年、月の満ち欠けに合わせた生活になれ、よく使う薬草の刈り取り、どの部分をどのように処理し、どう保存するのか覚え、簡単な薬を任されるようになってきたところ。 鉄物を魔法具に変える儀式への同行を許されたということは、いよいよ一人前の魔女になる時期が迫ってきた証拠。

          魔女の事始め(毎週ショートショートnote)

          宮(毎週ショートショートnote)

          姫様はお礼と称し酒宴を開く。艶やかな舞い手に壮美な奏、頬がおちそうなご馳走の数々、そうして姫様自ら酌をする。宮の外の話を問いながら。 客人が目覚め、酒宴が開かれ酔い眠るまで、毎日、毎日、毎日。 その酒宴の影で、宮に仕えしものは、新たな舞い手を探し、ご馳走となるものを探し、酒に浸す薬草を集め、客人様の寝床に香を焚く。毎日、毎日、毎日。 客人が、そろそろ家に戻りたいと言いだしたとき、姫様をはじめ宮に仕える皆から、ほうと溜息が漏れるのは毎度のこと。 客人に酒宴という快適な日々の終わ

          宮(毎週ショートショートnote)