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2022年読書評14 赤川次郎と都筑道夫

「幽霊から愛をこめて」
赤川次郎

1980年の作らしい。
物語は:
ある女学園の生徒が惨殺される。続いて第二の殺人も。同学園に通う令子は警視庁警部の娘。推理事件に興味を持つ性格をしている。
しかし事件を調べている内に行方不明に。一方、ある屋敷の跡に秘密の建物が建設される。
令子の恋人、友人も事件を調査する。

殺人事件はなぜ起こったのか、事件の背景には何があるのか。
といったもの。

小説としては読みやすかったです。
私は赤川次郎のジュニア小説を漁ろうと思ったのですが、ネット上にまとめた記事はないようです。そこでウィキからシリーズ外の小説をしらみつぶしに拾って行くことに。

本作と「死者は空中を歩く」「招かれた女」を手にしましたが、他の2冊は児童向けではなさそうなので、これを読んだわけです。

上記のように本書は読みやすいと思います。
しかし私としてはあまり乗れないものでした。主人公の女子高生にあまり感情移入できなかった点かも知れません。また、警部、恋人、他の登場人物の視点からも描かれるので、主軸が定まらないというのもあります。

物語の冒険性は良いです。背景の巨悪も。

ネタバレになりますが(以下注意)


結論として、事件の犯人は宗教にありました。それも悪魔教というものですが、現代の、現実社会に置き換えると正に、新興宗教団体、カルトがそれにあたるかも知れないと私は感じました。

カルトや新興宗教というのは「悪魔教」とはもちろん違いますが、強引な勧誘、隠しての勧誘、被害者を出しているという点では、社会が淘汰しなければいけないものであると思います。

私は神を語る人ですが、神が悪いのではありません。神は宇宙を創造し、人間を創造したものだからです。神を語り、人を騙す存在が悪いのです。そして「神が悪いものだ」と認識させてしまうような存在が悪いのです。

では神社に参詣に行く日本人は良いのかというと、それも間違っている部分もあるのです。それは自由ではあるのですが、本当の神を認識していることにはならないからです。
神社は「霊」に接する場であり、「神」は無限の存在であり、人間も宗教も地球も宇宙も凌駕する存在であり、実在するものであり、人間が認識なければいけない存在なのです。

本当は人生というのはそこから始まるのです。
(それを既存の宗教、新興宗教、カルトが台無しにしているのです)


「最長不倒距離」
都筑道夫。再読。

これは物部太郎ものの2作目です。
雪山で閉ざされた宿で起こる殺人事件を解くもの。

心霊探偵と名打って営業している太郎と片岡直次郎。そこへ旅館で出なくなった幽霊を出してくれと依頼が来る。果たして行ってみると殺人事件が。

というもの。
謎としてスキーの2つの跡が1本の木を左右にまたいでいるとか、死体の女性の両手に腕時計がしてあったとか、謎の句とかありますが、
私としてはあまり興味を持てません。
小説としても章区切りがないので、読みにくいというのもありました。

あまり面白いものにならなかった他の理由は、
閉鎖された空間のみが舞台ということ、今時、犯人当て、トリック当て小説は流行らないということ、冒険性がないということ、などがあります。
書かれた当時はよかったと思いますが。

キャラクターが面白いという点ではポアロに似ています。
ちなみに私はポアロものもあまり面白く感じません。ホームズものの大ファンではありますが。
これらは全然違うものなのです。
ホームズものにはワクワク感があり、倫理があり、友情があり、キャラクターの良さがあるというわけです。そして単なる推理ものではない、冒険性があるということです。

奇しくも、この本の解説を買いている赤川次郎は、「推理小説は謎解きが主であるが、謎解きよりもまず小説として面白いことが大事だ」ということを語っています。

ただ都筑道夫の場合は、非常に多岐に渡るジャンルを書いていますので、総体的に見ると個人的には日本で一番、私は買っている作家です。


「冬の旅人」
赤川次郎の短編集。

彼のジュニア向けの本を探したのですが、まとめた記事がなく、自力てシリーズ外のものをしらみつぶしに検索し、いくつか候補を立てた1冊ですが、探すのも面倒だし、あまり思うような本もないようなので、赤川探索は止めようと思います。

収録作品:
「冬の旅人」
外人のオペラ歌手の出演前に怪電話がかかり、「今夜、冬の旅人を歌うな」と脅迫される。
果たして、彼が歌うと実際に死者が。
というもの。

私見では、どうも外人が主役ということと人物相関がややこしく、そもそも推理などする気もないので、適当に読んだためか、あまり出来が良いとは思えませんでした。
というか、やはり多作家なので、1作の質が薄まるということなのかも知れないと思いました。

「巨人の家」
財産相続できるというので関係者らがある男の家に集まる。そこは奇妙な家で何でも大きく作られていた。そしてホストが殺される。

犯人は意外だけれど、やはり感情移入できる人がいない、主がいないという感じで、これもあまり評価できないかな、という感じ。

「本末転倒殺人事件」
刑事の夫、あまりにふがいなく、退職する羽目に。その前に夫に手柄をたてさせるために、お隣の夫婦のいざこざにかこつけ、妻に夫を殺させようとする妻。

プロットはうまく作っていて、短編としては出来がいいかも知れません。
でもやはり、一時代前の昔のミステリ、という感じです。

ソフトさ、ユーモア、楽しめる、という感じが欲しいところです。
そもそも赤川次郎はユーモア小説を書いているけれど、本質は暗いと誰かが書いていました。
私もそう思います。

「三毛猫ホームズの水泳教室」
これは「三毛猫ホームズの用心棒」で既に読んでいるので割愛。




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