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言葉の宝箱0626【どんなに意見が食い違っても同じ方向さえ見失わなければ大丈夫】


『東京公園』小路幸也(新潮文庫2009/8/1)


かつて写真家だったという亡き母の影響で、圭司は小学生の時から写真を撮り始めている大学生。圭司が好きな被写体は家族。公園で家族の写真を撮っていたことで初島夫婦を知り、その初島から妻の百合香が公園に行っている時の動向を探るように頼まれ、百合香が娘のかりんを連れて公園に行くと連絡があった時だけの探偵役をすることになる。北海道にいた頃からの幼馴染の富永。どこか大人びたところのある同居人ヒロ。父が再婚してから家族になった姉咲実などが脇を固め話を面白くしている。『水元公園』『日比谷公園』『砧公園』『洗足池公園』『世田谷公園』『和田堀公園』『行船公園』『井の頭公園』の公園ガイドとしても楽しめる。

・自分が撮りたいと思って撮る写真。
きっとそれは、感じるものなんだろうなと思っていた。
狙って撮るものじゃなく、自然と撮ってしまう写真 P11

・まだ、僕たちは途中にいる。
それは常に歩いていないと、
どこかへ向かっていかないと使えない表現だ P20

・人間はファインダー越しに嘘はつけない。
カメラマンが切り取ったその一瞬は、
確かにその人の本当の姿を伝えているんだ P33

・人間はさ、きちんと生きるのが最低限の義務なんだよ(略)
人に迷惑を掛けるような奴はそれだけでマイナスなんだ。
そこから這い上がったってようやくそれで
普通にちゃんと生きている人間に追いついたってことなんだ P40

・時間は掛かるけどお金が掛からないのがいちばん P65

・きれいな女性だと思う。
それは外見だけじゃなく、内からにじみ出てくるものも含めて。
こうして写真に撮ると、それがわかる P67

・お母さんは体力も必要なんだ P71

・表現者になろうと思ったら、ほら、芸人とおなじだ。
何もかも自分の芸のコヤシにする覚悟が必要だ P105

・人間は誰かと一緒になることをいつも考えているんだろうなって(略)
カノジョやカレシや、奥さんや旦那さんをさ、探しているわけじゃん。
みんな(略)
誰かを探した方が幸せなんだろうなって(略)
そこには幸せの匂いがあるって本能なんだよきっと。
人間が生きていく上でのさ。いちばん根っこにある本能 P106

・親の気持ちは親になってみないとわからない P114

・自分のやりたいことを最優先させる P142

・女を撮るときにはその瞬間だけ恋をするんだってさ。
モデルだろうがその辺のオバサンだろうが、
撮りたいと思った瞬間に恋しちまう。
ヌードなんか撮った日には
もう思いっきりその女を抱いている気になって撮る(略)
役者とおなじなんだろうな P153

・誰かのために生きるためには、その誰かさんが必要なんだろうな。
二人ともそういう人を求めていたのかもしれない。
それは、
単に好きとか恋とか愛なんていう言葉じゃ括れないものだろう P179

・政治が悪いわけでもなんでもない。
何も考えられない人間が増えすぎているのが全ての元凶さ P215

・どんなに意見が食い違っても同じ方向さえ見失わなければ大丈夫、
っていう思いがあれば、将来別れてしまっても後悔はしないと思う。
そのときに感じたその思いには嘘はないんだから P235

・天使と人間が愛し合っちゃうと天使は死ぬのよ。
そして、天使が死ぬと人間になっちゃうの P265


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