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@言葉の宝箱 0881【人の優しさに触れるのはいいものね】

『総選挙ホテル』桂望実(2016/6/1角川書店)


凋落している中堅ホテルを再生させようと、外部から来た変わり者の社長が提案したことは「総選挙」。ホテル内の従業員の配置を「選挙」で決めるという斬新な人材シャッフル案。しかもそれだけに終わらず、管理職の選挙まで。果たして従業員の反応は?今の日本の働く環境の閉塞感を打ち破るお仕事小説。様々な年代の男女が抱え働く悩みに答え、働くことの意味、働くことで成長できる喜びを読書で味わえるエンタメ作品。
『県庁の星』に続く、再生シリーズと呼ぶ人もいる。

○著者の言葉
「働く現場でしか学べないことがたくさんあると思っています。育った環境も、考え方も、年齢も違う職場の中で揉まれることが、人として成長させてくれると思っています。しんどいけれど喜びもある、それが職場。そこにある感動を小説にしたいと考えました。」桂望実

・たくさんの人を呼ぶにはどうしたらいいのかを考えたり、
多くの反響を狙うようになったりしたのはいつの頃からだったろう。
宣伝や企画の裏方仕事をするようになってからか。
それは間違っていたわけじゃない。
その部署ではそういうアプローチが必要だった。
だが・・・・・現場はそうじゃない。
たった一人の客のために全力であたる。
その客に満足して貰えるようベストを尽くす。
それを積み重ねていく―――。
それがホテルの現場。
そういうことができなくなっていたのかもしれない。
そうしているうちに客が離れ、評判が下がっていってしまったのだろうか。すべてのケースで気を抜かず全力投球する・・・・・
それしかないんだろうな。
結局、客に接する度に真剣勝負か―――大変だ。
それにちょっと恐ろしくもなってきた P191

・「ひと口飲んだ途端に、
一気にいろんなことが蘇ってきましたわ。
あの人の笑い声や、手のぬくもりや、匂いまで。
有り難う。皆さんの気持ちに・・・胸がいっぱい。
人の優しさに触れるのはいいものね」
「そう言っていただけると私どもも本当に・・・
なんと申しますか、嬉しいです。
現場には―――ここにはお客様の感動があって、
私どもの喜びもあると改めて気付かせていただきました。
こちらこそ有り難うございます」 P193

・ホテルは物を売っているのでも作っているのでもありません。
快適に過ごしていただく空間を提供する仕事です。
これはつまり接客が命なんです。
スタッフは多様なケースに遭遇します。
それに対応するには自分で考える必要があります。
お客様にとってなにが最善かを常に考える能力を高めていくよう、
スタッフを導くのがホテルの管理職の仕事だと思います P198


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