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トップアスリートと「思考のクセ」について

これは「スポーツアナリティクス Advent Calendar 2020」の19日目の記事です

見れば楽しいフェンシング。やっても楽しいフェンシング。
もともとは「決闘」から派生したスポーツで、本能的に「たぎる」ものがあります。

僕の後輩が関係している小学校の体育の授業でフェンシングを行ったところ、過去最高に生徒たちがのめり込んでいたそう。個人的に「大人のフェンシング体験」なんてものをいくつか企画・実施したりしましたが、大人がやってもものすごく盛り上がります。普段使わない動作をするんで、翌日、下半身バッキバキの筋肉痛となりますけど。

そんなフェンシングですが、相手の身体的特徴(身長、利き手など)や戦術、技術的要因がダイレクトに勝敗に直結します。勝利するためには得点とみなされる「有効面」を捉える必要がありますが、その有効面は前後左右に絶えず動き、(多少)変形する上に、剣による防御を掻い潜らなければ捉えることができません。相手の意図するところを予想し、1秒以内のほんのわずかな先の未来の的へ剣で突きにいく。逆もしかりで、相手の攻撃を予測して、自分の有効面を突かれないように防御を選択したり、あえて自ら攻撃をしかけたり、そういった判断を瞬時のうちに行わなければなりません。

そもそも、そんなやりとりをするためには、先ほどの有効面を確実に『様々な条件下で突く技術』がなければ駆け引きにならず、フェンシングはそういった技術がキーとなるスポーツです。

このような一瞬の判断に、動作や思考の「クセ」がよく現れますが、今回そういった思考の「クセ」の一つとして、 思い込み、先入観(以下、バイアス)についてのエピソードを一つ。

こちらの動画は、フェンシング日本代表の西藤俊哉選手の面白いプロジェクトの制作裏側の一コマですが、「バイアスが激しいため、自分が克服したい課題が間違っている可能性がある」という発言をしています。

西藤選手に限らず、トップアスリートやコーチはバイアスが強い人が多いと思っています。なぜ、バイアスが発生してしまうのか?

ビジネスデザイナーの濱口秀司さんは、この先入観(バイアス)について「正しく考えようとする」ことにより、オートマチックに物事を判断することにより起こる、ということを述べています。こちらの動画では、バイアスのメカニズムについて説明されており、更に、「バイアスは悪いことばかりではない」こともお話されているので、是非ご覧いただけたらと思います。

トップアスリートのバイアスが起こる要因は、正しく判断しようとすることや、自分の思い入れ、嫌な感情・記憶、、、様々あります。特に、彼らと接して感じるのは、「こうなって欲しい、あれが嫌だ」といった願望に紐ついているような印象を受けます。一生懸命に練習をしてきた課題を大切にしてしまいたくなったり、コーチや仲間の一言で意味づけが決まってしまったり。そんなアスリートへの印象も僕のバイアスなんですけど。

さて、バイアスに気づくためにはどうしたら良いのでしょうか?

一つは、モノゴトを可視化する、ということです。西藤選手も動画で話しているように、イメージだけで決めるのではなく、根拠となるデータを元に確認したり、考察していく。過去の自分のデータや参考となる値(指標)と比較したり、動画を元に振り返りを行う時、バイアスがかかったプレーに対して「なぜそう思うか?」という理由を考えることで、バイアスを壊し、より問題を明確にすることができると思います。

僕は「なぜ」を考えることを特に重視しているのですが、この辺りについては西原雄一さんの記事をご一読いただけたら幸いです。

最終的に決めるのはアスリート。

その意思を十分に尊重し、意思決定に貢献できるように、そして、彼らの思考を邪魔しないように、コミュニケーションをとっていきたいと思います。

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