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ハラスメントの相談体制と会社の対応策

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 昨日は、日本労働組合総連合会が発表した「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」で明らかになった職場におけるハラスメントの実態を少し紹介しました。

 今日は、同じ調査の中で明らかになった相談体制の現状と会社の対応策の実態についてご紹介します。

相談体制の現状

 職場でのハラスメント対策にと、相談窓口を設置している会社が多くなってきています。
 そして、相談窓口の積極的な利用を呼びかけている会社では、実際にハラスメントに関する相談が寄せられています。

 しかし、それで全部のハラスメントを拾い出せているかどうかは不明です。

 連合の行った調査でも、「職場でハラスメントを受けたことがある人」のうち、ハラスメントを受けたときに誰かに相談した人は56.8%でしたが、誰にも相談しなかった人は43.2%にも上っていました。

 その中でも男性の相談しなかった人の割合は5割を超え、女性の約3割が誰にも相談しなかったのと比べて高い確率で胸のうちに止めていることがわかります。

 相談した人のうち、会社の相談窓口を使った人はたったの4%弱、会社の人事担当者に相談した人は9%弱と、非常に低い割合でした。

 誰に相談しているかというと、約4割の人が職場の上司・先輩、約3割の人が職場の同僚、2.5割の人が家族でした。

 お金をかけて設置した相談窓口がほとんど利用されていないのです。

 信用されていないのか、そもそも相談窓口の存在が知られていないのか・・・

 他方で、誰にも相談しなかった人の理由は、7割弱の人が、「相談しても無駄だと思ったから」と回答しました。

 育児放棄されている赤ちゃんは、泣いても誰も来てくれないから、そのうち泣くことを止めてしまうそうですが、それと同じことですね。

 また、3割弱の人が「相談するとまた不快な思いをすると思った」と回答し、約2割の人が「自分さえ我慢すれば相談するほどのことではないと思った」とか「誰に相談してよいのかわからなかった」と回答しています。

会社の対応策の実態

 このような調査結果を見ると、会社が相談窓口を設置している場合でも、それがうまく機能していないことがうかがわれます。

 相談窓口の存在が周知されていない、会社に相談しても何も対応してもらえないと思われている、むしろ不利益を被るのではないかとさえ思われているのです。

 実際、パワハラの内容・方針の明確化、周知・啓発が全く行われていない会社は4割にも上っていました。行われているかどうかを知らないと答えた人も約3割いて、ほとんどの会社で、パワハラ防止に関する方針が明確になっておらず周知啓発もされていないということがわかります。
 これがセクハラ、マタハラ、ケアハラに至ってはもっと高い比率になっています。

 パワハラについては労働施策総合推進法で、セクハラについては男女雇用機会均等法で、マタハラ・ケアハラについては男女雇用機会均等法と育児介護休業法で、それぞれ会社の取るべき施策が定められていますが、ほとんどの会社は法律の定めに沿った対応がなされていないということなんですね・・・

もう一度法律を確認して!

 ハラスメントの撲滅に向けて会社が取るべき施策は、本来法律で強制されてやることではなく、従業員が働き易い環境作りのために会社が自ら進んでやることです。

 従業員が働き易ければ、会社の業績も上がるはずですから。

 でも、何をどうすればいいのか分からないときには、まずは法律の内容をよく確認してみましょう。
 法律では、絶対にしなければならないこと(義務)と、やったらいいよというレベルのこと(努力義務)が書かれています。
 まずは、義務とされている最低限のものから取り組んでいくようにしましょう。

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