春ギター(毎週ショートショートnote)
「そのギター、まだあったんだ」
そのギターを見るなり、父さんがその作業の手を止めた。
「若い頃、それを持って弾き語りに出掛けたものだ」
差し伸べられたその手に、屋根裏部屋から出したばかりのそれを手渡す。
腰に吊したタオルで胴を拭うと、薄紅色の胴がさらに鮮やかな色になった。そうして縁側に腰かけかき鳴らす。新生活になれ初めたとはいえ、まだ進学でバラバラになった彼との約束を思い出させるフレーズ。
「あら懐かしい」
叔母さんの声。
「おじいちゃんったら、それで演奏していたわね」
小学