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#3 Cajun Dance Party / The Colourful Life (2008)──終わったパーティーから帰れない

【best album of my life】
これまでの人生、様々なタイミングで出会ってきた数々の名盤を振り返っていこうという企画。今聴いたら少し恥ずかしいものから、当時は激ハマりしていたもの、変わらずずっと大切な名盤まで紹介してきます。
今回はその3回目Cajun Dance Partyの『The Colourful Life』です!

Cajun Dance Party / The Colourful Life

Cajun Dance Party / The Colourful Life

2000年代後半のUKロックシーンは"ポストArctic Monkeys"を探すのに必死になっていた。そして数多くのバンドが"期待の新星バンド"として売り出されては1枚アルバムをリリースして消えていった。
当時出てきたバンドの名前を挙げれば「いたな〜」みたいな懐かしさ混じりの感想が浮かぶ。もしかしたらこのバンドもそこに含まれるのかもしれない。ただこのバンドが持っていた輝きは他のそれらとは違っていたように感じていた。

Cajun Dance Partyはイギリス・ロンドン出身の5ピースロック・バンド。
2008年にリリースしたアルバム『The Colourful Life』はCajun Dance Partyのデビューアルバムであり、唯一作となる。

2005年、メンバーが14歳の頃に結成。2007年にはデビューシングル"The Next Untouchable"をリリースすると、途端に様々な音楽誌で話題となり、その年にグラストンベリーフェスティバルに出演。その後、争奪戦の末16歳でXLレコーディングスと契約した。

アルバム1枚で解散してしまったので、YouTubeにもほとんど映像が残っていないが、2007年に16歳で初めてグラストンベリーに出演した時の映像が残っていた。若さ故の溢れるほどのエネルギーに満ちたステージングでNME誌のグラストンベリー特集では「2007年、良かった新人ランキング」でいきなり1位を獲得した。

その翌年のSummer Sonic2008で初来日。運よく彼らのパフォーマンスを見ることはできたが、お昼時のソニックステージは超満員で入場規制がかかるほどの騒ぎになっていた。

2008年といえばFriendly FiresVampire Weekendなどがデビューし、世界的にガレージロックリバイバル期が終わりを迎え、新しい潮目に入ろうというタイミングで、いかにもガレージロックリバイバル的なサウンドだと解釈されがちだが、このバンドには他のバンドに出せない17歳という年齢のただただピュアな青春が詰まっているように思う。
2008年バンドは突然の解散をしてしまうが、文化系少年少女の今しか鳴らせないキラキラと、他人にどうこう言わせない真っ直ぐで刹那的なサウンドとアルバムの仕上がりには解散も納得してしまうようなリアルが詰まっていた。

解散後はボーカルのDaniel BlumbergとベースのMax Bloomを中心にバンド、Yuckを結成するも1枚アルバムをリリースしてDanielは脱退。(どんだけ刹那的に生きるんだDanielは...。)

その後もYuckはMaxを中心に活動を続け、シューゲイザーサウンドで人気を集め、日本にも度々来日するなど日本のファンにも愛された。
2021年2月15日に解散を発表した。

一方のDanielはDaniel Blumbergのソロ名義で昨年にも2作目となるアルバム『On&On』をリリース。芸術家としても活動するDanielは実験的な音楽を軸に、2021年2月に公開予定の映画『The World to Come』の劇伴も担当している。


個人的に、全てのバンドが長く続けばいいというわけでもない。それを体現したバンドだったようにも感じる。
ただ、この溢れる才能をもっと見ていたかったというのも本音。アルバムを通して感じる、音楽の中で楽しむことの自由や充実感。そして若さというエネルギーの行き場が全てこのバンドのサウンドに集約されたようなこんな奇跡的なアルバムにはそう出会えないような気がしている。
だからこそ、こういった世界のどこかで発せられる一瞬の輝きを見逃すわけにはいかないのだ。アルバムのタイトル曲から始まるこの9曲のキラメキにはいつもあの頃の10代の気持ちが詰まっている。


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