言葉の宝箱 1003【何もかも便利になったけれど、その分、無駄が多いんだよな】

『東京ホロウアウト』福田和代（創元推理文庫2021/6/11）

2021年7月オリンピック開催間近の東京で新聞社宛に「開会式の日、東京を走るトラックの荷台に青酸ガスを仕掛ける」という予告電話が掛ったのが全ての始まりだった。直後、配送トラックの荷台から青酸ガスが発生するテロが次々と起こる。更に何者かが仕組んだトンネル火災や鉄道線路の土砂崩れなどの影響で道が閉ざされ、東京の食料が品薄になってしまう。分断される道路、届かない食料、回収されないゴミ。物流が狙われ、陸の孤島となりかける東京。その危機に物流のプロである長距離トラックドライバーたちが立ち向かう。物流崩壊の危機をリアルに描いたサスペンス。
改稿を経て文庫化。

・世の中には、飛び込んでみるまでわからないことも多い　P81

・好物を食べ、
自分の人生を豊かに彩ってくれた知人たちに別れの挨拶をしながら、
故郷と息子の墓に向かって北上する。
その行動が意味するものは、ひとつしかないように思えて焦る　P88

・大量に作って、大量に消費して、大量に捨てるんだ。
本当に、ぜんぶ必要なんだろうか（略）
豊かさって、そういうものじゃないの。
欲しい時に、欲しいものが手に入るってことだろ　P104

・何もかも便利になったけれど、その分、無駄が多いんだよな　P106

・混乱を煽る人がいて、それに踊らされているんだよね、きっと　P154

・働くということは、社会での自分の役割を選び取ることなんだ　P164

・男性社会で仕事を容易に進めるためには、
言葉遣いと態度にコツがある　P207

・パワーを手にしなけば発言権がない　P208

・苦しい時に手を差し伸べてくれる相手は、黄金よりも尊い。
いつか必ず、自分も何かの形で相手に返す　P212

・追い込まれた時こそ、人間の本来の姿が出るものだな　P218

・スポーツにおいて、勝ち負けは決して小さな差ではない。
みんな、できれば勝ちたいと願っている。
だが、勝ち負けだけで終わってほしくない　P253

・みんなが自分の持ち場を守るしかないよな　P281

・みんなの「なんとかしなくては」という気持ちが集まれば、
技術が結集し、ふだんは思いもよらない瞬発力が生まれるのだ　P305

・迷いが晴れたとは、言わない。
最後まで自分は、迷い、苦しみ続けるのだろう。
だが、いちど始めたことだ。最後までやるしかない　P310

・経済が、
怒濤のように良心や倫理観や人間の正しい価値観を押し流していく（略）
正しいことだけをやっていて、企業の経営が成り立つものか。
時には他人を押しのけ、押し出し、厚かましいふるまいが勝利を呼ぶ　P314

・人間、歳をとるほど、本音を言えなくなるもんだな　P318

・この国は災害大国だ。
今でも各地に、震災や噴火や台風被害で家を失った人間が大勢いる。
災害時に被害を最小限に食い止める方法はあるが、
金がかかるから、なかなか国はそれを実行に移さない。
そのくせ、オリンピックだの、派手に見えるプロジェクトには
湯水のように金を注ぎこむ（略）
ローマの皇帝は、市民の目を政治から逸らすために、
パンとサーカスをふんだんに与えた。
現代のこの国も、オリンピックを利用して同じことをやっている。
あんたは、腹立たしくないのか？（略）
一度やった奴は、繰り返すんだ　P399