ピロイへの手紙

拝啓、具合はいかがですか？
こちらは変わらず超ノリノリですみません。
しばらく私の脳味噌のクソをお楽しみください。

あんなにたくさんの時間を共にしたのにあなたの写真がないことを私は誇りにおもっています。
それだけ濃い時間を過ごしたのか、それともしょうもなさすぎたのか。
あの時の笑顔も、涙も、酒の味も全てが昨日のことのように思い出せるのです。

ピロイさん、ピロイさん
あなたは覚えていますか？
警察のガサが6回来たと言っていたあの日のことを
デカい銃を両手に抱えた写真を見せてくれたことを
近所のガキに酒を振る舞ってストリートモッシュしたことも
あなたのバカ犬に血が出るほど噛まれたあの夜も

ピロイさん、ピロイさん
私は覚えていますよ
常に2本のナイフを隠していることを
その柄でこめかみを引っ叩けば女なんて簡単だぜと嘯いたことを
そのくせヒッピーみたいなファランに銃を突きつけられたと憤怒したことも
そのあと涙を流しても、その涙の理由を決して言わなかったことも

一緒にセッションしたりもしましたね。
ギターとドラムを行ったり来たり交換し合って、めちゃくちゃやるだけの酷いクソ。
メタリカの帽子を目深に被ったピロイさん。
酔っ払いが癇癪を起こしただけの伝説になりましたね。

あなたのお兄さんと話した時に聞いたのですが、そんな無茶やってたから本当に身体が悪くなってしまったようですね。
60歳は日本では赤いちゃんちゃんこを着る歳なのですよ、酒はほどほどにしましょう。
といっても聞かないのがあなたなのですが。

ピロイさん、ピロイさん
私は知っていますよ
チェンマイのバンドにちゃんとリスペクトされてることを
常に唾吐く場所をきちんと確認していることを
フッドを守るためにパトロールしてることも
元嫁に超嫌われてることも

ピロイさん、ピロイさん
あなたは覚えていますか？
ジョシュも入れてジジイ三人で飲んだあの夜を
日本人女を紹介してよ泣いてたことも
タトゥーを自慢し合ってたのに傷跡自慢になったことも
ナンパしたファランの娘にメシをもらったことも

あなたとの会話はなんの意味もないガラクタですが、ちゃんと魂に触れる瞬間があったのは確かです。
全ての思い出がくだらな過ぎて、むしろ人生が豊かになりました。
あなたは私の師匠であり、反面教師であり、ボケ老人です。
そんなあなたに絶対に負けられないので、私は自分を鍛え直します。
そう、ジャパニーズカタナのように

また会える日を楽しみにしています。