#2 Tom Misch / Geography (2018)──初めてコーヒーを飲みたいと思った
Tom Misch / Geography
2018年にリリースされたTom Mischのデビューアルバム『Geography』。
John Mayerから影響を受けたギターサウンドと、J Dillaを彷彿とさせるトラックメイカーとしての才能が世界中に大きく知れ渡ったこのアルバムは、
時に切なく、時に甘く、時に踊りたい。そんな人生の素晴らしい瞬間を切り取ったような、人生のハイライト的作品。
音楽に年齢は関係ないと思ってはいるが、当時22歳とは思えないほどあまりにも大人びていて、それはサウンドだけでなく佇まいや声にまで余裕を感じる。
芸術一家で育ったTom Mischは幼い頃からバイオリンやギターを始め、大学ではジャズギターを学び、2013年18歳の時に姉のLaura Mischがサックスで参加した“Follow”をリリースし、大きな話題となった。
Tom Mischの肩書きを語るのは非常に難しくトラックメイカーでもありプロデューサーでもあり、シンガー・ソングライターでもありギタリストでもある…音楽好きとしての共通言語を持ってない人にオススメする時にどう説明したらいいのか非常に悩む。
また音楽性も多様。ジャズとHip Hopとソウルとディスコで...これまでの音楽の様々な歴史を辿ってきた新たな境地に辿り着いたような、そんな感覚。
また今作はゲストも非常に豪華で、リードトラックでもある"It Runs Through Me"ではDe La Soulが参加しており、1stアルバムで既に音楽界からの信頼と期待の高さが伺える。
そして同世代としてTom Mischと共にサウスロンドンの音楽シーンを引っ張る盟友Loyle Carnerが参加した"Water Baby"。
Tom Mischを語る上で"サウスロンドン"は切っても切り離せない。
ロンドンにはテムズ川という大きな川が横切っていて、その南側の地域を主にサウスロンドンと呼び、歴史的に家賃が安く、多くのアーティストや様々な国からの移民の人たちが多く住む多文化の入り混じったエリア。
そこで生まれ育ったTom MischやLoyle Carner、Cosmo Pyke、Puma Blueなどの若いアーティストが一斉に注目されるようになった。
そのアーティストの多くがアシッドジャズやクラブミュージック、Hip Hop、R&Bなどの様々な音楽を経由して、新たな音楽性を生み出しており、そんなところが世界中から注目を浴びるポイントとして挙げられる。
その人気は日本にも及び、星野源が2019年にリリースしたEP『Same Thing』に収録された"Ain't Nobody Know"ではTom Mischが参加し大きな話題にもなった。
また以前から星野源は度々Tom Mischのファンであることをラジオなどで公表しており、楽曲リリース後もInstagram等でコメントし合うなど2人の親交を伺わせている。
また『Geography』がリリースされた2018年にはSummer Sonic2018で初来日しており、夕方のビーチステージを大いに湧かせていた、そうです…。(その年は迷いに迷って別日に行っていたので観ることが出来ず友人に最高だったとレポを貰いました…泣)
翌年2019年にはGREENROOM FESTIVALの2日目のヘッドライナーとして再来日し、その公演に参加した私調べでは過去最高のヘッドライナーだったと感じております。
2020年もフジロックに出演予定と、3年連続で来日の予定でしたが中止となってしまったため叶うことはできませんでしたが、2020年にはドラマーYussef Dayesと共作した『What Kinda Music』では新たなTom Mischの一面を見ることができたので、今後どのような音楽を作り続けていくのか楽しみに期待していきたい気持ちでいっぱいです。
最後に『Geography』は1stアルバムにして既に最高傑作。どんなタイミングでもどこにいても、季節や天気に関係なく聴いていたくなる居心地のいい作品です。1曲目からボーッと聴いて1周したところで、きっともう1周したくなることでしょう。それがこのアルバムの魔法です。
個人的なこのアルバムのオススメ曲はStevie Wonderの"Isn't She Lovely"のカバー。電車の発着する音やアナウンスが聞こえる録音になっていて、ロンドンの地下鉄の駅を思い出します。とても温かいアレンジが最高。
この作品のように温かくて穏やかな毎日を送っていきたいですね。
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