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言葉の宝箱 0919【女房一人、仕切れないのかい】

『三年坂』伊集院静(講談社文庫1992/8/15)


鎌倉の鮨職人の心に鮮やかに
亡き母の思い出が浮かび上がる瞬間を捉えた『三年坂』、
少年と父の感動的な絆を中国連峰の緑の中に見事に描いた『皐月』、
失意の中年男が草野球に誘われて
思いがけず自分の生き方を見つける『水澄』など、
深い抒情性と巧みな文体、 人生へのいつくしみに溢れた最初の小説集。
『三年坂』『皐月』『チヌの月』『水澄』『春のうららの』の5話。

・馬鹿だね。甚。女房一人うまく仕切れないのかい P47

・自分の中に沼のようなものがあるのを感じる時がある。
その沼の底には小さな意志が沈んでいる。
その石が何かの時に浮上してきて、
私の感情を追い立てたり、不安にさせたりする。
私はその石をすくいあげて、自分の手でその肌ざわりをたしかめ、
それを伝えることが小説を書く仕事だと思う時がある。
そうすれば、
もっと単純で誰にもわかり易い小説を書けるような気がする P202

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