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上半期まとめて音楽の話しよか

毎月音楽の投稿をしていた去年と打って変わって、すっかりnoteを更新することすら疎ましくなってしまった今日この頃。SNSもイーロンマスクによってTwitterは崩壊し、AIやインプレ稼ぎで溢れる海の中で何かを発信することすら退屈に思えてきてしまった。本物の繋がりがここにあるのか?とSNSに対して感じていた疑問は、イーロンマスクによって「繋がりなどない」という答えで一掃されてしまった。全てがフェイクになってしまった。「デマ」という言葉が懐かしいくらい、SNS上はフェイクと虚構に溢れた。そして他者を晒してはラベリングして、都合のいい解釈でそれを拡散する。全ての人々が撮る側に回り、一億総パパラッチの時代だ。フライデーがどうとか、週刊誌がどうとか言うまでもなく、全ての人が他人に関心を持ちすぎては他者の足を引っ張り合うみっともない社会が可視化されてしまった。人間の本能といえばそれまでだけど、もうきっと帰ってこない。このゆとりのない貧しい地獄が続いていくだけ。

そんな最高でハッピーな2024年の上半期!あんまり音楽を聴いていた記憶はないのだけど、どんな音楽を聴いていたか振り返ろう。


Bleachers "Bleachers"



■ここ数年の話題の中心に常にいたJack Antonoffが立ち上げたプロジェクト、Bleachers。Jack Antonoffが携わったプロデュース作品は、Taylor Swift『1989』以降の近年の作品から、Lana Del Rey『Norman Fucking Rockwell!』、Clairo『Sling』、The 1975『Being Funny in a Foreign Language』など時代を象る話題作の全てに関わっている。2010年代の後半からのこの10年のインディポップの音楽シーンを作ったのはJack Antonoffといっても過言ではない。
そんなJack率いるBleachersの新作はそんな時代の答え合わせと言ってもいいほどに期待に応える作品になっている。優しくもあり、熱くもあり、それでいて親しみやすい。すなわち最高である。


The Lemon Twigs "A Dream Is All We Know"



■今年こんなにも楽曲がリリースされるたびに興奮したアルバムはなかった。彼らの音楽を聴いてるといつでもタイムスリップをした気持ちになる。
24歳と26歳になるD'addario兄弟によって結成されるこのThe Lemon Twigs
2017年にリリースされた1stアルバム『Do Hollywood』は60~70年代のロックからインスピレーションを受けた作風が世界でも話題を呼び、日本にも来日した。その年のフジロックでステージを見た印象は、まだ2人とも10代だったこともあり、ヤンチャな兄弟というイメージ全開だった。
ただそれから7年の時が経ち、大人になった彼らがリリースした5作目のアルバムは、原点回帰的な部分も持ちつつも地に足のついた多幸感満載な最高傑作に仕上がった。今のThe Lemon Twigsのライヴがとにかく観たい。期待していたフジロックがなかったので、朝霧に期待したい。


Little Man Tate "Welcome To the Rest of Your Life"



■2005年の結成し、Arctic Monkeysと同郷であるシェフィールド出身のバンドということもあり、当時はポストArctic MonkeysとかありがちなポップがつけられていたLittle Man Tate。1stアルバムの『About What You Know』はUKでも大きな話題となり、中学生の頃は自分が大熱狂していたバンドのひとつだった。
しかし、2009年に解散、以来影を潜めていたLittle Man Tateがコロナ禍に突然の再結成を発表。そして今作が16年ぶりの3rdアルバムとなる『Welcome To the Rest of Your Life』。
相変わらず最高のメロディセンス。マジで最高すぎて泣ける。マジでありがとう。マジで生きてて良かった。そんな気持ちにさえさせてくれる。16年ぶりのアルバムともなれば方向性やサウンドが変わって、再結成は嬉しいけどなんだかな…という気持ちになったりするものだけど彼らは違う。マジで2009年の続きをやっている。
Little Man Tateの1stアルバムが出た頃はまだ自分は中学生で、兄と一緒にポテチを食べながら部屋で2人して踊っていた。そんなことを思い出して気付いたら聴きながらボロボロ泣いてしまった。いつだって彼らの音楽があればタイムスリップできる。そういう音楽がひとつでもあれば、きっと僕らは音楽と共に生きているということになるのだろう。



Lawrence "Family Business"



■2018年、うんざりする仕事の休憩中に心を癒すために行った渋谷のタワーレコードで試聴機に立っては、片っ端CDを試聴して回っている中で「Jackson5が好きなら絶対に聴け」というポップが書かれたCDを見つけた。
それが2018年にリリースされたLawrenceの2ndアルバム『Living Room』だった。1曲目の"More"の1音目に度肝を抜かれた。ゴスペル調でありながらソウルフルな男女のボーカルが混ざり合う。思わず「これやで!」と溢れ出そうな気持ちを抑えてApple Musicでダウンロードして会社まで聴きながら戻ったことを鮮明に覚えている(これ万引きにならんのかな?などと思った)。すっかりその日から虜だ。
兄のClydeと妹のGracie、2人のLawrence兄妹からなる、苗字をそのまま取ったLawrence待望の最新作である『Family Business』。前作の『Hotel TV』は、コロナ禍で製作されたこともあり、時代の空気を反映した部屋の内側の空気感の作品だったが、今作は1曲目から勢いよく外へ飛び出すようなこれぞLawrence!というようなGracieのソウルフルな歌声から始まる。彼らは心のときめきが止まらなくなるような、誰かの人生の足取りを軽くする天才だ。



Courting "New Last Name"



■2000年代インディロックを信じたインディロックファンよ、お待たせしました!と言わんばかりの大傑作が登場。
リヴァプール出身の4人組、新世代インディロックヒーローCourting、2年ぶりの2ndアルバム。Two Door Cinema ClubMaximo Parkが所属するインディレーベルLower Thirdからリリースされた今作は、インディロックヒーローであるThe Cribsとのコラボ作となっており、そのDNAを引き継ぐような傑作になっている。
ここぞというところで最高にキャッチーで、捻くれた奔放さも最高。2曲目の"We Look Good Together(Big Words)"は唐突なディスコソングで、聴いてるとこれThe 1975の"The Sound"のオマージュ…?となってくる。そしてよく見ると曲名もThe 1975チックだ。皮肉なのかおちょくっているのかリスペクトなのか、はたまた偶然なのかは分からないがこういうユーモアのセンスが大好きだ。



Sunwich "Apophenia"



■聴いた瞬間、暑い夏の日に真っ赤な自転車で駆け回りたくなるくらいのときめきを感じてしまった。
インドネシアはジャカルタのギターポップバンドSunwich。「ギターポップ」、「ネオアコ」という言葉がこれほどに似合うバンドはいない、というか本当にお手本のようなギターポップサウンドだ。これには北欧ギターポップ好きもニッコリだ。
キラキラしていて、メロディ、展開にとにかく無駄な場所が一つのない。こんな傑作アルバムをリリースしてしまうとこの先が心配になってしまう。それくらいの傑作である。どこか日本のインディロックとの親和性も感じて、インディロックの大陸はどこまでも続いているなと思った。最高。


Ghost-Note "Mustard n'Onions"



■ソウル・ミュージック最高の音楽集団、Ghost-Noteの6年振りとなる新作アルバムによってファンクの新時代が幕を開ける。とにかく一発聴いただけで分かってしまう、ムキムキである。グルーヴマッスル。
Snarky PuppyのメンバーでもあるRobert Sput Searight、Nate Werthを筆頭に、Kendrick LamarやSnoop Doggなど数々のミュージシャンのバンドを努める若手のミュージシャンが勢揃いした音楽集団がこのGhost-Note。説明なんて必要がないこのファンキーなグルーヴにとにかく委ねるだけ。
今年のフジロックでも来日が決まっており、初日のフィールドオブヘヴンに出演予定。正直The Killersと若干被りそうな気がして気が気でない。去年のCory HenryCory Wongのような最高のグルーヴを生み出すこと間違いなしだ。



ベランダ "Spirit"



■生命力や魂を意味するアルバムタイトルの『Spirit』。結成から10年、前作から6年。待ちに待ったベランダの3rd Albumが完成した。
「『飽くまでキャッチーであること』へのこだわりは揺るぎなく一貫しています。」と、フロントマンの高島が語るようにベランダの本質にあるキャッチーで親しみやすいメロディと高島のヴォーカルは健在。そして涙腺にグッとくる特異なメロディセンスは抜群。
アルバムタイトルにもある1曲目の"スピリット"は聴いた瞬間に心臓を掴まれた。この気持ちは何度聴いても褪せることがない。
"生きることしか能がないけれど 何かしなくちゃな 成し遂げなくちゃな"というこのフレーズに込められた6年分の思いというのが詰まりきった、1曲目からベランダというバンドのエモーショナルな展開は多くの人の耳から心に刺さる大名曲だと思う。
そして、そこで歌われる"Tonight(is the night)"(今夜がその夜だ)で、このアルバムを締める。生きていくことの平凡も特別も全て噛み締めて明日へと足を進めるための生命力になる、儚くも確かにそこにあり、誰だって誰かの特別になり得ることの証明をする作品だ。


Catpack "Catpack"



MoonchildのヴォーカルであるAmber Navranが、LAジャズ・シーン屈指のピアニスト/キーボード奏者Jacob Mann、Dr.Dreらが信頼を置くプロデューサーPhil Beaudreauと新たに組んだスペシャル・ユニットCatpack。
ネオ・ソウル、ファンク、そしてジャズのエッセンスを三者三様のグルーヴで凝縮に凝縮。そして出来上がった新しいグルーヴの洪水がこのCatpack。Moonchildでもヴォーカルを担当するAmberは、Catpackでもその透き通る歌声を発揮し、フルートも担当している。Jacob Mannはキーボード、クラリネットを担当、そしてJustin Bieberの最新作『Changes』のプロデューサーとしてグラミー賞にもノミネートされたPhilはトランペット、ヴォーカルを担当しており、3人ともにCatpackではプロデュースも担当している。だからこそ、それぞれのアイデアやセンスが作品中に遺憾無く発揮されていて、密度高く詰め込まれたのがこのアルバムなのだ。何度も繰り返してゆっくり聴きたいアルバム。


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