新生(毎週ショートショートnote)

もう、小さくなったから。
色が気に入らないから。
ハロウィンの仮装用だから。

ちっちゃなレインコート。
色鮮やかなレインコート。
イベントは終わったから。

小さい誰かにおさがりへ、
気が変わるかも知れないから、
また来年のイベントに、

だけど、袖を通されないまま、時は過ぎ、

このままだと捨てられちゃうぞ。
その声に袖を伸ばし、闇の中から伸びたその手を握り、レインコートは外に出た。

声の主は、大きな一つ目のある和傘に一歩足のオバケ。唐傘オバケは自慢の一歩足でぴょんぴょんと夜道を跳ね回る。

どうだい、雨の降らない外は。
公園の遊具の独り占めに、寝静まった町を跳ね回り、たまに出くわしたニンゲンには、イタズラを仕掛ければいい。
長い舌をうねうね動かしながら、唐傘オバケは妖怪にならないかと囁きかける。

レインコートはしばし考える。
そうしてたずねてみる。
誰かさんの、雨の日のお出かけのお伴になれますか? と……

唐傘オバケは答えられない。
跳ねるのをやめ、腕組みして、長い舌を動かすのもやめて、考えてみるけれど答えられない。

と……
できるよ。
雨の日じゃなくても、お出かけのお伴になれるよと。
ネコにキツネにタヌキにイタチが口を揃えてできると大合唱。

その日から、夜中にレインコートを来た小動物が、道を横切るのを見かけたニンゲンがいるらしい。

お題はこちらの「オバケレインコート」から。