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言葉の宝箱 0409【長年一緒にいた気楽さと惰性が夫婦生活を支えている】

『怒鳴り癖』藤田宜永(文春文庫2018/10/10)


危機は日常の延長に思いもよらぬ姿で忽然と現れる。
そうした思わぬ苦境を前に立ち止まり、自分を見つめ直し、
再起をはかる6人の男たちを描いた6話短篇集。
『怒鳴り癖』『通報者』『時には母のない子のように』
『押入』『マンションは生きている』『消えた女』

『怒鳴り癖』
主人公はすぐにカッとなって人を怒鳴ってしまう旅行代理店の経営者。
ある日2人組の男たちに暴行を受ける。
自分が怒鳴りつけた人物の中に犯人がいるのではないかと疑心暗鬼になる。側近の部下からも、「社長はちょっと怒鳴りすぎ。出来の悪い社員でも使いこなすべきだ」と諭されるが、性分は変えられない。
『消えた女』
妻を亡くし、一人身となった67歳の男はコンビニで働く42歳の女と深い仲になった。ある日、姿を消した女は印のついた古い地図を5枚残していた。
地図をたどるうちに失った家族の記憶が甦ってゆく。

・長年一緒にいた気楽さと惰性が夫婦生活を支えているだけ P10

・すぐに泣く男と逆ギレする男の根の部分は同じじゃないでしょうか。
自尊心は強いが気が弱い人間が増えましたから。
そういう人間は、社会で生きていくのが不得意なんです。
車の運転にたとえると、
自動車教習所でハンドルを握っているような走り方か、
“俺だ、俺だ”って
サーキットでアクセルを目一杯踏むような運転しかできない。
公道を走るって、どちらでもないですよね P18

・自分の存在を消して生きるのにもっとも相応しい場所は都会である P250

・人と交流することで、
ひとりになった時に味わえた孤独のありがたみ P256

・理解されるって気持ちがいいよ P259

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