宮(毎週ショートショートnote)

姫様はお礼と称し酒宴を開く。艶やかな舞い手に壮美な奏、頬がおちそうなご馳走の数々、そうして姫様自ら酌をする。宮の外の話を問いながら。
客人が目覚め、酒宴が開かれ酔い眠るまで、毎日、毎日、毎日。
その酒宴の影で、宮に仕えしものは、新たな舞い手を探し、ご馳走となるものを探し、酒に浸す薬草を集め、客人様の寝床に香を焚く。毎日、毎日、毎日。
客人が、そろそろ家に戻りたいと言いだしたとき、姫様をはじめ宮に仕える皆から、ほうと溜息が漏れるのは毎度のこと。
客人に酒宴という快適な日々の終わりは、宮に住まいし者らが、客人から生への執着心をいただき、不要となった肉体をいただき、身軽な骨になったあと。
そうして、荒波に託し、故郷に繋がる岸へ姫様自ら運ぶ。
竜宮とはそのような場所である。

こちらの「お返し断捨離」から。