受験地理の攻略術
初めに
今年はとんでもない暑さでしたね。私事ですが法科大学院卒業が見えてきました。けれど大学受験時のようにはいかないなと感じている今日この頃です。
受験地理の思い出
これまで私は日本史に関する記事を書いてきましたが、模試の成績は地理の方が安定して良かったです。
例えば上の写真は駿台に在籍する学生が中心に受ける全国判定模試ですが、1位を取ったことがあるのは地理ですし、
いつもお馴染み東大実戦でも日本史よりも地理の方ができてたりします。しかし、入試本番では2年連続で日本史の方が成績が良いという結果でした。
東大入試ではなぜこうした結果になったのかというと東大地理という科目の特殊性に原因があるように思います。東大地理はとにかく情報処理能力を問う出題で、問題の難易度自体は中〜難くらいなのですが、とにかく問題量が多い。設問が大体全部で20問なのに対して、解答に迷う設問が4問程度出たらその時点で詰みです。東大の社会は2科目を150分で解くものですが、問題の特性上解き切るのに要する時間としては世界史≦日本史<<<地理の順であり、実際に自分が入試や模試を解くと地理はどうしても75分程度は必要でした。(日本史は65分強)
そんな試験ですから、頭に浮かんだ答えをただ答案化するばかりで、推敲ができないことが日本史ほどは本番で点数が取れない要因だった気がします。
ですから個人的には東大受験で日本史地理の組み合わせにするのは物好き以外はあまりおすすめしません。ほとんどその組み合わせで受験する人はいませんし、共通テストを考えても日本史世界史の組み合わせがベストな気がします。
受験地理の攻略術
地理ってどんな科目?
さて個人的な話はこれくらいにして本題に入ります。
地理は、全く書けないということもないけど、かといって高得点が取りやすいとも言えない科目で、これは地理という科目の性質によると個人的には考えています。
地理は覚えたことをそのまま吐き出すというよりも最低限の知識は前提として、出題された事案を分析しその知識を当てはめる力(事案分析力)の方が遥かに重要です。また、この知識は地理を学ばずとも覚えるものだったりします。
例えば、太平洋の島々の国土が縮小している要因は?というような問題がよくありがちなのですが、答えとしては地球温暖化による海水面上昇について書けばよいです。ただ、この答えって下手すれば地理を学んでいない人でも書ける解答で、こんな問題が紛れてるからこそ地理は全く書けないということが少ない一方で、事案分析力も求められることから高得点が取りにくくなっているのだと思います。
それに対して歴史科目は出題分野の知識が無ければ何も書けません。しかし、逆に言えば知識さえあればそれを吐き出すだけなので知識量さえあれば得点は安定、つまり勉強量が得点に直結します。
そのため文系で社会に時間をある程度割ける東大志望者などには日本史世界史をお勧めしている次第です。(暗記が苦手な人には暗記量が少ない地理をお勧めします)
一方で、東大に限らず理系の人達がセンター試験で利用する社会科目は地理が多かった印象です。暗記量が少なく、過去問を解いて事案分析力をつければ80%近くは取れるからだと思います。灘出身の理1の友人がセンター1ヶ月前まで地理に触れてこなかったけど、そこから勉強して最終的にはセンター80%弱だったと聞いた時には入る大学間違えたなと思いました。
さて、暗記量が少なくともそれなりに地理が解けることを示す実際の過去問を紹介しましょう。私が受験した2016年及び2017年の東大地理が題材です。
まず、この問題を解くために必要なのは考える力です。
Q. XX'で並行している河川が比較的大きい河川であることから、仮に合流させたらどうなるでしょうか?
A. 合流したところから下流の流量が増加します。
Q. では流量が増加したらどのように困るでしょうか?
A. 大雨が降った際に河川が氾濫して洪水が発生するリスクが高くなります。
Q. では、なぜ流路を一般的なくねくねした状態ではなく直線にするのでしょうか?
A. 流量が増加した際に流路がくねくねしていると決壊する可能性があるため、流路を直線にして水を素早く海へ流す必要があります。
これを30字にまとめるだけです。地理特有の知識は必要ありません。
さて、この問題はいわゆる仮想水についての理解を問われているのですが、仮想水なんて概念を知らなくとも解けます。ヒントは自給率、穀物、家畜という指定語句で、これらの指定語句からイメージできるのは穀物や家畜は日本において食料自給率が特に低く、輸入量がめちゃくちゃ多いってことです。そして穀物や家畜の生産には水が必要なことから、輸入食物の生産のために外国で利用された水資源も日本は間接的に利用している、という考え方であることが推測できるというわけです。
これを2行でまとめれば解答になりますが、これまた知識というよりは考える力が問われています。
このように知識はなくとも解ける問題もそこそこありますが、もちろん問題のうちの多数は地理の勉強をきちんとしないと解答できません。ではそのような問題を解くためにはどのような対策をすればいいのでしょうか?
地理の攻略法(総論)
先ほど、理系の人達が地理を選ぶのは合理的だという話をしましたが、地理で重要なことは事案の分析力を付けることである以上、問題演習をこなすことが実力向上の近道となります。これは共通テストでも二次試験でも同じです。そして具体的な学習法としては
問題をこなし、間違えた部分を教科書やデータブックで確認することを繰り返すだけです。
結局、問題によって変わるのは国や地域だけで、真新しい未知の問題が出ることはありません。問題を解き、教科書などで確認することを繰り返しながら知識を積み重ねれば、入試本番でも集積した経験の中から事案分析の取っ掛かりを見つけることができます。
教材としては共通テストやセンター試験の過去問が良問なので、とにかく過去問をこなして下さい。
地理の攻略法(各論)
センター試験と二次試験でやることが同じと言えども、二次試験では論述が求められます。ただ、地理に関しては特別な対策が求められる大学は見受けられないので、オーソドックスに問題をこなして、論述に使える知識を愚直にストックしていけば合格ラインは超えていくと思います。
そのような地理全分野の論述で使える知識を積み上げるには、網羅系問題集が最適で、地理全範囲を網羅できるような教材であれば何でも構いません。
また、事案分析力を高めるために共通テスト形式の問題に触れることも時々して欲しいです。
しかし、そうは言ってもどの問題集がいいのか分からないという方もいるはずなので私が実際に使用した教材など2点の論述問題集を紹介します。
実力をつける地理100題(Z会)
受験生時代に使っていました。100題という分量は論述対策をする上でむしろオーバースペックかなと感じるほどの充実っぷりです。採点基準が細かく記載されているので何を書けば点が入るのかがイメージしやすくなります。東大合格ラインに達するほどまで地理の実力を高めてくれた名著です。
大学入試 地理B論述問題が面白いほど解ける本(KADOKAWA)
この本をお書きになった宇野先生は凄い方です。私が地理でどんな問題が出ようとも東大受験生に差を付けられるレベルに到達したのはひとえに宇野先生のおかげで、駿台で受けた授業の中でもダントツに有意義な授業をしてました。自分はこの問題集を実際に使ったわけではないのですが、以前書店で眺めてみたら、駿台で受けた授業そのままの内容となっていました。この書籍は何より解説がとても分かりやすいですし、答案に書くべきフレーズを各問題ごとに示してくれているので論述対策としても十分です。55題も分量として適切だと思います。
私は宇野先生を崇拝しているのでこちらの方をよりおすすめします。
最後に
つらつらと書いてきましたが、地理は暗記が苦手で教科書を通読する作業が苦痛な人や社会は最低限で構わない人にとっては最適な科目ですし、何より地理はパズルみたいで解いてて楽しいですよね。受験後にはブラタモリも楽しく見れるようになって教養化していることを感じたりもします。
この記事が、地理選択者が周囲に居ない方など、全ての地理選択者の助けになることを願っています。
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