どこか哀愁と遠慮があって、一生懸命な人たち
ひょんな用事があって山梨の実家に帰ってきている。
実家にいるときは家に引きこもってゴロゴロとしていることが多い。足となる車もないし、家事は母親がすべてしてくれて、罪悪感を感じながらも甘えてゴロゴロしている。
今回もそんな感じで、父と母そして妹の全員が仕事に行っている間、「ピンポーン」とチャイムが鳴った。宅配便だ。
「はーい」と玄関のドアを開けると、トラックの方に戻る男性の後ろ姿が見えた。家には誰も居ないと思ったのだろう。ちょっと驚いたように振り返ると、優しくどこか遠慮がちに笑いながら「ちょっと待ってて」とトラックに走っていった。
トラックから出したダンボール箱の荷物を脇に抱え、結構なスピードで走って戻ってくる。「疲れちゃうからそんなに走らないで」という気持ちを込めて目線をそらし、「全然待ってないですよ」という雰囲気を醸し出そうと努める。
「車が無いから居ないかと思って」
そう言って荷物をわたしてくれた男性は、再び、優しくどこか遠慮がちな笑顔だった。目尻には笑いじわ。優しいその笑顔に一瞬で引き込まれた。
ああ、山梨県の匂いがする。
実は山梨県人は「ちょっと排他的」と言われることが多い。昔は、山梨県以外のナンバープレートをつけた車が走っていると、「県外の人」「県外ナンバー」と呼ぶ習慣があったようだ。
これには360度を山に囲まれている地形や、海がないので食料調達も簡単ではないことなどが関係しているのではないかと踏んでいる(ただの推測だけれど)。
私自身も結婚してから高知に移り住んで、高知の人の大らかさと直球さに驚いた。知らない人にもすぐに話しかけてくれる。あの心の底からの明るさは、それまであまり触れたことのないものだった。
そう。排他的とは言われるし、私自身もそう思うところはあるのだけれど。
でもなぜか好きなのだ。ニコニコしているんだけど、どこか哀愁と遠慮があって、一生懸命な人たち。
人のことは好きだし気になるけど、迷惑をかけたくないという思いで引っ込んでしまうところ。
外ではひたすらいい顔をしたり盛り上げたりするんだけど、家でちょっと疲れちゃうところ。それでもまた外に出ればがんばっちゃうところ。
優しいのだけどその優しさは本当にささやかで目に見えないし、表立ってアピールしないから分かりづらい。分かってもらえなくてもいいやと思っていたりもする。
ちょっと不器用で我慢強くて、静かで遠慮がちなんだけれど、内には熱いものを秘めている人たち。
そんな山梨の匂いを感じて、ああ帰ってきたなあと思う。
一度は学校の人間関係が嫌で山梨のことを嫌いになりかけたけど、今ならもう少し大きな視野を持って見れるかもしれない、秘めた優しさにもっと気づけるかもしれない。
そう思った。
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