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言葉の宝箱 1061【不幸を盾にして身動きできないひともいる】

初野01

『退出ゲーム』初野晴(角川書店2008/10/30)

廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者穂村チカ、チカの幼なじみのホルン奏者上条ハルタ。音楽教師草壁先生の指導のもと、『吹奏楽の甲子園』普門館を夢見る2人に難題がふりかかる。化学部から盗まれた劇薬の行方、六面全部が白いルービックキューブの謎、演劇部との即興劇対決。
2人の推理が冴える青春ミステリ、ハルチカシリーズ第1弾。
『結晶泥棒』『クロスキューブ』『退出ゲーム』『エレファンツ・ブレス』四話連作短編集。

・なんとかする。むなしく響く言葉だと実感した。
そういって本当になんとかするひとはなかなかいない P19

・詩が素敵ならそれでいいじゃないか。
耐え忍ぶ寒い冬がきたということは、暖かい春がくるのも遠くない。
いまたとえ不幸でつらくても、
それを耐え抜けば前途に明るい未来と希望が待っている。
そう信じる気持ち、大切にしたいな。
でも中には不幸を盾にして身動きできないひともいる。
厳しい冬の寒さの中、凍えた息を吐くだけで精一杯なひと・・・。
わたしだってわかっている。人間は言葉でいうほど強くない。
そういうひとは、どうすればいいの?
どうやって背中を押してあげたらいいの? P49

・才能ってのはね。
時空を超えて感化されながら引き継がれていくものなんだ P78

・たまたま不幸な偶然が重なっただけだ。
だから、だれも悪くない P81

・こたえのでない難問奇問にぶつかったときは、
それまでの経験や論理や知識がいかに無力でむなしいものかを知る(略)
ひとによっては何年も悩みつづけるかもしれないけれど、
それでも考えつづければ、いつかは論理の壁を破ってこたえが出る。
それが悟りというものなんだ P92

・小児脳腫瘍と診断されたきみの弟は、
成長するにつれて世の中の理不尽さに気づいたんだと思う。
それでも希望を失うことはなかった。
解決不能な難題にぶつかったとき、
どうすれば心が救われるのかを知っていたんだよ(略)
それは論理の壁を破った悟りの世界だ(略)
解決不能な難題を、非常手段で解決する。
それがきみの弟が遺したメッセージだ P100

・笑われてきたやつほど、打たれ強い。
俺みたいに結果主義や完璧主義で育ってきた人間とはバイタリティが違う。将来の成長性は明らかにあいつのほうが上だ(略)
自分に欠けているものを、素直に受け入れる誠実さがある P193

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