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『最近聴いてる音楽の話』#11月

もう11月が終わりいよいよ12月。なんだか心が忙しなくてワタワタとしていたらあっさりと11月は終わっていった。12月はもっと忙しい。師走だ。何も予定のないクリスマス、行きたくない忘年会、年末進行でギリギリのスケジュール感の仕事。ギュギュッと詰まっている。12月すっ飛ばしてハッピーニューイヤーできないものか。
11月は個人的な話だとCharlie Burgのライブに行けたのがとても大きかった。楽しかったね〜。人生でも最前列の柵に立ってライブを観たのは2011年に行った横アリでのRADWIMPSのライブ以来かもしれない。規模はだいぶ違うけど。Charlieはナイスガイで、終演後にLPにサインをもらったり、直接ピックを手渡しでもらったり(ハローキティだった!)とスッペシャルな1日だった。
12月となるといよいよみんなが年間ベストアルバムを決め始めるけど、ジャケやタイトルを並べるだけじゃなくてどこが最高なのかとかどこで出会ったのか選択理由を知りたいな〜と毎年思う。それぞれが思うことは違うし、できたらあなたの言葉で聞かせて〜!と思うのは欲張りすぎなのだろうか。好きなものの話、もっと聞きたい気分だ。


SONG

Jacob Collier "Witness Me(feat. Shawn Mendes & Stormzy & Kirk Franklin)"


聴いた瞬間に鳥肌が立った。2024年の3月にリリース予定のアルバム『Djesse Vol. 4』に収録されるJacob Collierの新曲"Witness Me"はShawn MendesとStormzy、Kirk Franklinが参加していて、全員漏れなく大好きなミュージシャンだ。Jacob Collierの深みのある繊細なボーカルから始まり、Shawnの明るい甘いボーカルが色をつけていく、そこにStormzyの熱いリリックのラップが乗っていき、それをKirk Franklin率いる力強く美しいゴスペルコーラス隊が包み込み、徐々に楽曲と歌が立ち上がっていく。
心の中にある熱い気持ちが沸々と熱を帯びていくように心の温度を上げ、奮い立ててくる。一つの曲の中でしっかりと起承転結で構成されていて、そのバランスの良さにも高まる。


mercury "Trying"


ナッシュビルを拠点に活動するインディーロックバンド、mercury。これまでリリースされた3曲の中でも最も深くて重いサウンドの楽曲。これまでにYves Tumor, Charli XCXのミックスを手掛けたJustin Raisenが担当しているだけあってサウンドはかなり深みがある。
ゆっくり立ち上がるサウンドと世界観から急激にエモやラウドロック、シューゲイザーまでを彷彿とさせるサウンドに展開していくパートに心がギュッと掴まれる。1stリリース曲の"I Don't Know You Like I Used To"も含めて、どの曲も方向性が一貫しているのでアルバムのリリースが楽しみ。


家主 "オープンエンド"


人生のオープニングで、最終回。この曲がどちらにふさわしいのか考えてみた。次へ進みたくなるような希望もありながら、何かが終わっていく寂しさも吐き出すように歌っている。きっと人生の始まりと終わりっていうのは曖昧で、その真ん中にフラフラとバランス悪くバツも悪くただ立っている。そんな家主の新曲、"オープンエンド"。
「オープンエンド」とは、制限を設けずに回答者がYES or NOではなく自由に解答できる質問形式の時に使われる言葉だ。きっと人生はいつだってオープンエンド。"行きたいとこへ行くだけさ"、家主のこの言葉を抱えて旅に出てみたい気分だ。


ハナレグミ "MY夢中"


夕方、ふと仕事中にラジオから流れてきて思わず心が楽曲の中に溶け込んでいったハナレグミの新曲"MY夢中"。歌詞がすぐに知りたくて調べたけどその時点ではまだリリースされていなかったので、ネット上に歌詞が出てこなくて脳内にある、一度聴いた記憶をなぞりながら言葉を探し出す作業をしている時間はとても愛おしかった。
ハナレグミが紡ぐ言葉はいつでも優しくてギュッと心を抱きしめてくれる。"めちゃ夢中 夢中の宇宙 空中浮遊 四六時中"、言葉遊びをしながら心に言葉を置いていくような曲作りと歌い方がとても好き。『歌とピアノ』だけのバージョンも同時にリリースされていて、そちらも歌い方のニュアンスが違ってもっと近くて優しい。いつもありがとな、タカシ。



ALBUM

Shallou / In Touch


『Shallou / In Touch』

■LAを拠点として活動するプロデューサー、シンガーのShallouのアルバムとしては2作目となる『In Touch』。環境保護活動家の側面を持つ彼の生み出す音楽は、自然と人間のメンタルヘルスが溶け合うような抒情的な美しいアンビエントのサウンドを持ち、今作は特に『In Touch』と名付けられたタイトル通りに心に触れてくる。

2018年にリリースされた『Souls』は大好きなアルバムで、初めて聴いた時からShallouに対しては変わらぬ愛と信頼を置いている。いつでも人の心の機微に寄り添いながら、より繊細に、よりドラマチックに心の風景を描いてくる。先行曲でもある"Losing Focus"は高まる心臓の鼓動のように徐々に早まりながら脈を打ち、弾ける瞬間が花火のように美しい。人間の内省的な繊細さを解放することのできるエモーショナルなダンスミュージックはいつだって美しいということをShallouは思い出させてくれる。


吉澤嘉代子 / 若草


『吉澤嘉代子 / 若草』

■"青春"をテーマに制作されたアルバムの第一弾『若草』。映画『アイスクリームフィーバー』の主題歌として書き下ろされた"氷菓子"を含む6曲入りのEP。吉澤嘉代子が綴る"青春"は姿形の若さだけではなく、心の中の幼さや稚拙さ、それをずっと未来や過去の地点から振り返ったときに感じる風みたいなものを歌う。それぞれに違った世界の誰かが主人公の日常を切り取って歌にするのがいつもとても上手い。

"セブンティーン"と"夢はアパート"は、吉澤嘉代子と同世代のメンバー、ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)、TAIKING(Suchmos)、大樋祐大(SANABAGUN.)、澤村一平(SANABAGUN.)で結成された吉澤嘉代子とナインティーズのメンバーで収録されている。一発録りらしいバンドの音の乗り方がキラキラしていて大好き。

愛おしくて眩しくて、カーテン越しの太陽みたいな暖かさと寂しさを感じる作品。ギャルになりたかったり、老後はみんなで同じアパートで暮らしたかったり、人生って忙しない。第二弾となるアルバム『六花』は2024年の春にリリース。


Searows/End Of The World


『Searows/End Of The World』

■音楽をランダムに聴いていると、時々この曲に出会うべくして出会った!と感じる瞬間みたいなものがやってくる。自分の今の心情や感覚とメロディや音やリリックがビタッとハマる瞬間。それと出会うために音楽の中で旅をしてるのかもと思う。最近ふとした時に出会ったしまったのが、アメリカのシンガーソングライター、Alec DuckartによるインディーフォークプロジェクトであるSearows。

新しくリリースされたアルバム『End Of The World』のタイトル曲"End Of The World"の歌い出し、"I'm at the end of the world"から始まる曲の纏う悲しみと怒りと絶望の空気感みたいなものが、耳に入り込む音の粒まで浸透していて他を感じる隙間なく心に届いた。

叙情的な歌声とアコースティックギターのサウンドが崩れかけている心をどこか安寧の地へと連れて行ってくれそうな気がする。"Older"という曲についてはインタビューで「若い時は若すぎることで無力感を感じたり、歳をとっていくと周りが同じように歳をとっていくことに無力感を感じたりするもので、でも時の流れは止まることはなくて、それは生きているということの最高なことであり同時に最悪なことでもあるんだ」と話している。時々人生を俯瞰しながら、夢中になりながら世界の希望と絶望を同時に感じている人間にとってはこんなアルバムが救いになることがある。とても素敵な作品。


Sam Greenfield / SAM GREENFIELD RULES


『Sam Greenfield / SAM GREENFIELD RULES』

■最高である。これ以上の言葉と説明が必要ないくらい最高である。Sam Greenfieldの3作目のアルバムとして11月にリリースされた作品で、このジャケットの陽気なバイブス、最高である。短パン一枚にサックス持ってサーフィン、ピンクのサンバイザーも最高。『SAM GREENFIELD RULES』と名付けられたように「Sam Greenfield流」がこれでもか!というほどに詰まったアルバム。

Samの生み出す陽気なバイブスに煽られるようにサックスと絡み合うファンクなグルーヴが波のように襲ってくる。音も波も踊ってる。俺もあの子も踊ってる。耳も心も気持ちいい。どこから食べてもチョコたっぷり。最高。

先月もnoteで楽曲としてSam Greenfieldの"Dinky Doinky"を取り上げたけど、アルバム全体通して聴いてもあまりに最高すぎる。2023年はこのアルバムを抱えていればきっといい年だったと思える。2024年もその先もずっと大切に抱きしめていたいアルバムだ。


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