桜回線(毎週ショートショートnote)

「急いで。このままだと間に合わないぞ」
去年は早かったと言われたのに、今年は遅いと急かされる。
「待って、待って。まだ手筈が整っていないから」
つくしは生えそろったばかりで、タンポポパラソルもまだまだら。
始まりの四月はもうすぐなのに。
早く早く。
小さな花たちが。
早く早く。
冬を越した虫たちが。
まだか、まだか。
雷と共に春一番が駆け抜けて、
「待たせてごめん」
海の彼方からツバメ達が運んできたそれを、
「あとはまかせろ」
大小様々な鳥たちが、小枝にそれを絡ませ巣を作る。
鳥たちの巣は桜前線到着の前触れ。
ツバメ達は遥か南から、桜回線を運び、人々に始まりの春を告げにやってくる。


お題はこちらの「桜回線」から。