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【悪い癖】「来客時に吠える」のはどうしたら直る?

よくご相談いただくのは犬の吠え癖。特にチャイムが鳴ったり、友達が遊びに来たり、宅配の人に吠えてしまう、というお悩みの方が多いのではないかと思います。この記事では、どうして犬が吠えるのか?どうしたら吠えなくなるのか?ということをご紹介します。


1.犬のボディランゲージを観察する

そもそも犬はどうして来客時に吠えるのでしょうか?まず犬のボディランゲージでどんな感情になっているかを確認してください。

・吠える前はどんな様子が見られますか?
・吠えた後や来客が帰った後はどんな様子が見られますか?

この感情の変化によって、犬が何のために吠えているかを考えてみます。例えば・・・

吠える前:耳がピンとして緊張し、警戒している様子が見られる
   ↓
来客が帰った後:安心してゆっくりくつろぐ

という状況であれば、きっと不安から見知らぬ人を追い払おうとしているんだろうと推察できます。一方警戒ではなく、嬉しさのあまり興奮性が高まり吠えている場合もありますよね。犬の感情から、どういう理由で吠えているかということを判断していきましょう。

Tip
ボディランゲージの読み方はこの記事で紹介していますが、しっぽを振り振りしているからと言って喜んでいるわけではありません。よく飼い主さんは「知らない人もしっぽを振っているから好きだと思うんだけど・・・」とおっしゃっていることがありますが、誤解の可能性が高いです。しっぽだけでなく、体全体の動きで、どんな感情を示しているか、確認しましょう。


2.犬の行動のトリガー(刺激)を発見する

そもそも吠えるというのは何をトリガーにしているのでしょうか?チャイムの音でしょうか?玄関に入ってきたとき、リビングに入ってきたとき、ケージのそばを通ったときなど、いろんなパターンがそれぞれあると思います。行動が起こる前の過程をプロセスに分けて実験してみます。

例えばお客様が来た時はこんなプロセスになるかもしれません。(右側は犬にとってのトリガーです)

①誰かが車でやってくる=エンジン音がする
②車のドアを開けて閉める=ドアの開閉音やキーがカチャカチャする
③家の玄関まで歩く=砂利を踏む音がする
④チャイムを鳴らす=ピンポーンという音がする
⑤お客様が入ってくる=玄関に入り、犬と対面する
⑥お客様がリビングに通される=見知らぬ人が家の中に入ってくる
⑦お客様がトイレに行く=ケージの横を通る
⑧お客様が帰る=見知らぬ人が帰っていく

宅配の方が来た時は、このうち家の中に上がってくるプロセスの⑥⑦がない感じになりますね。こうやって整理すると、犬は何を刺激として行動しているかがわかります。刺激は一つだけではなく、複数の組み合わせになることもあります。

3.トリガーがほかのシーンで発生しても起きるかを観察する

次に、そのトリガーが起こると、犬がいつも「吠える」という行動をおこしているかどうかを確認します。例えば、⑤お客様が入ってくる(対面する)というタイミングで吠える犬の場合、お散歩中でも見知らぬ人に吠えますか?どんな場合でも見知らぬ人に吠える場合は、「見知らぬ人」自体に吠えていると判断できますが、散歩中には吠えないという場合は、「家に見知らぬ人が入ってきた」という状況に吠えているんだとわかります。

Tip
相談事例の中で一番多いのは、
・どんな時でも見知らぬ人に吠えてしまう
・家族以外の知らない人が家に入ってきたときに吠えてしまう
という事例です。後者は特にドーベルマンなど護衛犬として使役されてきた歴史がある犬種や、柴犬のようにあまり人間による交配の歴史が浅い犬種は、縄張りの意識が非常に強いため、吠える傾向にあります。


4.犬の吠えるメカニズムを理解する

犬がなぜ吠えるのかという理由とトリガーがわかったところで、ここから犬がどうして吠えているかということを整理して考えていきます。例えばチャイムが鳴ると吠え始めて、来客中ずっと吠えてしまうというワンちゃんのケースを考えてみます。

■前提
1.犬のボディランゲージ:
吠える前:耳がピンとして緊張し、警戒している様子が見られる
   ↓
来客が帰った後:安心してゆっくりくつろぐ

2.犬の行動のトリガー(刺激)
チャイムの音。車のエンジン音や家の前を通る人の足音には反応を見せるが、吠えない。ケージのそばに寄っても寄らなくても吠え続けている。チャイムを鳴らさずに見知らぬ人が入ってきても吠える

3.トリガーが他のシーンで発生したら
チャイムが鳴って見知らぬ人が玄関に入ってくると吠える。来客中はずっと継続的に吠え続けている。帰っていくと吠えなくなる。チャイムが鳴っても家族が帰ってきたんだとわかると、吠えなくなる。

ここまで整理されると、犬が「チャイム=見知らぬ人が家に入ってくる合図
と考えている」ことがわかってきます。また、吠えたあと、犬にとってどんな結果がもたらされたかというと、「安心」を獲得できていますよね。別に犬が吠えたから友達や宅配の人が帰っていったわけではありませんが、犬からすると、「吠え」た結果として、「縄張りが守れた!」という成功体験を獲得できているのです。つまり・・・

チャイムの音=見知らぬ人が家に入ってくる!縄張りを侵される!(不安や葛藤の気持ち)

吠える=見知らぬ人を追い払いたい!

ご褒美=お客様が帰っていった!(安心や喜び)

と学習しており、実は飼い主さんが意図していないにも関わらず、この吠える行動は強化されていることが多いのです。

Tip
この犬の行動が強化されることをオペラント条件付けと言います。「【学習理論】オペラント条件付けとは?」という記事でも紹介してますので、ぜひご一読ください。


5.行動が起きないように徹底的に環境を管理する

4まで出来たらあと一息です。そもそも犬が成功体験を積んでしまったら、どんどんその行動が強化されてしまうので、まず、行動が起きないようにするのが大事です。

例えば、チャイムがトリガーとなっている場合、チャイムの音を変えてみたり、音を小さくしたり、来客が予期される場合は、チャイムの音が聞こえないような部屋で遊ばせたり、飼い主さんが犬が置かれている環境を変えることで行動が起きづらくするようにしてみましょう。

また、縄張りに人が入ってきたと気づかれないよう、犬を他の部屋に連れていったり、ケージにブランケットをかけて目隠ししたりすることもおすすめしています。音でばれることもありますので、テレビやラジオの音なんかを小さく流しておくといいでしょう。


6.刺激に反応しないように慣れさせる

チャイム音=縄張りを侵されることへの不安・葛藤と学習してしまっているので、この関連付けを弱くしていきます。例えば・・・

チャイム音=家族が帰ってくる(嬉しい)
チャイム音=おいしいものが出てくる(嬉しい)
チャイム音=遊びの時間(嬉しい)

なんてことをして、チャイム=不安・葛藤という関係性を崩していきます。この時注意しなくてはいけないのが、刺激の大きさをコントロールするということです。例えば、縄張りに見知らぬ人が入ってくることに吠えるという場合、いきなりずかずかはいっていくのではなく、足先を少しだけ縄張りに踏み入れます。OKだったら、10cmくらいずつ、縮めていきます。このとき、焦ってはいけません。犬のペースで練習していってください。できなくてもがっかりしないでください。10cmがだめなら5cm、3cmと、犬のペースにあわせて、慣らしていくことが重要です。
音の場合は、録音して音量をコントロールすることもできますよ!

Tip
これは「消去」「脱感作」と呼ばれ、パブロフの犬が「ベル音=よだれが出る」と学習した古典的条件付けを崩すときに用いられる方法です。古典的条件付けについては「【学習理論】古典的条件付け」の記事でも詳細をご紹介してますので、ぜひご一読ください。


7.他の行動に置き換えていく

刺激に過度に反応しなくなってきたら、ほかの行動に置き換えていきます。例えばオスワリやフセができるのであれば、チャイム音=フセと教えられたらいいですよね!

チャイムの音

犬がフセする

犬はご褒美がもらえる、知らない人も帰る(嬉しい!感動!最高!)

となったら、飼い主さんだけでなく、犬にとっても嬉しい、まさにWin-Winの状態です。

これをするためには、チャイムの音で必ず犬に「フセ」の指示をします。

チャイムの音

飼い主がフセのコマンドを出す

とうことを続けていくと、チャイム=フセが学習され、わざわざコマンドを出さずともフセをやってくれるようになっていきます。

もしトレーニングをしていない、あるいはいつもはできても、この時だけはしてくれないなどの場合は、「吠える」以外の行動に全部ご褒美をあげます。耳がピンとして警戒していても、吠えなければご褒美をあげます。怖がって隅に縮こまっていても、吠えなければご褒美をあげます。飼い主さんにぴょんぴょん助けてと飛びついてきても、吠えなければご褒美をあげます。

あと、飼い主さんが犬が両立できない行動を誘導してあげることも一つの方法です。ガムやコングなどを夢中で食べている間やおもちゃをかじかじしている間、吠えることができませんよね。

Tip
唸っている、歯をむき出しているという様子があったらご褒美をあげないようにしましょう。これは攻撃行動の一種です。吠える代わりに、他の攻撃行動に取って代わっては元も子もないので、それ以外の行動にご褒美をあげるようにしましょう。


まとめ

よくしつけサイトでは犬の嫌がる音などをさせて吠えるのをやめさせるように書いているものもあります。確かにその方法で吠えなくなることもありますが、代わりにどんな行動を取るのが適切かわからないと、犬も困ってしまいます。また、犬と飼い主の信頼関係を損なうリスクもあります。なので、先に1~7をやってみて、先に良い行動を教えてあげましょう。


そして嫌悪刺激を使うときはプロと一緒に適切な刺激の強さ、タイミングで使用することをお勧めしています。もし一緒にやってみたいという方はこちらにお問合せください👇


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