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本採用拒否

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 4月ももうすぐ終わりですね。

 4月から採用された新入社員も、そろそろ職場に慣れたころでしょうか。

 いつもなら、新入生や新入社員が町にあふれ、溌剌とした雰囲気に包まれている時期ですが、去年も今年も様子が違って、いったい今何月だったっけ?と思ってしまいます。

 今日からの緊急事態宣言をふまえて、宝塚歌劇は昨日、明日からの公演を当面中止するとのニュースを出しました。がっくり・・・
 観劇の度に息を吹き返している私としては、早く安心して観劇できる日が待ち遠しくて仕方ありません。

 しかし、ほとんど何の記憶もないままに過ぎ去った昨年の二の舞にならないよう、今年はコロナに翻弄されず、自分ができることに集中して過ごしたいと思います。

 さて、今日は、新入社員を採用した会社が必ずといって良いほど直面する、試用期間中・試用期間満了後の本採用拒否について説明します。

 なお、『試用期間中の解雇・本採用拒否』については、2021年1月18日のnoteにも書いていますが、今の時期にタイムリーなトピックとして、簡単なおさらいをしておきます。両方の記事を併せて参考になさってくださいね。

試用期間は誰が何を判断するための期間?

 試用期間は、本採用の前に、当社の従業員として適格かどうかを判断するために試しに働いてもらう期間です。

 適格かどうか、という意味は、基本的な仕事能力だけでなく、職場における協調性や人間性なども判断の対象となります。

 使用者側だけでなく労働者側からしても、その会社で働き続けられるかどうかを判断する期間が必要なことは確かです。しかし、労働者が会社を辞めたいと言えば、試用期間だろうが本採用後だろうが、使用者がそれを拒否して働き続けさせることはできませんから、労働者の側には試用期間という特別な期間を設ける必要はありません。

 したがって、試用期間は、労働者に適格性がなければ労働契約を解約するかもしれないよ、という使用者のための条件付きの期間であると言われています。

どんな事情があれば解約できる?

 では、どんな事情があれば解約権を行使できるのでしょうか。

 この点については、2021年1月18日の『試用期間中の解雇・本採用拒否』を是非ご覧ください。

 要は、試用期間といえども、解約権を行使することはそんなに簡単ではないよ、ということを書いています。

 解約権を行使しようとするなら、それなりに教育して指導して、という育成の努力の跡が見られなければならないんですね。

 他方、新卒でない場合は、何か特別なスキルを求めて中途採用していることが多いでしょうから、期待していたスキルがなかった時には、新卒者ほどの育成努力がなくても解約権を行使することは可能になることが多いです。

本採用拒否するなら解雇予告

 試用期間中に本採用できないなと思ったら、解雇予告が必要です。

 つまり、本採用しないこととする30日前にその旨を告知しなければなりません。

 ですから、試用期間満了と同時に辞めてもらおうとするなら、満了日の30日前にはその旨を伝える必要があります。

 もし、30日を切ってしまっているなら、足りない日数分はお金で支払うしかありません。

トラブル予防のためには

 試用期間中の解約権行使とはいえ、通常の解雇と同じくらいのハードルの高さです。

 ですから、試用期間中に本採用拒否をしたことで、後々裁判で争われて多額の支払いを命じられるということもあり得ます。

 そのようなことのないよう、試用期間中であったとしても、いきなり解雇権を発動したり、本採用拒否を一方通告するのではなく、まずは退職に向けた合意形成ができないか、じっくり検討し話し合うようにしましょう。

 時には、解決金を支払うことも検討してもいいかもしれません。

 将来の莫大な額の支払命令や紛争になった時の煩わしさを思えば、今の時点での出費は大したことではありませんので。

 また、逆に、紛争が嫌だからといってずるずると雇用を継続していると、ますます解雇することが難しくなっていきます。しかも、その従業員がいることで、社内の環境が悪化する危険性もあります。

 決断することから逃げず、迅速に判断するようにしましょう。


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